第2話『学園生活のはじまり(1)』
……さま。ねえさま。
「アイナお姉様!」
深い眠りについていたあいなは、シラユリの声で目を覚ます。
「……ん。ぅんん」
――そうだ。わたし異世界転生してたんだった。それにしても、このソファ意外と寝心地悪くなかったなあ。
シラユリに急かされながら制服へ着替える。
食堂へと向かう廊下を歩くうちに、食堂の方から焼きたてのパンの香りが漂ってきた。食器の触れ合う軽やかな音も聞こえてきた。
「おはようアイナ。よく眠れたかしら?」
先に起きて席に座っていた母親に声をかけられる。
――おっとりとした笑顔。
でも、昨夜シラユリちゃんが言ってたな。
何を考えているか分からないから、一番気をつけるべきですわって。
あと、食事マナーも間違えないようにしなきゃ。
「おはようございます。アマリリスお母様」
「今日から学園に通うけれど無理はしないようにね」
心配するアマリリスに対し、アイナが返事をするよりも先にシラユリが代わりに口を開く。
「大丈夫ですよアマリリスお母様。わたくしも一緒に学園へ通っていますし、何かあれば近衛騎士団もいますから」
「そうね。今日は学園式と身体能力測定くらいだものね」
ナイフとフォークを持つ手に自然と力が入る。
シラユリの所作を横目で盗み見ながら、慎重にパンを口へ運んだ。
――そっか。今日身体能力測定あるんだった。うまくやらなきゃな。それよりも本当に母親が何を考えているか分からないな。ただの微笑みのはずが、心の中まで見透かされそう。
……まさか。
もしかして、バレてる?
「それじゃセルヴィ。二人の警護頼んだわよ?」
アマリリスは入口に控える正装の騎士へ視線を向けた。
「かしこまりました」
セルヴィは一歩前へ出て最敬礼をする。
「近衛騎士団総括団長、セルヴィ・S・クランセラー。全身全霊を尽くしてお二人の警護にあたらせていただきます。」
「ありがとうございます。セルヴィさん」
「近衛騎士団総括団長としての務めですからお気になさらないでください」
朝食を済ませると、席を立つ。
二人は学園へと向かうため、食堂を後にする。
中庭を抜けて門外へ出る。
シラユリに続いて待たせていた白い馬車へと乗り込む。
――学園……か。一体どんなところなんだろう。




