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鹿汁を囲って

 ぐつぐつと煮える囲炉裏の鍋の蓋を開くと、湯気がふわりと部屋中に噴き出した。その煙と共に、とてつもない獣臭さが鼻の奥を刺激する。湯気が天井に登った後、鍋の中を覗き込むと、鹿の骨やら、内臓やらが適当にぶち込まれているだけだった。スープも鹿の脂が浮いているだけで、透明だ。


「ああ、鹿の骨と内臓だけなんですね。」

「そうですね。売り物にならないものを鍋に入れている感じですね。鹿の肉は売って、少しでもお金にしないといけないですから。」

「ああ、なるほど。


 ……野菜なんかは入れないんですか?」

 ミナミは鍋をかき混ぜながら、少し顔を曇らせた。


「……入れたほうが良かったですよね?」

「いや、大丈夫です。そんなつもりじゃなくて、ここら辺では、鹿以外に何も入れないものなのかなあと思って……。」

 ミナミはさらに顔を曇らせる。何かの琴線に触れてしまったようだ。ミナミは鍋から私の分をよそって、私に渡してきた。そして、少し考え事をしているようだった。


「すいません、これは今だけだと言うか……。」

 そう言って、ミナミは言葉に詰まった。ミナミは鍋をよそう手を止めた。そして、ミナミは目から涙をこぼした。私はいきなりの出来事に困惑した。


「お兄ちゃん、無神経!」

 ユララは私に向かって、そう言った。ユララは顔をこちらに向けて、包帯の奥から睨んでいるようだ。ウララも同じようにこちらを睨んでいた。私は現状を理解できずにいたが、私はミナミを気遣うように近づいた。


「……ごめんなさい。大丈夫です。別に、耕太郎さんは悪くないです。こちらの問題なので……。」

 ミナミは目の涙を手で拭き取った。


「もしかして、野菜を買うお金がないんですか?」

「それもそうですが……


 ……耕太郎さんは呪いを信じますか?」

「……?。」

「……信じませんよね。でも、この村は呪われているんですよ。


 この村では農作物は枯れてしまうんです。」

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