7話 人間
7話 人間
「…おいっ」
俺はもう一人のあいつに小さく声をかける。
…反応がない。
「おいっ、こっちだ」
「こっちを見ろ!」
一度こちらを見たが、何事もなかったように
作業を再開する。
俺はあいつを観察した。
むやみに声はかけられない…、あの人物も近くにいる。
瓜二つのあいつからは、
俺の存在を否定する様な嫌な感じがする。
それにしても何故こんなにも淡々と作業できる?
俺も近くにいるのに声もあげない。
俺に似せたアンドロイドなのか?
俺は小声で質問した。
「お前は誰だ?」
…。
反応がない、相変わらず作業を
続けている。
ここに居ても仕方ないと感じた俺は
あの部屋へ行くことにした。
部屋には誰もいなさそうだ。
ふと記憶が蘇る、部屋の闇は方向感覚が狂う。
そんな時にまた、あの人物に会ったらアウトだ。
ゴミ捨て場に廃棄されるならまだいい、
俺が気付かないうちに存在を書き換えられたら
終わりだ。
俺は部屋に入る前に色々と考えた。
まず俺は部屋に入らない。
いつでも逃げられるようにする。
これは必須だ。
だが部屋の外からできること…。
そうだ、部屋に浮かぶ文字の羅列、あれを壊そう。
通常と違う何かが起これば少しはこの世界の構造も
分かるだろうと判断した。
ではどうすればいい…ここには、
机、椅子、道具、ロボット、あの人物、そしてあいつ。
…あいつだ。
あいつを利用する…。
しゃべりもしなかったし、感情も無かったようだ。
あいつは…アンドロイドだ…。
…もし人間だったら。
…。
…。
いや、大丈夫だ。
俺はあいつの所へ向かった。
…。
人間は、自然とは違う独自のルールで社会を作った。
矛盾だらけのルールだ。
それでも人間社会は発展した。
弱い者を助けることを正しいと言い、
生き残るためなら他者を犠牲にする。
環境や立場が変われば、
人間はどちらの行動も正しいことにできる。
他者を利用して活路を見いだす。
道徳的には正しくない。
だが、これも人間らしさと呼べる。




