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ダブルスタンダード  作者: 平瀬川神木
第三章 猛毒に満ちた青い星

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第十二話

似た構成素材と景色だが、真っ白な人工の渓谷状の地面。同じように白に近いが渓谷状ではなく、強いアルカリ性を示す平坦な地面。色はジャミ星に近い茶褐色だが、高温にさらされた様子と平坦に成形されたような地面。これらすべてが人工の地面である。そう言い切ることができるデータが集まっていた。

 別のプロキシフォレジャーの調査データには、アンドロメダ銀河にもある砂の地面が現れ、E班をホッとさせたりもする。そして次に現れた地面がどうにも判定ができない。


 それは、先ほどまでの「人工的な黒い地面や白い地面」とも、アンドロメダ銀河にも存在する「透明な鉱物である砂の地面」とも、根本的に性質が異なっていた。


【地質組成分析:判定不能。未同定の有機鎖、および夥しい数の生命体ユニット破片を検出】

「シュリアン。現状では解析不能。基本調査を逸脱しての調査をおこなう必要があります」

「うん。この地面は念入りに調査を実行しましょう」

 プロキシフォレジャーはその場所にとどまり、更なる調査を開始した。

 九機のプロキシフォレジャーは予定通り一時間以内に基本調査を終えてMパックに戻ったが、謎の地面の分析はまだ終わっていなかった。

「シュリアン。どうしますか? このまま続けるか、一度戻るか?」

「一度戻りましょう。ただし次の十機は今調べている謎の地面に集結して、同時に調査を実行しましょう」

「了解。一度調査を中断する」


 全機がMパックに戻った後、再度、謎の地面を目指してプロキシフォレジャーが飛び出す。それぞれが再度の基本調査や追加調査をおこなうも、次の一時間でもこの大地が一体何なのかわからずじまいとなった。

 シュリアンがE班の操縦士に告げる。

「Mパックの被害を抑えるためにも急ぐべきではありますが、一時間もらえますか? ここでカンファレンスに入りましょう」

 周囲にいたメンバーが集結した。


「まず事務員である私が整理したいのは、この謎の地面に含まれる有機鎖についてです。星間分子雲に含まれるホルムアルデヒドやアルコール。星々にもアミノ酸や糖、核酸塩基など、我々のアンドロメダ銀河にも有機物は存在します。ですがここで発見された有機鎖は我々の銀河にある最大でも数十の炭素のつながりに対して、数万以上の炭素が複雑に絡み合った超高分子です。私の知識では、これを有機鎖と呼んでよいのかすら疑問です」

「密度がね、あまりに違う。狭い空間にこれだけの数えきれない巨大な鎖がひしめきあっているこの謎の地面。これはいったい何なんだ?」

「安定度も異常な低さですね。まあこれは、浮遊酸素が影響して、激しく酸化反応を起こしているだけなのでしょうが……」

「何より秩序が無さすぎますよ。我々が知る有機鎖は完ぺきな秩序の上に成り立っていますが、この地面のこれは……不潔という言葉を持ち出したくなるほど無秩序だ」

 これまで黙って聞いていた、生物技術員のプレヴァが言う。

「巨大生物の死骸なのでは?」

 カンファレンスの場が静まり返る。インストが口をはさむ。

「どういうこと? プレヴァさん。根拠は?」

「根拠は二つあります。まず、先ほど出た無秩序さの正体です。確かに今は激しく酸化して無秩序に見えますが、極小レベルでの解析結果から、この数万の炭素鎖の破片には、明らかに同一の基本設計、テンプレートから作られた痕跡が認められます。自然の気まぐれではなく、明確な設計図に基づいて大量生産されたものが、破壊されて散らばっている状態です」

「……何者かが、意図的に作ったものが壊れたと?」

「はい。そして二つ目は、この環境そのものです。純粋な浮遊酸素が充満するこの星で、数万もの炭素鎖が自然発生することは化学的に絶対に不可能です。外部の猛毒な浮遊酸素による酸化を遮断し、内部でエネルギーを使って強引に有機物を組み上げる閉じたシステム……つまり、生命体という容器の中でのみ製造可能なはずです」

 プレヴァの言葉に、全員が息を呑む。

「ジャミ星の種族ではイメージできないですが、例えば第二核のオーン星の種族の一部は、命が尽きたあと、その容器が残る。つまり死骸です。もしそれがとても大きかったとして、その死骸を大地に重ね合わせて置いたとすれば。そしてそれを浮遊酸素が酸化させれば。この大地ができ上がるのではないか? というフィクションのような話をしているのですが……」

 またしてもカンファレンスの場は静まり返る。シュリアンはうなずいた。

「わかりました。一つ一つクリアしていきましょう。『それは無い』は無い方針で。E班の皆さん。三機は謎の地面の、垂直深度探査を進めてください。プレヴァさんの仮説が正しいのであれば、厚さが存在しているはずです。次の三機はこれらを一つの死骸と仮定して、有機鎖の連続性を確認してください。たどっていって一つの大きな有機体のマップを作るイメージです。それでサイズなどの目途が付けられる。次の三機はこの有機鎖およびその周辺の熱エネルギーを調査してください。酸化の状況や、原型といえる生命体の全容をつかむためです。最後にアスタさんの一機は、地表から離れての画像情報を集めてください。世界観が違う場合には、離れて観察することは重要です。以上。質問や確認はありますか?」

 カンファレンスメンバーとE班の操縦士は無言で同意を表明した。


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