第四十話
五回転目の調査は、宇宙港らしき設備で起こった不安定なポケット爆発で中途半端な終了を遂げてしまったが、次の六回転目の調査が最後の調査であることには変わりない。シュリアンは、カンファレンスで決定した最後の調査について、プロキシフォレジャーの操縦士と、Mパックドライバーのボアと、最後の調査の手順についての確認をおこなっていた。
「では皆さん。これで最後になる調査です。ミルコメダ会議で追加調査が認められるかもしれませんが、計画としての第一回調査はこれで完了です。なし崩しにはできませんので、しっかり結果を出したいと考えます。手順書はお配りしていますが、疑問点などありますか?」
初めに確認をしたのはボアだった。
「シュリアン。結局第三惑星全体への画像アプローチは一回しかおこなっていない。最後の調査も宇宙港らしき設備内だけとなっているが、これで良いのか?」
「はいボアさん。第三惑星を一周しているときに、不安定ポケットの爆発がありました。そして前回は、偶然とは思っていませんが、それでも大きな不安定ポケットにプロキシフォレジャー一機が巻き込まれました。万が一Mパックが吹き飛ばされたりしたら、たった一箱しかない超巨大Mパックを失うことになりかねません。継続調査が認められるかもしれない現状で、超巨大Mパックを危険にさらすことはできないので、宇宙港らしき設備に固定が正しい判断だと思います」
次に確認をしたのは、B班、インストの派生体ミティ。
「シュリアン。今回は前半でアルファプロテオ種族へのインタビュー、状況に応じてキーとなる種族の調査の探索インタビュー。マニュアル操縦ではなく、一人十機のプロキシフォレジャーを時間制限なしで運用してよろしいのですか?」
「うん。ラストだからメウジクミさんからも許可をもらっているよ。できるだけたくさんのインタビューができるように、皆にも頑張ってもらいたいんだ」
「了解です」
こうして最後の調査が始まった。
今回も超巨大Mパックには、いつものように八百機のプロキシフォレジャーと一酸化炭素で満たされた収納ストレージが入箱されている。今回いつもと違うのは、贈り物に対するお返しが入箱されていることだった。それはカンファレンスの中で決定したお返しだった。
「とりあえず一つの種族の個性なのか、それとも分岐進化した多種族なのかの問題は置いておくとして、二度も贈り物をもらっている以上、僕たちからもお返しが必要だと思うんだ。特に二度目は自分たちの資源を電池として分けてくれているのだから。何をお返しするか、良いアイディアはあるかな?」
インストが発言する。
「あれが非常用の電池であるというのも私たちの仮説にすぎない現状があるけれど。シュリアンは実用的なものと、ランドマーク的なもの、どっちが良いと思っているの?」
シュリアンは少し考えながら答える。
「そうだね。やっぱり僕は実用的なものの方が良いと思う。でも実用的なものって、第三惑星の種族の生き方がわからないとダメだよね。でもまだよくわからない。浮遊酸素をエネルギーの一つとして使っている個体もいれば、嫌っている個体もいる。でも電磁波の中でも光エネルギーを必要としている個体は多いけれど、これを嫌っている個体とはまだ会っていない。そう考えれば光エネルギーの何かが良いのではないかな? くらいしかイメージが持てていないや」
カンファレンスの途中ではあったが、インストは通信端末を操作する。
「メウジクミ? 私よ、インスト。フォトサスティナーってすぐに何機用意できる?」
「え? 正確な数を答えるには時間がほしい。基本的にはアンドロメダ銀河の星の数だけ予備があるから、そのうちの一割、一千億機くらいならすぐに用意できるけれど」
視線をシュリアンに戻してインストが言う。
「シュリアン。フォトサスティナーならば一千億機をすぐに用意できる」
銀河調整員のウハメが言う。
「なるほど。フォトサスティナー(永劫光子点灯機)ならば、この第三惑星では重宝がられるかもしれない。水素核融合エネルギーだから、第三惑星にはいくらでも素材があるし、排出されるのはヘリウムだから環境汚染を引き起こす可能性はないな」
「さすがみんなだ。どうかな? お返しにフォトサスティナーを一千億機っていう案は?」
ウハメが返す。
「アンドロメダ銀河のみならず、多くの銀河の多くの種族は、電磁波のどの域を認知できるのか種族によって違う。アンドロメダ銀河のフォトサスティナーは、超結晶炭素で作られた外壁だから、漏れだす電磁波の領域は、400から700ナノメートルの電磁波だ。これは問題ないだろうか?」
インストが言う。
「第三惑星とオヤイアット星の距離を考えたときに、フォトサスティナーが発する電磁波が大きな問題を引き起こすとは思えないけれど……念のため宇宙港らしき設備の純水の中に展開させたらどうかしら? そうすればフィルター効果で、すぐに第三惑星上の生命体を傷つけることは避けられるのではないかしら? 無害で有用だと考えれば、自分たちで好きな場所に運ぶでしょ」
シュリアンは嬉しそうに言う。
「さすがみんなだ。その作戦でいきましょう」
こうしてアンドロメダ銀河からのお返しは、一マイクロメートルの中で水素の核融合を行い、第三惑星の多くの動物や植物が認識することができる『可視光線』を永劫的に放つ機械一千億機に決定した。
こうしてボアが操縦する超巨大Mパックは、六回目の第三惑星探査に到着した。
「……シュリアン、様子がおかしい」
宇宙港らしき設備の付近に到着したボアが、緊張感を持った感情で告げた。




