第三十四話
四回転目の調査が始まった第三惑星。今回超巨大Mパックは、宇宙港らしき設備の中に待機して、百倍でホログラムを投影していた。
C班の調査場所が変わったので、A、B班も合わせて、これまで通りプロキシフォレジャーは一時間交代で、各班十機ずつの運用となる。A、B、C、D班は、移動性生命体と、固定性生命体の調査にあたっていた。E班はコンタクトが取れるシンビオ種族探しを継続しており、F、G、H班は地面の調査を続けていた。
「シュリアン。ちょ、ちょっと見てください」
慌てた様子のG班、ミッチが映し出すホログラムに視線を向けるシュリアン。
「どうしたんだい……って、これは……なに?」
専門員たちも突然のことで、状況を把握するのに少しの時間を必要としていた。
「はい、シュリアン。私たちG班とF班は、一回転目からずっと謎の地面の調査を進めてきているのですが、出発前のカンファレンスでシュリアンたちはこの第三惑星の固定性生命体が、ただ使い捨てをしているように見えて、実は循環させている。つまり我々の憲章にもある『平等である』『協力し合う』『奪わない』を実践しているのではないかという話になっていましたよね?」
「ああ、ちゃんとカンファレンス記録を読んでくれているんだね。嬉しいよ、ミッチさん」
「で、ですね、今回出発前にリントさんにご意見を聞いておいたのです。出発前の合同チームミーティングの中で、循環とは通信に似ているという意見が出ていましたので。そこで出たアドバイスから、今回謎の地面について、スキャンの波長を変えてみたのです」
自分が伝えたアドバイスを思い出すようにリントがいう。
「オムニフィラメントストリーム。全てをつなぐ細い線の流れね」
「そうです。これまでは謎の地面を構成する個体成分に焦点を当てた波長でスキャンをしてきたのですが、今回は生命体間のエネルギーと情報の流れ、つまりトランザクションをとらえるのに適した周波数でスキャンをしてみました。そこで浮かび上がったのが、この、言葉では言い表せないようなネットワークでした」
「ビッグバン直後の、最初の光の歪みみたいだ……」
「光の歪みというより……なんて美しいんだろう」
ホログラムには、十五平方キロメートル、直径五キロメートルを超える広大な、ところどころ黄金色に輝く、白い網目状のネットワークが映し出されていた。
「シュリアン。四回転目の調査について、私たちはこのネットワークに焦点を当てて調査を進めてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。お手柄だったね。皆に感謝だよ。リントさんなら仮称をどう付ける?」
「そうね、ユニバーサル・アンダーグラウンド・ユーティリティ。UUU」
「なんかカッコイイね、よし決まりだ。UUUを仮の名前としよう」
F班とG班の調査が進むにつれて、このUUUが一体何をしているのかという、存在意義が明らかにされつつあった。
「シュリアン。A班とB班がこれまでの調査であたりを付けていますが、この第三惑星の生命体の糧は基本糖であると予想しています。このUUUは、固定性生命体から糖を受け取り、引き換えに謎の地面全体に張り巡らされたネットワークで集めた、リンや窒素、水などを渡しています」
「全宇宙で行われている、通常取引と同じだね」
「この二者が、どのようなコミュニケーション方法を用いて、取引が成立しているのかはまだわかりませんが。そしてもう一点、第三惑星では自身を優先して、別の種族、別の個を優先しないという話もありましたが、これに対するアンチテーゼのような働きをUUUはみせています」
「というと?」
「シュリアン。固定性生命体が密集している謎の地面の地域。この中で例えば何かしらの理由で、オヤイアット恒星からの電磁波が届かなくなり、光合成技術によって糧である糖が作れない状態になっている個があるとします。するとUUUはこの情報をこの地域全体に流し、十分な糧を生み出している個体から、糧不足に陥っている個体にエネルギーを運んでいるのです」
「うーん、僕たちであれば当たり前のことだけど、この第三惑星では当たり前ではないと言われているが、でも実際はそうではなさそうで……」
「シュリアンが悩むのは当然です、確定情報が一つもないので。ですがこのUUUの存在が、以前見つかった滅亡した種族が残したテキストを、全面的なストーリーとして受け入れることに対するアンチテーゼとなっていることは間違いないと言えます。さらに……これがちょっと……」
「どうしたんだい?」
「はい、この第三惑星では、奪うということもあるようでして。一部の移動性生命体が固定性生命体が使い捨てていない、まだ生命体として生存している状態の部位を、奪い取って糧にすることがあるようでして」
「え? 生きたままってこと?」
「そうですシュリアン。そのような野蛮な行為が行われたときに、UUUはその周辺に危険信号を送り、それを合図のように、他の固定制生命体は奪い取られないような対応をしています」
「すごいね、こんな短時間で全体を見極めてきているね」
「いえ、一回転目からずっと謎の地面の調査をさせてもらっていたので、今まで抱えていた『おかしいな』という点が、このUUUの発見で一気につながった。そんな感じです」
「なるほど。継続は力だね」
シュリアンは大きく納得を表した。
「シュリアン、おかしい、UUUの反応が変です」
緊張感が極端に高まったミッチの訴えに、シュリアンも緊張が高まる。事務員室の大型ホログラムには、一部が真っ赤に染まったUUUが映し出されている。
次の瞬間、ホログラムは一度消えて、すぐに映し出される。
「シュリアン!」




