幕間――王都の静かな歪み
この世に精霊など存在しない。
我らと共にあるのは偉大なる神のみ。
世を乱そうとする者は正さなければならない。
母親に連れてこられた少年は酷く怯えていた。昼だというのに薄暗い部屋で、少年は跪かされている。
天窓から差し込む光が、ステンドグラスを通して床に色を落としキラキラと輝いているが、荘厳に見える景色もどこか歪に見えた。
「この子が?」
「ええ、確かですわ。でももういらないの、こんな不気味な子。いつか、あの人が迎えに来てくれると思っていたのに」
母親はまるで人ではない生き物を見るような目で自分の子どもを見た。黒い服をまとった神官は少年の様子を確認する。
歳の頃は十代前半か。
必要最低限の世話はされていたようで健康状態には問題なさそうに見えた。暫くして、灰色の服の神官が書類を持ってやって来た。
「こちらに残っている記録と一致しますし、間違いないかと思います」
その報告に黒衣の神官は淡々と頷く。
「よろしい。この少年はこちらで引き取りましょう」
その言葉に、少年は思わず母親の方を見た。けれど、母親は一度も視線を合わせず、神官に何かを手渡されるとそのまま去っていった。残された少年は半ば諦めたかのように跪いたまま動かない。
「君は精霊が見えているのですか?」
「い、いいえ……」
少年は、咄嗟に答える。
「神の御前で嘘はいけませんね」
「うそなんて……」
そう言いかけた少年は、何かの声を聞いた気がして言葉を止めた。
否――それは声と呼ぶにはあまりにも苦しそうな、今にも引き裂かれそうな、音。
その音に導かれるように祭壇を見ると、いつの間にかそこには金属で出来た杯が置かれていた。その杯の中心には石が嵌め込まれており、中では光が揺らめいている。
石の奥で、その光が苦しげに脈打つ。助けを求めるようなその声は、音は、少年にしか聞こえない。
――それは、かつて精霊であったモノ。
あまりの光景に少年は目を見開く。その様子を見て神官は口の端を上げた。
「見えているのですね、アエルの血を引く者よ」
ようやく見つけたその人物は、ずっと探し求めていたモノだった。
教会といえばステンドグラス!
好きですステンドグラス。




