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名を交わす精霊の森 ~精霊を忘れた世界で、少女は失われた盟約を結び直す~  作者: 葉月
第一章 境界の森

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幕間――失われた器、探される代替

 地下礼拝堂には、黒衣の神官が集まっていた。

 祭壇に据えられた杖は沈黙し、核となる結晶の内側では、力の流れが不規則に揺れている。


「力が不安定になっていますね」

「器が不在のままでは当然だ」


 そこには昨日まで力を制御していた少年がいない。やはり視える者は必要だ。


「ユノアス・ヴェイル――被検体103はどこに?」

「分かりません。逃亡するにも誰か、あるいは何かが手引きしたのかと。探させますか?」

「いや、いい」


 そばに控えていた灰衣の神官の発言に短く答える。どうせ外の世界では生きられまい。


「彼は共鳴率が非常に高かったのに、残念ですね」


 別の神官が言った言葉に、一瞥をくれる。いないもののことを考えていても仕方がない。

 それよりも聖具だ。新たに手に入れた恩寵を失っては困る。


「代替は?」

「試しましたが、彼のようにはいきません。器が先に壊れるでしょう」

「なら次を用意すればいい。稼働時間は短くてもかまわん」


 即答だった。

 結晶の中の光が揺れる。


「やはり、アエルの血は特別か……」


 しばし、沈黙が落ちる。共鳴率はもちろんのこと、ノイズに耐えうる力も有していた。器としてはまだまだ利用価値があったが、仕方がない。


「神の目の届かぬ場所へ行くなど、哀れな子よ」

「それも選択だ。次の子どもこそ救ってやればよい」


 黒衣の神官は話をしながら帳簿を眺める。そこには名前はなく、番号だけが記されていた。

 名など必要ない。器にも、精霊にも。


 番号の横には不適合と書かれ、横線で消されているものがほとんどだった。

 それは壊れた器。103にも既に横線が引かれている。残り少ない番号を見て神官は溜息をついた。やはり、消耗が激しい。


「また孤児を連れてこなければならんな」

「ええ、哀れな子は大勢いますからね」


 結晶の内側で、押し込められた光が揺れる。

 もはやそのノイズを聞く者はいない。


「全ては神のお導きだ」


 誰かがそう呟き、神官たちは祈りの姿勢をとった。だがそこに、神の気配はない。あるのは鈍く光る杖のみ。


 そして、失われた器の代わりを探す視線が、外の世界へ向けられるのだった。


神官たちは精霊は見えないし声も聞こえません。

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