第二十一話 降り積もる日々
雪は溶けたり積もったりを繰り返しながらも、確実に降り積もっていった。冬も深まって来たある朝、扉を開けた瞬間、冷たい空気が頬を刺した。昨夜も雪が降ったらしく、森へ続く道も、物置の前もすっかり雪に埋もれている。
「これはまた……たくさん積もったね……」
踏み固められていない雪は、ふくらはぎくらいまであり、歩く度にずぶりと沈んだ。ずっと森で暮らしているが、こんな量は珍しい。リアの記憶の中でも、一二を争う量だ。いつもと違う雪に苦笑するしかなかった。
「……やるしかありませんね」
ミラの一言に、三人は雪かきを始める。ユノは木製のスコップを手に、黙々と雪を脇へ寄ていく。雪は重たかったが、それでも手を動かすことはやめなかった。
ふと、リアの動きが鈍くなっていることに気付く。雪が中々持ち上がらない。
「リア、少し休んだ方が……」
「まだ、だいじょう、ぶっ」
言いながら、雪を脇に寄せる。息は上がっており、無理をしているようにしか見えない。それでも手を止めないリアに、ユノが更に声をかけようとすると、物置の方からどさっと雪が落ちる音がした。見れば、積もった雪の重さに耐えかねて、屋根が一部軋んでいる。
「放置するのは危険ですね」
ミラの言葉にリアも頷く。
「あっちの雪を先に下ろそう」
そう言ってリアは脚立を用意する。リアが脚立に手をかけ上ろうとすると、ユノが一歩前に出た。
「僕がやるよ」
「え? でも……」
「大丈夫。僕の方が力あるし」
ユノはリアの返事を待たず、脚立を上り始める。リアは慌てて脚立を支えて、グッと力を入れた。ミラも上空にふわりと浮かぶと、ユノのそばで見守る。
「無理しないでね!」
「大丈夫だから、下で待ってて」
リアに返事をしつつ、ユノは慎重に屋根の雪を落としていく。冷たい雪が袖口から入り、思わず身を震わせた。
「無理だと思ったら、すぐ代わるから」
下からはリアの心配そうな声が聞こえる。それでも、途中でミラの指示を聞きながら、弱音も吐かず、少しずつ屋根の雪を減らしていった。それと同時に、軋んでいた屋根の音も消えていく。
「このくらいで大丈夫でしょう」
「終わった……」
ミラの合図で下に降りる。腕は疲れて持ち上げるのも億劫だったが、やり切った達成感があった。
「助かりました」
ミラがそう言って微笑む。いつもなら、リアは一人で頑張ろうとしてしまうところだった。それをユノが止めてくれた。ミラはそれが何よりもありがたかった。
「ユノがいてくれて、本当に助かったよ。ありがとう」
リアもほっとしたように息を吐いて、お礼を言った。 その言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。ユノはもう一度気合いを入れると、スコップを握り直す。
まだ、物置の周りに雪は残っている。三人は再び、雪かきを始めた。
ある程度道が出来たところで、必要な薪を家に運ぶ。体はすっかり冷えきってしまっていたが、暖炉の前で手をかざしていると、じんわりと芯のほうから暖まってくるのを感じた。暖炉の前で暖まりながら、リアがぽつりと呟く。
「ユノがいなかったら、二人で途方にくれてたかも」
「そうですね。今回の雪はやけに多かったですから」
ミラも同意しながら、窓の外に目を向ける。その目は雪ではなく、森の方を見ているようだった。
「どうかした?」
リアに聞かれ、ミラは首を振る。
「いえ……気のせいでしょう」
ミラはそれっきり何も言わなかった。外ではまた雪が降り始める。リアはまた明日も雪かきか、と心の中で嘆息しつつも、三人なら乗り越えられる。そう思うと、冬も少し楽しくなるのだった。




