第三十七話
「アンドロメダ銀河全域統括事務局単独全権事務員総長宛て、A班パブダより。第三惑星内七百九十九機のプロキシフォレジャーは集合完了。指示を請う」
シュリアンは視線を動かさずインストに言う。
「工部専門員インスト。捜索範囲の設定を述べよ」
「単独総長。爆発規模がわかりませんが、固定性生命体、植物がなぎ倒されている範囲の五百倍を具申いたします」
「単独総長よりパブダ宛て。至急爆発により植物がなぎ倒されている範囲を調べよ」
「パブダ了解。……単独総長宛て、半径三十六メートルから五十九メートルと確認」
「単独総長シュリアンより全機へ。全機横列隊形を取り、光速簡易スキャンを開始。宇宙港らしき設備を中心に、半径三十キロ圏内の捜索を開始せよ」
「単独総長宛て、全機捜索に入る」
真剣なシュリアンにプレヴァが告げる。
「単独総長。この間に、Mパックによる被害範囲の画像収集を具申します。目的は動物、植物の生命体の被害状況調査です。未来の仲間たちに対して、我々ができることがあるかもしれません」
「了承した。生命体専門員は責任者として指示を出せ」
「単独総長、了解です。プレヴァよりエポンラインボアドライバーへ。地表五メートルから最大解像度の画像収集をしてください。範囲は爆心地から五十メートル以内。それが完了し次第百メートル以内と拡大。目的は生命体の被害状況調査です」
「プレヴァさん、了解した。これより画像収集をおこなう」
「パブダより単独総長宛て、プロキシフォレジャー部隊は一回目の調査完了も発見に至らず。横列の向きを変えて二度目の簡易スキャンに入る許可を求める」
「単独総長よりパブダへ。了承する。直ちに実行せよ」
「パブダより単独総長宛て。二度目の簡易スキャンを実行する」
簡易スキャン結果が映し出されるホログラムを見つめるシュリアンに、インストが声をかける。
「単独総長。もし次の簡易スキャンでも発見に至らなかったときには、先ほど申し上げた捜索範囲五百倍を千倍に修正いたします。第三惑星の気体粘度の低さは私の予測より影響が大きい可能性を再考します」
「工部専門員、了解だ」
「パブダより単独総長宛て。プロキシフォレジャー部隊は通信不能状態のアスタ分身を発見できず。スキャン角度を45度変更して再スキャンおよび、スキャン周波数の変更。ならびにG班ミッチを離脱させ、先ほどインタビューしていた生物やUUUへの情報収集を実行させることを許可願いたい」
「パブダ、目的を簡潔に述べよ」
「パブダより単独総長宛て、通常状態ではプロキシ捜索に特化した周波数での光速簡易スキャンをおこなった際、発見できる確率は九割を超えます。範囲外かイクリプスか、双方の対応が必要かと考えます」
「イクリプス……物陰に隠れる食か。了解した。工部専門員が範囲の拡大を申し出ている。角度変えるな、スキャン周波数変えるな。前回スキャン同角度で、範囲を半径六十キロに拡大して光速簡易スキャンを再実行せよ。なおミッチには特別任務として、UUUへのインタビューを認めるものであるが、九機は自動操縦でスキャン捜索に継続して従事し、一機だけをマニュアル操縦でインタビューに向かえ。それが困難と判断する場合、優先はスキャン捜索であることを決定事項として伝える」
「ミッチです。単独総長、ありがとうございます。やってみせます。これよりUUUへのインタビューに向かいます」
「よろしい、ミッチ。結果を出せ。七百九十八機のプロキシフォレジャーは、拡大した範囲を光速簡易スキャン捜索再開だ。結果を私の前にもってこい」
「単独総長、了解!」
全操縦士が一斉に発言した。四倍に広がった面積を、慎重かつ素早くスキャン調査を進める。全長1.7マイクロメートルの超結晶炭素で作られたジャミ星人の分身を、この混沌とした第三惑星の土の中から見つけ出すのは困難を極めた。
「ミッチより単独総長宛て。情報を得ました。ですが、彼らが言う座標の起点がわからないため、これより私が案内に従って行ってきます」
「単独総長より、ミッチ宛て。落ち着いて状況を説明せよ。今の報告では全く理解できない」
「ミッチより単独総長宛て。了承前ですが、いま移動を始めています。先ほどの種族に再会することができました。これもUUUが先回りしていたようです。つまり、私がこのアルファプロテオとの再会を望むであろうと予想したUUUが、事前に彼を先ほどインタビューした場所で待機するように指示していたそうです。第三惑星で人工的に作られる金属製のほらあなのようなものがあり、圧力や酸化で変形した鉄製ほらあなの中に、爆発の勢いで吹き飛んだプロキシフォレジャーが入り込んでしまった。UUUはその情報網から、その場所をつかんだらしいのですが、教えてくれようにも、東西南北という我々にはわからない言葉で説明があったので、連れていってくれとお願いしました。移動を開始しています。バックアップを依頼したいです」
「単独総長より全操縦士宛て。全プロキシフォレジャーは、いったん収納ストレージ付近に集合し重力ロック。その後、全操縦士は一機のプロキシフォレジャーをマニュアル操縦で、ミッチの現在位置表層一メートル付近を追従せよ」
そこにあったはずの宇宙港のようなドームは張られていたテントが吹き飛び、三角形を立体に組み合わせたトラス構造の骨組みだけが、ところどころ残っていた。久しぶりに太陽光が直接湖面を照らしている。プロキシフォレジャーが修繕した、人工サファイア製の糸で編まれた、直径二キロのうち中央部五十センチの小さな部分だけがキラキラと七色の輝きを放っている。
「単独総長へ。ミッチです。発見です。外観は問題ありません。粉砕、破損などは見受けられません」
「単独総長よりミッチ宛て。それでは周囲に待機させているプロキシフォレジャーを回収に向かわせて問題がないか送れ」
「ミッチより、単独総長宛て。問題ありません。回収班来られたし」
「単独総長より、上空一メートルに待機中の全プロキシフォレジャーは、ミッチのもとに移動して、行動不能となっているプロキシフォレジャーを回収せよ」
「パブダより単独総長宛て。これより全機、ミッチのもとに移動して行動不能に陥っているプロキシフォレジャーを保護回収する。行動開始する」
シュリアンは少しだけ小さなホワイトノイズを吐いた。
「パブダより単独総長宛て。ただいま行動不能に陥った、E班アスタ操縦士の分身プロキシフォレジャーを保護回収し、収納ストレージに入箱した。作戦完了とプロトコル7700の解除を要請する」
「単独総長よりパブダ宛て。プロトコル7700解除要請了解するが、緊急プロトコルの全てを解除する要請で正しいか?」
「パブダより単独総長宛て。その通りです。緊急事態の全てを解除要請する」
「単独総長より、全関係者へ。この通信完了と同時に、緊急プロトコルの全てを解除する。以上」
「了解した、シュリアンご苦労様でした」
シュリアンは大きなホワイトノイズを吐き出した。




