第1話『目覚め(2)』
病院から家へと、無事に帰路へと着いたあいなはメイドと共に一旦自室に戻るよう促され、服を着替えると食堂へと案内される。
「こちらが食堂でございます。旦那様、奥様と第一王女であられますホウカ様と第四王女であられますシラユリ様がお待ちになられています」
そう言われ中に入ると、長いテーブルには豪華な料理が所狭しと並び、椅子には先の説明のあった面々が座っていた。そのなかで最も幼い子と目が合うと、手招きされ空いていた自席にすわる。
「アイナお姉様。もう体調は大丈夫ですの?」
――この子は……。一番幼い……。十歳前後?さっきの話からすると、第四王女のシラユリちゃんかな?
「シラユリ。母上が言っていただろう。アイナは記憶を失っている。シラユリのことすら覚えていないかも知れんと」
「はい。ホウカお姉様。でもわたくしはアイナお姉様に忘れられてしまっていることは悲しいのです」
「忘れたくて忘れたわけではないだろう。それに時間が経てば思い出すかも知れんと」
――となると、こっちの人はホウカさんかな。そういえば、わたしは普段二人のことをどう呼んでいたんだろう。
「体調は大丈夫だよ。心配してくれてありがとね」
幼い妹を心配させまいとできる限りの笑顔で返事をする。シラユリは一瞬眉をひそめるが、すぐに元の笑顔に戻り会話を続ける。
「アイナお姉様。今夜はいっしょに寝てくださいませんか?ずっと心配だったのです」
精一杯の笑顔で返事を続ける。
「うん。一緒に寝ようか」
それまで静かにしていた国王がぽつりと話しだした。
「……まさかこの時期に事故とはな。無事で良かった。」
「そうね。本当に無事で良かった。」
王妃は涙ながらにアイナの無事を喜んでいた。ホウカも無言で頷く。
家族団欒の時間が終わると、シラユリが近寄ってきてアイナの腕を引っ張る。
「アイナお姉様!はやく一緒にお部屋へ行きましょう!」
シラユリに半ば強引に部屋へと連れていかれ、そのまま促されるまま部屋内に入る。
「ここがわたくしの部屋ですわお姉様。中へどうぞ」
シラユリはアイナの横を通り過ぎると自分のベットの上に座り、自分の隣に来るようにとベットをぽんぽんと叩いて促す。
「お姉様。わたくしの隣に来て髪の毛を結って欲しいですわ」
――普段もこういう風に髪の毛とかを結ってるのかな?
お願いされた通りにシラユリの横に座り髪の毛を結ぶ。元の世界でも友達の髪の毛を結ぶことがあるあいなは慣れた手つきで結ぶ。結び終わると、部屋にある三面鏡の前でシラユリは嬉しそうに髪の毛を触る。触ったまま少し俯き、黙る。
やがて……
笑顔が消える。
次の瞬間、シラユリはあいなを突き飛ばし魔法を唱える。すると何もない空間が眩く光る。その光から二匹の白き狼が姿を現す。狼たちは、あいなを逃さないように周りを囲む。
「聖獣魔法 小聖獣の庭」
「一体お姉様は何者ですの?本当のお姉様は髪の毛を結うのがとても苦手ですのよ。だからこんなに綺麗にできるはずがありませんわ。たとえ記憶がなくなっていたとしても……。あなた……お姉様じゃありませんわね。正体を現しなさい!」
――どうしよう……。別人なの気づかれた。一体いつから怪しまれてたの……?とりあえず本当のこと話す?いや、話したとて信じてもらえるのこんな話……。賭けてみる……か。
「……わかった。全部話すよ。私が誰なのか」
隠したり誤魔化したところで、この状況が打破できるどころか悪化するだけ。
そう判断してゆっくりと全てを話し始める。全てを聞いたシラユリは数刻の間なにも発さず、静寂とした空間は緊張に包まれていた。
やがてシラユリが静かに息を吐く。
「……わかりました」
それだけを告げると考え込む。部屋は再び静寂に包まれた。
「とりあえず……アイナお姉様(仮)の言うことは信用します。というより、この子達が反応しなかったので嘘をついてないのはわかってます。けれど、問題なのは今後のことですね」
――この子、幼いと思っていたけど、ここまで考えているなんてすごい。
「バレると問題が増えるので一旦二人だけの秘密にしましょう。それと、直近一番の問題ですがお姉様は明日から学園の入学式ということですわ。王族である以上注目されますし……。とりあえず余計なことは何もしないと約束してください」
シラユリの圧に少し驚きつつも納得し頷く。ふと、ずっと気になっていたことを質問する。
「一つ聞いてもいい?魔法って何?」
「そうですよね。魔法がない世界から来たんですもんね。人や魔道具にはそれぞれ魔が宿っています。それを色々な形で使っています。わかりやすく説明するとですね、魔は人や魔道具の動力源です。魔を元に魔法を使います。まあ説明より実際にやってみましょう。その方が早いでしょう?」
シラユリに説明を受け、いざ実践してみることにした。
――意識を集中させて身体のなかを巡る魔を感じて、魔法を発動させるイメージ……。
「はあ……あ……っ」
すると、アイナの手から植物の木々が生える。
――これが魔法……!すごい……!
「精神が複数でも使える魔法はひとつで、元の肉体の持ち主の魔法が使用できるってことみたいですね。ただ使い方なんてすぐに慣れますよ。今までの努力がお姉様の身体には刻まれているはずなので。あ、念を押しますがぜぇーたいに問題は起こさないでくださいね」
再三の忠告を受け、問題を起こさないようにしようと心がける。
「とりあえず、しばらくはアイナお姉様ということで行動してください。勿論、わたくしも最低限サポート致しますわ。何かあれば聞いてくださいなアイナお姉様」
――わかった。
そう答えると、シラユリは明日に向けて作戦立てたら早く寝ましょうと淡々と返事をする。明日に向けて作戦を立てたあと、自らはベットの中へ入りつつも魔法は解除せず、一切の警戒は解かないという無言の圧を感じつつ、あいなもソファに寝そべり入眠する。
――私はこの世界でやっていけるのだろうか?
改めまして、春夏秋冬です。
第1話ご覧いただきありがとうございました。
これから転生したあいながどうやって生きていくのか楽しみにしていてください。
まだ拙いところもございますが、頑張っていきますので応援のほどよろしくお願いします。
感想等お待ちしております。




