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ダブルスタンダード  作者: 平瀬川神木
第十二章 それでも家族になるために

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第四十四話

「…それについては少し違う。先ほども説明したが、アーキアは守りの考えを持っている種族だ。だが、それでもこの銀河の環境変化は大きくて、自分たちが生き残るために、サイズを大きくする必要性を考えた。環境変化が大きく起こる中で、個体としての身を守るための手段だった。さっき挙げた三種類の種族は、個体としての壁を持っている。外と内を切り分ける壁だ。我々は自分の身を守るために、壁を取り払って他の種族の中に入って守ってもらう道を選んだ。アーキアはその壁を分厚くすることにより、身を守る道を選ぼうとした。それゆえにサイズが大きくなる結果となった。バクテリアは自分自身が変容することにより、環境変化が自分たちにとって害ではないとする道を選んだと言えるね」

「なるほど。なぜサイズを大きくする道を選んだのかについて理解ができました」

「アーキアは最低限の進化として、外と内を分ける壁を分厚くしようと考えたわけだが、サイズが大きくなるということは、その分だけエネルギーがたくさん必要となる。しかし、それらの技術を手に入れるような進化は苦手な種族だ。だから彼らは大きな決断をした。その頃、小さな進化を多角的に進めていたバクテリア種族。その中にアルファプロテオという種族がいるが、彼らは浮遊酸素を利用して、少ないエネルギーを効率的に使う技術を手に入れていた。アーキアは、このアルファプロテオ種族との連携をすることにより、エネルギーの効率的な利用を考えた。持っていないものは借りればいいという考えだね。そして生まれたのがキネティックという種族だ。キネティックはアーキアの特性とバクテリアの特性を持ち、強固なガタイと多様性がある様々な進化を遂げた。そしてこのキネティックは、他の種族を自分に内包するという共通の技術を持っていた。もともとがアーキアが自分の中にアルファプロテオを取り込んだわけだから、力を借りるための特性は残しておいたわけだね。我々トリック種族は、このキネティック種族の進化種族に内包されることによって生き残る道を選んだ」

「なるほど。生き残るための内包化。これがあなたが他の躯体を操作して私と会話している理由。ということは、いま私が話をしている躯体は、キネティック種族の末裔ということになりますか?」

「…ああ、私が共に暮らしているのは、オオアメーバーと呼ばれる存在だ。共に暮らしていく相手によって、我々も分岐進化したと言えるね」

「あなたが言った三つの種族は、この星に初めから存在したのですか?」

「…いや、この三つの種族がいた時代、それは言うならば第二世代の時代だ。我々三つの種族はもともと一つの種族だった。それは第一世代、LUCAと呼ばれる種族。我々の起点だ」

「ですが、我々宇宙の当たり前からすると、なぜこんなにも違う種族のように進化したのか、それについてご存知ですか?」

「…ああ、さっきも少しだけ触れたことなのだが、本来宇宙は一星一種族が基本だ。だがこの星には第ゼロ世代とでも言ったらいいのだろうか、そんな時代があった。この星の本来の一種族がどの種族なのか? これは私も知らないし、知っている存在はいないと思うのだが、この銀河はマージの都度大きな環境変化が起こった。通常の銀河マージではあまり起こらない、星間衝突などもたくさん起こった。この第三惑星は、これらが原因で複数の、全く違う種族が存在した。これはウイルスと呼ばれている」

「え? あなたはご自身の種族をミミウイルスと言いましたが、ではあなたはこれらの第ゼロ世代と呼ばれるウイルスとご関係が?」

「…いや、ない。この星では、個としての壁がない存在をウイルスと定義している。我々は進化の結果として壁を取り払った。宇宙の多くの種族たちも、個としての壁は持ち合わせていないだろ? 安定した環境であれば、壁などいらないわけだが、不安定な環境だったからこそ、壁を持ち個を守る必要があった。そういう意味でLUCAが生まれたわけだが、我々をウイルスという名前でカテゴライズしているのは、我々はLUCAから進化してトリックとなり、その後、いうならば退化して壁を取り払った存在だからだね」

「壁を持つ存在の前にいた、壁を持たない存在。それらはウイルスと呼ばれて、星間衝突などで複数の星の生命体がこの星に集まったということですね?」

「…そうだね。多数の星から集まってしまったウイルスという生命体。これらもマージを試みた。上手くマージできる相性もあれば、マージできない相性もある。これは宇宙の当たり前と同じだ。いうなれば銀河とも同じだね。マージの結果として特徴は出現しなかったが、DNAとして、使われない機能の設計図をたくさん持った存在が生まれた。これがLUCAだ。そこから進化によって、あたかも違う生命体のように、様々な進化を遂げることになる。いつ、どこで、どのDNA設計図のスイッチがONになるか? 考えてみれば、もともとが複数の生命体が、半強制的に集められたこの星だから、結果としてそこからの進化で複数の生命体がいるともいえる。まさに複雑な生命体構造ができ上がったわけだね。複数の生命体が、LUCAという一つの存在に淘汰されたように見えるが、実は様々なウイルスが残したDNAはLUCAの中に残っていた。ついでにいえば、様々な星から集まったウイルスたちも、それぞれの進化を進めて、今でも多数存在している。だが、これらは意思疎通ができない、知的生命体への進化は成し得なかったと言えるね」

「宇宙では、持っているDNAの全てを形にした種族が一般的ですが、この星では、持っているDNAの一部しか形にしていない種族が一般的である。どの部分を使い、どの部分を使っていないかによって、全然違う種族のように見える。驚きです。イスペップさんから見たときに、この星のキー種族とは誰だと思いますか?」

「…アルファプロテオだろうね。彼らはこの星にほんの少しだけ存在した、浮遊酸素を使って、効率よくエネルギーを使う方法を手に入れた。運というものはこの宇宙で九十九%を支配するものだ。この銀河の激しい環境変化のなか、バクテリア種族から違う形で進化したシアノという種族。彼らは電磁波からエネルギーを編み出す技術を手にした。環境変化に対応するために、進化を急ぐ必要があった。結果として寿命を短くしていった。シアノは電磁波からエネルギーを編み出すかたわら、浮遊酸素を排出する。この星は少しずつ浮遊酸素が増えていった。数千年から数万年程度の短い寿命で進化をする道を選んだこの星の生命体たちにとって、浮遊酸素は猛毒という存在ではなくなった。結果として、この浮遊酸素を使えるアルファプロテオの時代がやってきた。彼らの能力は、今現在のこの星の生命体の多くが必要としている能力だ。宇宙全体から見たら驚くべきだろうが、浮遊酸素をポジティブな存在とする彼らの能力の下に、多くの種族が生きている。私たちもその一人だ。だからこの星のキー種族は、アルファプロテオではないかと私は思うよ」


「シュリアン、パブダだ。ちょっといいか?」

「どうしました? パブダさん」

「ああ、A班はUUUのインタビューをおこなっているんだが、アルファプロテオについて修正すべき情報だ」

「修正ですか?」

 シュリアンは急流に流されるような気持ちになった。


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