表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名を交わす精霊の森  作者: 葉月
第二章 選択する日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/24

幕間――謁見の間にて

 謁見の間の玉座には、王が座っていた。目の前には黒衣の神官が頭を垂れている。


「エイル王よ、これが新たに賜った恩寵でございます」


 黒衣の神官はそう言って、持ってきた布を恭しく広げた。現れたのは一本の杖。教会の祭壇に置かれていたそれは調整を終え、結晶の内側に揺らぎひとつなく、静かに光を湛えている。


 王はその杖をを一瞥し、静かに目を逸らした。


「……そなた、また精霊の見える者を捕らえたらしいな」


 低く抑えた声だった。 王の言葉に、神官は顔に笑みを貼り付けまま答える。


「王の民を捕らえるなど滅相もございません。これは神の救済。選ばれし者が、神の御業を担うための導きにございます 」


 その言葉に王は小さく息を吐いてつぶやく。


「救済、か……」


 視線は相変わらず杖には注がれず、ただ床を見ていた。すでに教会の救済を咎める術を王家は持っていない。この報告もただの形式で、王の言葉など何も意味はないのだ。


「……もうよい。下がれ」

「王に神の御加護を。この恩寵で民を導いてみせましょう」


 王はそれ以上何も言わなかった。

 黒衣の神官は一礼して杖を抱えると、謁見の間を後にする。そして誰もいないことを確認すると、鼻で笑った。


「ふん、お飾りの王め」


 精霊と別れてからというもの、エイル王家は確実に力を失っていった。

 その隙を縫うように、教会は根を張り、国の中枢へと入り込んだ。


 黒衣の神官は手にした杖へ視線を落とす。教会が管理する多くの恩寵――聖具は、年々力を失っていた。


 結晶の中の力は回復せず、使われる度に摩耗していく。やがて結晶は砕け、中に押し込められた“モノ”も壊れる。

 出力を安定させるための調整作業も進めているが、それでも摩耗したものは元には戻らない。


 被検体103のおかげで、いくつかの新たな核を得ることはできたが、完全に精具として調整を終えたのはこの一本だけだ。


「……まだ足りん」


 黒衣の神官は小さく呟く。外で控えていた灰衣の神官に、杖を押し付けるように手渡した。


「他の調整を急げ」

「はっ」


 短い返答。


「器はいくらでも必要になる」


 黒衣の神官は歩きながら続ける。


「次は、もっと適したものを探せ」


 場合によっては被検体103を連れ戻さねばならない。杖の結晶は、布の中で沈黙したまま、微かな光だけを宿していた。

遂に教会から飛び出してきた神官さん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ