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ダブルスタンダード  作者: 平瀬川神木
第十二章 それでも家族になるために

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第四十三話

「みんな、ご苦労様でした。予定より四時間遅れてしまったけれど、傷ついた動物に対する処置も完了しました。ここからは第三惑星のキーとなる種族探しを始めます。初めの予定通り、全員でアルファプロテオ種族とUUUへのインタビューに入ってください」

 Mパックドライバーのボアが言う。

「シュリアン。今回入箱させている、フォトサスティナー一千億機の出箱はどうする?」

「そうでしたね、ボアさん。第三惑星からの贈り物に対する、お返しのフォトサスティナーの出箱作業もありますね。フォトサスティナーはヌルフィールド被膜が設置されていませんので、重力ロックがかけられない。インストさん、宇宙港らしき設備の純水の中に出箱させるだけでいいのかな?」

「ええ、シュリアン。純水の中にそのまま出箱させればいいわ。純水に浮いたり沈んだり、流れに身を任せるように移動するだけだから」

「わかったよ、インストさん。ではボアさん、ただ出箱させてください。それでいいそうです」

「わかった、シュリアン。それではフォトサスティナー、宇宙港らしき設備の純水プールに一千億機を出箱する」

 テント跡の骨組み上部から、一マイクロメートルサイズの、地球の高輝度発光ダイオード程度の明るさで輝く、水素核融合ユニットがMパックから出箱された。

 それは光の滝と呼ぶにはとても繊細で細いが、糸と呼ぶには輝きすぎている一千億粒の光の行列。徐々に純水は光を乱反射しだして、真夏の太陽光のような輝きに宇宙港らしき設備が包まれた。

「これは……銀河のようだな」

 ホログラムを見ていた、インストがつぶやいた。

「シュリアン。念のためプロキシフォレジャーの何機かを、この純水プールに回して、点灯異常など確認をしてほしいの。今回は時間がなくて、メウジクミの方では予備機を出しただけで、チェックはしていないはずだから」

 インストの言葉にシュリアンは同意の意思を表示する。

「そうだね、贈り物のお返しだもんね。万が一光量が弱いものがあっても良くないね。E班ミティさん。特別任務だ。自動操縦十機のプロキシフォレジャーで、純水プール内のフォトサスティナーの状態チェックをしてください。今回持ってきたフォトサスティナーは、本来アンドロメダ銀河内の各星のエネルギー生産プラントにトラブルが起こったときに送るエネルギー生成システムだ。僕たちジャミ人やオーン星人や、多くのアンドロメダ銀河の種族には、漏れ出すエネルギーが光って見えるけれど。非常用だから一年に一度くらいしかチェックはしていないからね」

「ミティです。了解しましたシュリアン。特別任務に向かいます」

「よろしくね」

 シュリアンは小さくつぶやいた。

「……でも、KOUGEKIとやらをしてきた種族って、いったいどの種族なんだろう。もし第三惑星のキー種族だったら、お互いを知ることに時間がかかるだろうな……僕たちは家族としてやっていかなければならないのだけれど……」

 こうして六回転目の最終調査は、第三惑星のキー種族を特定して接点を持つという、本来の目的に向かって動きだした。


「シュリアン、ミティです。純水の中でフォトサスティナーのチェックをしていますが、生命体らしき存在がアプローチをしてきています。九機で点灯チェックを継続して、マニュアル操縦一機で対応してよろしいですか?」

「ミティ、了解だけれど生命体らしき存在という言い方が何だかミティらしくない言い方だね」

「シュリアン、失礼しました。生命体です。ですが、ある意味でプロキシフォレジャーに近い相手だという判断の言葉でした」

「え? どういうこと?」

「まだ確定ではないですが、おそらくアプローチをおこなってきた対象は躯体としての存在であり、その意志は別の生命体だと思います」

「ええ? その根拠は?」

「意思伝達のやり取りにはラグがあります。思考を起因とするラグには感じられない、安定したラグ。発言内容が第三者的である。私に対する意思疎通の直前に、小さな電気ノイズが起こります。つまり誰かに操縦されている。まだ仮定です」

「さすが派生体だね。インストさんと話しているみたいだ。でもわかったよ、了解だ。インタビューを試みてください。重要そうであれば、他のプロキシフォレジャーもそっちに回すから声をかけてね」


 直感的に何かを感じ取ったミティは、腰を据えてインタビューを開始した。

「私の名前はミティと言います。あなたが住むこの星は、私たちが住む銀河の隣にあります。四十億年後くらいに、私たちの銀河とこの銀河はマージ、つまり合流します。今回はそのときにお互いが困らないために、お互いを知ることが必要だと考えて調査に来ました。私の言っていることはわかりますか?」

「…ああ、もちろんわかるよ。ミティ。私はこの星ではミミウイルスと呼ばれる種族の一員、イスペップといいます。遠いこの星にようこそ。驚いただろ? この星の状況には」

「はい、とても驚いています。今、私たちはこの星のキーとなる種族を探しています。この星についていろいろと教えていただければありがたいです」

「…知っていることはお教えします。宇宙では一星一種族が基本だが、この星はたくさんの種族が生きている。これは我々の銀河が経験した銀河マージの結果として、銀河環境が大きく変わったことに起因する」

「他の宇宙のこともご存じなのですね?」

「…ある程度は、というレベルだがね。どこから説明をしたら良いか難しいが、我々ミミウイルス種族は、トリックといわれる種族が分岐進化したものだ。我々がトリック種族だった時代、この星は三つの種族……本当はもっと多くの種族が存在していたが、とりあえず説明が複雑になってしまうので、三つの種族がこの星に存在していたと説明をしておこう」

「三つの種族とは、あなたたちのトリックと、他にはどんな種族がいたのですか?」

「…ああ、アーキアとバクテリアと呼ばれる種族だ。アーキアは言うならば守りの種族。変わらない、進化として変容を抑えることで生き残りを模索する性格の種族。そしてバクテリアは対応、つまり状況に合わせた進化を素早くおこなって生き残ろうとする性格を持つ種族。我々トリックは、その中間の考え方を持った種族だった。そして我々が選んだ道は、他の種族とマージというか、協業して生き抜こうと考えた。結果として我々は、個としての壁を取り払って、他の種族の中で仕事がしやすい進化を選んだ」

「以前の調査で、塩化ナトリウム水溶液の最深部で、アーキアという種族とは接触をしました。我々にとっては温度的にかなり厳しい高温環境で生きておられましたが、浮遊酸素から逃げ出したという言葉には、とても納得できるものでした」

「ああ、そうだろうね。この星にも初めからこんなに浮遊酸素が存在したわけではない。宇宙から見たら猛毒でしかない浮遊酸素。ある意味では我々も、浮遊酸素から身を守るために、他の種族の中に入ってかくまってもらうような道を選んだともいえるね」

「つまりアーキアやバクテリア種族の中に入って生き残る道を選んだ?」

 ミティは不運な銀河の深淵を覗き込むような気持ちになっていた。


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