第九話『アサプティ・ゲージ』
クラスメイトに指定された地下闘技場に向かうと、そこにはすでにクラスメイト達が集まっていた。
まるでコロッセオのような闘技場にあいなは驚いた。
――凄っ。なんか西洋の決闘場って感じだな。よくアニメとかにあったような。
「待ってたぜ。アイナ・アリスト。逃げずに来たことは褒めてやるよ」
「呼んだのはそっちでしょ?」
「準備はいいか?オレ様はアサプティ・ゲージ。てめぇに真剣勝負を申し込むぜ」
――えっと。こういうとき、どう返したらいいんだろう?えぇい……!
「アイナ・アリスト……。受けて立つ!」
あいながそう言うと、アサプティは一気に距離を詰める。アサプティの姿が、一瞬で視界から消えた。
「……え?」
――はやい!
次の瞬間、上半身に強烈な衝撃が走る。
まるで巨大な獣の爪で引き裂かれたような痛みが走った。
「……っ」
「おいおい。今の程度避けられねえのか?がっかりさせるなよ?王族サマがよぉ」
再びあいなに向かって攻撃を仕掛ける。
――今のって獣みたいな攻撃だった。安直だけど、獣魔法?とりあえず距離を取って思考時間稼ぎたいな。
「はぁぁっ!」
あいなはフードの人物との闘いを思い出しながら、太い木の幹をアサプティに向けて撃ち出す。
「うおっ」
間一髪で避けるアサプティに対して、更に攻撃を仕掛ける。
「はぁっ!」
今度は、木の幹を細く鋭い形で撃ちだしながら太い幹で自分の近くに寄せないようにアサプティの動線を遮る。
「ちっ……。邪魔くせえ木だな」
外野も観客席から観戦しつつ、雑談していた。
「ふーん。あれが王族……ですか」
「何故あそこまで苦戦しているのか……は甚だ疑問だがな。相性だけで言えばそんな苦戦する相手でもないだろうに」
「さぁ?そこまでは分かりませんが、ヴァグンさんならどちらが相手になっても余裕でしょう?」
ヴァグンと呼ばれた生徒は不敵な笑みを浮かべる。
「……さぁな」
あいなとアサプティの戦闘は激化していた。あいなは上手く魔法を使い、太い幹を盾のように使いながら、次々とアサプティに叩き込んでいく。
一方のアサプティは攻め手に欠け攻撃を仕掛けるも、途中で止まることで防戦一方になり始めていた。
「くそっ……」
少しずつ、焦りから苛立ちを見せ始める。
「仕方ねえ。見せるつもりは無かったけど、やってやるぜ。獣魔法 獣化全身」
アサプティの身体がみるみる内に、人の身体からまるで本物の獣のように変化していく。
――姿が変わった!?結構やばそうだなあ。あれの一撃喰らったら多分骨とか折れそうだな。その前に死ぬかな……?とりあえず、変わらず近づけさせないで倒すしかないか。
「オラァッ!オラオラオラァ!!」
あいなは先程と同じように太い幹でアサプティを止めようとするが、いとも簡単に壊される。
――うそっ。やばい。簡単に突破されちゃった。もっともっと太くないと駄目なのかな?どうしよう……?
……あ!植物なら幹だけじゃなくて他にも出来るんじゃない?
……もし、この魔法世界でバレリアンにも似たような効果があるなら…試してみるか……!
「植物魔法 バレリアンっ!」
あいながそう言うと、周囲は煙で包まれる。観客席にまで薄く漂ってきた。
「これは……!自浄作用のある魔法か」
「植物魔法といえど、このような魔法を使える人物がいるとは驚きですわ」
あいなに攻撃を仕掛けていたアサプティは、濃い煙を直接多量に吸い込み、そのまま倒れ込んでしまう。
――上手く行った?
「勝者はアイナ・アリスト……だな」
勝ちの宣言があり、決着を見ていたクラスメイト達は三者三様の反応を示していた。
「おっしゃああ!!」
「ふーん。やるじゃん」
「意外とやりますね。ま、アサプティが弱すぎただけかも知れませんが。ヴァグンさんはどうです?」
「……ふっ。本番までどれだけ強くなってるか楽しみだな」
一息ついて、地べたに座り込むとティティアが走ってきた。
「やったねアイナちゃん!ナイス勝利だよ」
「うん。ありがとう!どうにか……ね」
「相手を無力化して勝つとは中々でしたわ。ま、わたくしならもっと綺麗に勝ちますが」
「お姉ちゃん、凄い喜んでたのに……」
「確かに。アイナちゃんが勝った時、立ってガッツポーズしながらおっしゃあって言ってたもんね」
「エリー。余計なことは言わなくていいんですわよ?それにティティアさんあなたもそんなところ見てなくていいんですわよ」
あいな達が歓談しているのを、地下闘技場の入り口からこっそりレグルスが見ていた。
「なるほど……アイナ・アリストか」
春夏秋冬です。
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