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第6話 現場主査として〔木口の現場日誌〕

 会議の最後の議題は現場の安全管理だった。木口は現場主査としての心構えを会議で述べた。「現場の安全管理は主査の責任で行います。調査員からの申告事項については、すべて主査である私が第一次的に確認します」と。


 廣澤が頷いた。頷いた、というのも、後から考えれば、確認できなかった。廣澤の頭の角度が、わずかに動いた——という記憶を、木口は持っていた。しかし「頷く動作の瞬間」を、見たわけではなかった。


 「主査としてのご判断を尊重いたします」と廣澤は言った。


 「申告事項のうち、対外的な開示の判断は本調査室の手順に従っていただきます」「健康管理記録への記録と封緘、ですね」と木口は確認した。


 「はい。手順書の通りです」会議室の机の上に、各人の前に配布された手順書があった。「申告事項処理手順(抜粋)」。木口はその冊子を、もう一度開いた。


 手順書の冒頭に、「一 申告事項の取り扱い」と書かれていた。「(一) 調査員より、現場での観察事項として申告された内容は主査が一次受理する。  (二) 受理された申告は、健康管理記録に記録する。  (三) 記録された申告は、外部に開示しない。所属外の関係者からの照会には、応じない」。


 手順は明確だった。明確に、申告事項を「外部に開示しない」と書いてあった。木口はその項目の脇にメモのような印を入れた。「現場主査として、申告を一次受理する」。


 書きながら、その「現場主査として」という主語を、自分の中で確認した。現場主査として、申告を受ける。申告を、健康管理記録に記録する。記録を、封緘する。


 その手順を、木口は、これまでの現場でも、似た形式で行ってきた。しかし、骸ケ谷の手順書はいくつかの細部が違っていた。「外部に開示しない」「所属外の関係者からの照会には、応じない」——この二つの項目が、これまでの手順より、強い表現で書かれていた。強い表現で書かれている、と、木口はメモに書いた。


 メモを取った字を、しばらく見た。ペンの跡が紙の上に薄く残っていた。

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