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ダブルスタンダード  作者: 平瀬川神木
第五章 切り取られた宇宙

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第二十一話

 シュリアンは、オムニノードの全専門員と、プロキシフォレジャーの操縦士、エポンラインのMパックドライバーを集めてカンファレンスをおこなった。

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。これより三回目の知的生命体存在反応調査についてのカンファレンスをおこないます。これが最後の調査となります。何より安全に、その中で知的生命体の発見につなげられるように、力を合わせて実行しましょう」

 ホログラムで映し出されたのは、今回の調査の手順書。シュリアンは内容を確認するように、一つ一つを参加者に伝えていった。


 エポンラインのドライバー、ボアが確認をする。

「まず、ここまでを確認させてくれ、シュリアン。今回は超巨大Mパックが担う役割は大きい。我々はただのドライバーだ。操縦士諸君のような訓練は受けてきていない。プレッシャーを感じているのは確かだ。目的地は第三惑星の塩水に浮かぶひし形の土地。そこにある、宇宙港と思しき直径三キロもある『どでかい』円形ドーム。積み込み物資は、プロキシフォレジャー八百機、一般洗浄セット、今回特別に作った一酸化炭素充填収納ボックス。超巨大Mパックは、ドーム付近でホログラムを展開。調査を終えたプロキシフォレジャーは、一回転三十六時間の調査完了ごとに、アンドロメダに連れ帰る。そして新しいプロキシフォレジャーを積んで第三惑星に向かう。それを六回転の予定でおこなう」

 シュリアンは同意の意思を表明した。

「その通りです。次は調査隊の確認をお願いします。パブダさん」

「プロキシフォレジャーは、全八班十名ずつの操縦士と百機ずつを搭載。操縦は一人一機のマニュアル操縦で基本調査をおこなう。一時間ごとにプロキシフォレジャーは収納ストレージに戻り、新しいプロキシフォレジャーで調査を再開。十時間後、一度ジャミ星に戻り収納ストレージからプロキシフォレジャーを降ろして洗浄整備に回す。新しいプロキシフォレジャーを積み込んで再出発。片道十二時間なので往復二十四時間。調査時間が十時間で、荷下ろしと積み込みを二時間で完了させる。操縦士は三十六時間勤務で一回転として、七十二時間の休憩。六回転の調査をおこなう」

「その通りです。二百十六時間で一回転目の出発予定は四時で回収作業などもありますから、延べ十日間の調査活動となります。基本的に超巨大Mパックがホログラムでメッセージを投影し、プロキシフォレジャーが様々な情報を入手する。こんな流れになります。ただし、初めにおこなうのは、前回調査で置き去りにしたMパック八つと、プロキシフォレジャー一機の回収です。それを完了させた段階で、宇宙港のような場所に移動して調査を開始します。質問等よろしいでしょうか?」

 ボアが言った。

「シュリアン、質問はないか? と言われれば質問だらけだが、あまりに質問が多すぎて言葉が浮かびやしない。つまり不安ってやつだ。現場で臨機応変にやるしかない今回の手順。その都度相談と指示をよろしく頼む」

「そうですね。今回は反応想定がまったくできない相手が関係する行動になります。皆で協力して遂行しましょう。ご安全に」

 参加者のホログラムが消えていった。なぜか元気満々なシュリアンを見てインストが笑う。

「どうしたの? シュリアン。やる気がみなぎっているわね」

「ああ、しっかり寝たし、バーに寄ってスワエさんに、いつもよりたくさん相手してもらって、いろんな話を聞いたんだ。だからエネルギー満タンだよ。何よりこれが最後だからね。見つけたいなって気持ちがある。先の仲間たちを」

 その場にいた全員が同意の感情を示した。


 翌日から準備が始まり、プロキシフォレジャーの整備場でも、酸化修繕準備が進んでいた。インストは七つ子で、この整備場にも派生体が一人働いている。メウジクミは有能だ。インストやミティが新しいことを生み出す能力を受け継いだとすれば、メウジクミは経験を積み重ね、同じことを確実に早く続け、いつもと違うところにいち早く気付く。現状を維持する能力を一身に受け継いだような存在だ。

 超巨大Mパックへの積み込み作業と、その三十六時間後に始まる降ろし作業と次のプロキシフォレジャーの積み込み作業。特に降ろし作業は今まで経験したことのない、酸化したプロキシフォレジャーの降ろしであり、しかもそれが八百機もあり、さらに三十六時間後にはまた八百機の酸化したプロキシフォレジャーが、傷つき疲れ切ってやってくる。それが六回も続く。

「三十時間くらいで八百機のプロキシフォレジャーをメンテナンスする。チェックをして、トリアージをして、酸化や破損が大きく、レッドタグが付けられた機体は隔離保管庫へ移動。後回しだ。要通常基本整備のブルータグとパーツ交換を伴う整備が必要なイエロータグの機体を優先して整備。なんだかんだ言って、プロキシフォレジャーは全部で二千機しかない。八百機は調査作業中で、八百機は傷ついて帰ってきたばかり。残りは四百機だから、帰ってきた八百機の中から最低四百機を三十六時間後の積み込み時間までに整備を終わらせなくてはならない。レッドタグが増えてくれば、どんどん厳しい状況に追い込まれる。シュリアンは理解しているのだろうか? そもそもインストが、工部技術員だからって、工部に対する要求が厳しすぎるんだ。やるさ、そりゃね、やるよ。任せられた仕事はキッチリとね。でも整備場だって十人で回しているんだ。こんな特別な手順の大規模調査。しかも浮遊酸素が二十一パーセントも含有する星の調査。準備段階で手を打っておいた方がいいだろうな……」

 メウジクミは手順書と整備ドックのスケジュール表を見ながら独り言をつぶやいたあと、端末に通信情報を流した。


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