第七話
「基本的な内容は前回と同様です。ですが今回、二回目となる隣の銀河知的生命体存在反応調査は、初めの二週間は前回同様、我々が選択した生命体が存在する可能性が高い環境を持つ星の調査をおこないます。ですがその後の二週間は、それぞれのブロックにある酸素を含む星が集まっている星団や星系の調査をおこないます。詳しくは手順書を読んでいただきたいのですが、とにかく危険が付きまといます。今回はMパックのドライバーも二十四時間体制でドライバーシートについていてくれます。ドライバーと密に連絡を取りながら行動を進めてください」
シュリアンはカンファレンスで操縦士たちに伝えた。インストの派生体であるミティも未開宙域の調査は二回目となるが、それでも今回は常識では考えられない有酸素星への調査があり、Mパックの使い捨てという、これまた常識外れの計画に、緊張の色は隠せずにいた。
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二回目となった隣の銀河の調査は、順調に進んで一週間が経過した。送られてくる基本情報データを分析するシュリアンとインスト。室内の静寂を破るように、ふいにホログラムが浮かんだ。
「シュリアン。こちらA班のパブダだ。マニュアル操作に切り替えた。至急判断を仰ぎたい」
隣の銀河での、初の生命体接触かと思い、浮足立ってしまうシュリアンとインスト。事務員室の大型ホログラム投影スペースに目を向けると、一秒ごとに送られてくる画像には、正二十面体の物質が映っていた。
「パブダさん。一度だけ1FPS百カプセル解像度から、最大の千カプセル解像度に上げた画像を送ってください。それと、この物質の基本情報はわかりますか?」
「シュリアン、千カプセル解像度の画像を送らせた。それと基本情報はイリジウムの単結晶。これは間違いなく人工物だろうな」
大型ホログラムには、先ほどより解像度が高い正二十面体、イリジウムでできたイコサヘドロンの物体が映し出されていた。
「基本情報収集作業で微弱だが、磁気反応があったので見つけることができた。読み取りテキストは先ほど送っておいた。サイズ的にプロキシフォレジャーでは回収が難しい。おそらくオーン星人と同じくらいのサイズの生命体が残したものではないだろうかと推測する。このままマニュアルで調査を進めるか?」
「そうですね。回収が難しいサイズであるならば、それ以外に選択肢はない。その場での調査を進めてください。私の方は送ってもらったテキストの解読に入ります」
緊張をほぐすような動きを見せたシュリアンはインストを見た。
「どう思う?」
大型ホログラムには、送られてきたテキストが浮いているが、当然見たことがない文字だ。
「銀河調整員のウハメさんなら似ている言語から、ある程度の推察はできるかもしれないわね」
シュリアンはすぐにこのテキストをウハメに送った。
十数分後にはウハメがホログラムに姿を映した。
「シュリアン。これは私も知らない文字だが、似ていると思う文字はいくつかある。その中で、むかし第一核にあったブレコ星の言語をあてはめると、意味を成すことができる。違いもあるが、私なりの修正を入れて文章化したものを送る。まだ七割程度の正解率だと思って読んでくれ。これから外銀河に問い合わせをおこない、あらゆる言語をあてはめてみる。明日には最終結果を報告する」
ウハメのホログラムが消えると同時に、宇宙標準言語のテキストが浮かび上がった。それを読み始めたシュリアンとインストは息をのんだ。
「……やはり僕たちの当たり前を、一度捨てる必要があるのかもしれないね」
『三十六。星。六。文明。十七。命。不運。銀河。環境。変化。反転。反発。融合。変化。知的。生体。適合。世代。加速。反対、生命。残党。律動。一億年。知性。退化。当然。逃走。加速。千年。文明。崩壊。自分。未達。集団。文明。文化。崩壊。当然。集団。保持。個。保持。優先。有様。仲間。消失。感謝。残念。無念』
インストは複雑な感情を込めて言った。
「なんだか……パズルのように組みあがるメッセージが、ネガティブなものにしかならないわ……」
「そうだね。最後に残念と無念があるのがね……」
隣の銀河では調査の途中であったが、今回の発見は今後の方向性を修正すべきかもしれない事象であると判断したシュリアンは、再度の緊急でのミルコメダ準備会議を開催することにした。
「皆さま。連続での緊急会議の招集にご対応いただきありがとうございます。これより第四回、緊急隣の銀河ミルコメダ準備会議を開催いたします。今回、イリジウムでできたイコサヘドロンの物体が見つかったのは、隣の銀河の中心部に近い星系密集宙域でございまして、宙政学的にみたときに、首都星があった可能性を高く予想した宙域でございます。銀河調整員のウハメさんから、メッセージの解説をお願いします」
大きな会議場の中央部にあるメインブースに、ウハメのホログラムが現れた。
「今回見つかったメッセージの言語につきましては、我々が交流をしている百万を超えるどの銀河系でも使われていないものでした。私があたりを付けたのは、我々の宇宙を生み出した前回ビッグバンの親宇宙の星系で使われていたとされる言語です。従って記憶から起こされた資料しか残っていませんので、七割程度の解読に留まっております。残り三割に関しては、文脈からの私個人の予想に過ぎません。ですが、もはや確定させることは不可能です。我々の技術では、親宇宙との接点を持つことはできませんので」
ホログラムのウハメは、静かに、そして淡々とメッセージを読み上げ始めた。




