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第5話 五人〔会議録〕

 会議室には、現場側として五人が出席していた。


 木口照彦・主査。五十二歳。 野田彩乃・調査員。三十六歳。 三宅辰実・調査員。二十九歳。 塚崎良太・調査員。三十五歳。 松田誠一・整理員。三十八歳。


 全員、複数の発掘現場を経験してきた者たちだった。木口は二十年以上の経験。野田は十年以上の経験。三宅と塚崎は五〜七年の経験。松田は三年目だが前職での精密作業の経験が長い。


 経験年数で見ると若いチームではなかった。しかし、骸ケ谷の調査の特殊性について、誰も、事前の情報を持っていなかった。会議の中で、廣澤から「過去の類似案件」という表現が、何度か出てきた。「過去にも同様の事例がありました」と廣澤は言った。「対応は既定の手順で行ってまいります」と。


 「過去の類似案件」——というのが、どのような案件のことを指しているのか、廣澤は具体的に説明しなかった。木口はその表現をメモに取った。メモを取りながら、現場主査として、確認すべきだ、と判断した。「過去の類似案件について、参照できる記録はどこにありますか」と木口は聞いた。


 「既往記録抄に、関連事項が含まれております」と廣澤は答えた。


 「具体的な事例は、既往記録抄に書かれている、ということでしょうか」


 「既往記録抄を、ご一読ください」廣澤の答えは、質問の核心からずれていた。木口は「具体的な事例の参照記録」について聞いた。廣澤は「既往記録抄を読め」と答えた。既往記録抄には過去の事例が「関連事項として」含まれている、というだけで過去案件の処理経緯そのものは別途に保存されているはずだった。


 木口はその差をもう一度確認しようとした。しかし、廣澤は次の議題に移っていた。会議の進行が廣澤の手で進められていた。いつから、廣澤が会議の進行役になったのか——木口には、判別できなかった。最初は中川が進行役だったはずだ。しかし、議題の中盤から進行役が廣澤に変わっていた。中川は廣澤の発言を、書記のように記録していた。


 その変化がいつ、どのように起きたのか——会議録には、書かれなかった。会議録を後で読んだ木口は、進行役の交代について、どこにも記述がないことを確認した。書かれなかった事実が書類の上に残っていなかった。

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