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名を交わす精霊の森  作者: 葉月
第三章 奪われたものの行方

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幕間――神の許し

 精霊は存在しない。おわすのは神のみ。

 それが、教会の教えだ。精霊が見えるというのは、神の冒涜にも等しい。だから正さねばならない。


 民は神の恩寵を求めている。必要なのは、神のお力を人の手で扱えるようにすること。

 精霊はいない。ならば、対話も契約も不要。意思などは必要ない。ただ、聖具の核となればよい。

 そのための精霊具だ。


 核を作るためには、元素に適合した石を使う。例えば、火の属性であれば、火山岩や赤熱した鉱石などだ。同じ属性の環境に囲われた精霊は、共鳴を起こし、逃げ場を失った力が一つの形に収束する。それが核となる結晶だ。そこに至るまでの工程は実に簡単である。

 探索。

 捕捉。

 固定。

 結晶化。


 最も重要になるのは、力に触れ続ける器だった。 器は精霊を視認でき、なおかつ感応性の高い子どもが望ましい。年齢が低ければ低いほど、個としての輪郭が薄く、精霊との境界も曖昧だ。その分、ノイズに耐え切れずすぐに壊れてしまうのが難点だが。


 その点、先日神のお導きで得た器は使い勝手がよい。被検体103。彼の血は、ノイズに耐えられる時間が長い。調整作業も適性が高い。


 それでも、長期運用には向かない。記録上は、そうなっている。


「次は、103を製造作業に回します」


 淡々とした報告。誰も異は唱えない。壊れても替わりはいるのだから。


 神の恩寵を望むものは多い。彼らの犠牲で、多くが救われるならば、それは正しい選択だ。神は沈黙している。 それが、我らに与えられた許しだった。


 それを疑う者はいない。

 だから今日も、民は救われる。

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