幕間――神の許し
精霊は存在しない。おわすのは神のみ。
それが、教会の教えだ。精霊が見えるというのは、神の冒涜にも等しい。だから正さねばならない。
民は神の恩寵を求めている。必要なのは、神のお力を人の手で扱えるようにすること。
精霊はいない。ならば、対話も契約も不要。意思などは必要ない。ただ、聖具の核となればよい。
そのための精霊具だ。
核を作るためには、元素に適合した石を使う。例えば、火の属性であれば、火山岩や赤熱した鉱石などだ。同じ属性の環境に囲われた精霊は、共鳴を起こし、逃げ場を失った力が一つの形に収束する。それが核となる結晶だ。そこに至るまでの工程は実に簡単である。
探索。
捕捉。
固定。
結晶化。
最も重要になるのは、力に触れ続ける器だった。 器は精霊を視認でき、なおかつ感応性の高い子どもが望ましい。年齢が低ければ低いほど、個としての輪郭が薄く、精霊との境界も曖昧だ。その分、ノイズに耐え切れずすぐに壊れてしまうのが難点だが。
その点、先日神のお導きで得た器は使い勝手がよい。被検体103。彼の血は、ノイズに耐えられる時間が長い。調整作業も適性が高い。
それでも、長期運用には向かない。記録上は、そうなっている。
「次は、103を製造作業に回します」
淡々とした報告。誰も異は唱えない。壊れても替わりはいるのだから。
神の恩寵を望むものは多い。彼らの犠牲で、多くが救われるならば、それは正しい選択だ。神は沈黙している。 それが、我らに与えられた許しだった。
それを疑う者はいない。
だから今日も、民は救われる。




