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名を交わす精霊の森  作者: 葉月
第三章 奪われたものの行方

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幕間――迎えの準備

 一人の女が訪ねてきたのは、生活具の不調や力を失った聖具が増え始めた頃だった。女はどこか疲れた顔をしており、更には切迫したような眼をしていたという。


 「子どもが精霊と話をしていた」と聞いた神官は、聞き取りを行い必要な書類を用意した。それらの書類を手渡された黒衣の神官は一番上の書類に目を通す。それは、その子どもの出生記録だった。


「出生記録に奇妙な点があり、お持ちいたしました」


 手渡された古びた紙の束は、何度もめくられ擦り切れており、いくつもの追記が書かれていた。


「……父親の名は?」

「明かしませんでした。ただ、高貴な血、とだけ」


 黒衣の神官は母親の項目を指でなぞる。

 ――元・王宮勤務。


「母親は王宮メイドだったとか。退職理由も明かしませんでしたが、退職と出産のタイミングを考えると……」


 顔を上げないまま紙面をなぞっていた指が止まる。そこには髪と目の色が書いてあった。とある特徴と一致している。


「正式な認知はありませんが、可能性は高いと思われます」

「精霊が見えるというのが本当であれば、血は疑いようがないだろうな」


 部屋に沈黙が落ちる。外から聞こえる祈りの声が、やけに大きく聞こえた。黒衣の神官はしばし考えたあと、脇に置いてあった袋を手に取る。中には幾ばくかの金貨が入っていた。


「これを前金として渡しなさい。そして、明朝子どもを連れてくるように、と。確認の準備はこちらで整えておく」

「かしこまりました」


 袋を受け取った神官は一礼すると、部屋を出て行った。黒衣の神官は、書類を一瞥し、低く呟く。


「アエルの血……。これも神の導きか」


 それは祝福か、あるいは――。

 だが、迷いはない。

 その顔にはどこか満足気な笑みが浮かんでいた。

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