第二十五話
調査開始から十時間が経過して、一回転目の調査が終了する。全プロキシフォレジャーは収納用ストレージボックスに入箱した。
「では一度アンドロメダ銀河に戻る。再度、全プロキシフォレジャー入箱確認を」
ボアの言葉に、各班から完了の返答。
「それでは第三惑星を離脱する。予定では十二時間後にジャミ星に到着だ。操縦士諸君、安全作業ご苦労様でした」
ボアはメッセージホログラムの投影を止めた超巨大Mパックを、宇宙港らしき設備から移動させて、光速であっという間に第三惑星を離れた。
Mパックがジャミ星に到着すると、さっそくMパックから収納ストレージが出箱され、作業を終えたプロキシフォレジャーが整備工場へと光速移動を開始した。
待ち受け準備を整えていたメウジクミたちはさっそく整備作業に入った。幸いなことに初回の調査では、前回のような謎の生命体のコロニーに飲み込まれるようなトラブルもなかったし、一酸化炭素が充填されているストレージのおかげで、プロキシフォレジャーの酸化は停止していた。軽微な洗浄や整備作業で次の調査に送り出せる状態での帰還となった。
シュリアンとインストは、Mパックが到着している広大な平地に足を運んだ。そしてそこで出箱された、超巨大を上回る超巨大な物体を、地表から三メートルの高さまで上がって見下ろしていた。
「いやいやいや。三メートル上空まで上がると、超巨大Mパックも小さく見えるね」
シュリアンが言うとインストが答える。
「その隣に並んだ、この謎の物体。まずは撮影してホログラム化しましょう。Mパックから出しちゃったのは仕方ないけれど、再度Mパックに収納してオーン星に届けるのも至難の業ね」
「そうだね。このサイズのものを動かせるヌルフィールドクレーンは、ジャミ星には現存していないからね。困ったね」
「シュリアン、あなたはどうにも切迫感というか緊張感がないわね。どうするのよ、これ?」
「でもほら、これが何なのかわからなければ、それを無責任にオーン星に送ることもできないよ。まずはこれが何なのか、みんなで話し合わなければダメだよね」
「……何で嬉しそうなのよ?」
インストは呆れたように言った。
戻ったプロキシフォレジャーの整備と、次の調査のプロキシフォレジャーの積み込みをメウジクミや操縦士たちに任せたシュリアンとインストは、超巨大な謎の物体の撮影を終えて、光速で事務局に戻った。シュリアンはすぐにカンファレンスを開始した。
「さて皆さん。素材のことは後回しにして、これ、なんだと思いますか?」
初めに意見を述べたのは、通信監理員のリントだった。
「概ね1.5メートル程度の棒状の先端に、直径五十センチ程度の円形があり、その円形には網目状の何かが張られている。私の見解では、その昔の電磁波通信用のアンテナではないか? という予想を提示します」
工部技術員のインストが返す。
「でもこのサイズよ? オーン星人でもどうにもならないようなサイズ」
生命技術員のプレヴァが返す。
「不安定な二本脚生物が知的生命体だとすれば、サイズのことは納得がいきます。もしリントさんのアンテナだという意見が正しいと仮定する場合、なぜ彼らがこのアンテナを我々に渡したのか? という目的が気になります」
「彼らが我々と電磁波通信を望んでいる?」
リントのつぶやきにインストが返す。
「一通信で二十五万年かかってしまうわ?」
「例えば彼らは、我々が持ち得ない超高速電磁波通信の技術を持っているとか?」
リントの言葉に、インストは返す。
「いや、現存の交流がある他銀河で、そのような技術は存在していないわ? エネルギーを持つ電磁波に、ハニカムドーナツの付着を阻止することはできないし、質量を持たない電磁波にヌルフィールド被膜加工をすることもできない。つまり電磁波が存在しないことにはできないから、そこに空間は生まれてしまい、時間も生まれてしまう。簡単に言えば電磁波通信が光速の上限を超えることができないという事実は変えられないのでは?」
「僕たちにできないことでも、彼らはできるのかもしれない。彼らにとって当たり前な技術だから、彼らは僕らにもできると思っているのかもしれない」
シュリアンの意見にインストが確認を促す。
「でもシュリアン。不運な銀河で見つけた滅亡した種族のメッセージ。そして第三惑星の環境から予想するに、世代交代が我々に比べて著しく早いというのは間違いないと考える。だとすると全銀河で成し得ていない技術を、第三惑星の生命体が手にしているというのは無理がある前提ではないかしら? 光速を超える電磁波、つまり光速を超える光は存在しないというのが、この宇宙の理でしょ?」
「例えば彼らの世代交代が本当に百年程度だったとしても、次の世代と完ぺきなまでの情報共有ができているのであれば、二十五万年くらいの時間は意に介さない価値観を持っているとか?」
シュリアンの言葉にまたしてもインストが返す。
「でもメッセージには、集団の存在よりも、個の存在を優先する有様だとあったわ? だとするとあなたの仮説と矛盾しない?」
カンファレンスが行き詰まってきたときに、シュリアンの端末にメウジクミから通信が入った。




