幕間――失われた器、探される代替
地下礼拝堂には、黒衣の神官が集まっていた。
祭壇に据えられた杖は沈黙し、核となる結晶の内側では、力の流れが不規則に揺れている。
「力が不安定になっていますね」
「器が不在のままでは当然だ」
そこには昨日まで力を制御していた少年がいない。やはり視える者は必要だ。
「ユノアス・ヴェイル――被検体103はどこに?」
「分かりません。逃亡するにも誰か、あるいは何かが手引きしたのかと。探させますか?」
「いや、いい」
そばに控えていた灰衣の神官の発言に短く答える。どうせ外の世界では生きられまい。
「彼は共鳴率が非常に高かったのに、残念ですね」
別の神官が言った言葉に、一瞥をくれる。いないもののことを考えていても仕方がない。
それよりも聖具だ。新たに手に入れた恩寵を失っては困る。
「代替は?」
「試しましたが、彼のようにはいきません。器が先に壊れるでしょう」
「なら次を用意すればいい。稼働時間は短くてもかまわん」
即答だった。
結晶の中の光が揺れる。
「やはり、アエルの血は特別か……」
しばし、沈黙が落ちる。共鳴率はもちろんのこと、ノイズに耐えうる力も有していた。器としてはまだまだ利用価値があったが、仕方がない。
「神の目の届かぬ場所へ行くなど、哀れな子よ」
「それも選択だ。次の子どもこそ救ってやればよい」
黒衣の神官は話をしながら帳簿を眺める。そこには名前はなく、番号だけが記されていた。
名など必要ない。器にも、精霊にも。
番号の横には不適合と書かれ、横線で消されているものがほとんどだった。
それは壊れた器。103にも既に横線が引かれている。残り少ない番号を見て神官は溜息をついた。やはり、消耗が激しい。
「また孤児を連れてこなければならんな」
「ええ、哀れな子は大勢いますからね」
結晶の内側で、押し込められた光が揺れる。
もはやそのノイズを聞く者はいない。
「全ては神のお導きだ」
誰かがそう呟き、神官たちは祈りの姿勢をとった。だがそこに、神の気配はない。あるのは鈍く光る杖のみ。
そして、失われた器の代わりを探す視線が、外の世界へ向けられるのだった。
神官たちは精霊は見えないし声も聞こえません。




