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奴隷スタートの古代ローマ転生で成り上がりRTA(実質強制)  作者: 九束
3章 黄金の指輪獲得RTA 外付けアクセルを添えて

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86話 お嬢様の陰謀

脳内リスナーの皆、おはこんばんちわ。


愛と忠義の100万セステルティウス奴隷、古代ローマに転生した元日本人科学系配信者のルシウスです。


あれ?俺日本人だったっけ?


……なんか最近、自分の前世が配信のこと以外あいまいなんだよなぁ……。


おそらく現世で生きていた年数より、前世の年数がまだ多いはずなのだが、そもそも前世で何歳くらいの時に死んだのかとか、配信以外の私生活で何をしていたのかとか、そのあたりが最近あいまいになってきている。


今のように脳内配信シミュをすれば、前世の知識はPOPしてくるのでRTAには困らないが、なんかこう、アイデンティティが失われるようでちょっともにょもにょする。


というか逆に、最近は脳内で動画配信者ムーブすると科学系以外の知識も思い出せるようになってきている不思議……。


デキムスさんに流し込んでいる工業簿記とか経済制度周りの知識がそれだ。


確かにコラボ相手にはそう言う分野に詳しい配信者もいたけど……。


体系だった知識は俺は持ってなかったと思うんだけどなぁ……。


「――というわけで、そうやって身を引いた()()()()()アンタに私が『あなたの愛もルシウスに必要よ』と言った()()()()()市内に流布すればアンタは純真な心を持つヒロインと妾の地位の両方を手に入れられるの。分かった?」


「ほ、本当そうなればルシウス君と一緒に居れる上にお貴族様の奥様の面倒なあれこれ全部免除なんですね!?」


「アンタにそう言うの求めてないから」


「やったー!お勉強免除!一生ついてきますルクレティアお嬢様!!」


そんなことを考えていると、俺の思考はルクレティアお嬢様とルシアが何やら合意を形成したような声によって引き戻される。


えーと、今何してたっけ?


あぁそうだ。ルシアの乱入をお嬢様がいなしているのを眺めているところだった。


ポンペイから戻り、ひと風呂浴びてすっきりしてお嬢様と対峙したのが1時間ほど前のこと。


そしてお嬢様の『全部よこせ』発言を受けて乱入してきたルシア。


まあそうだよね。ローマに来た時点で勝ち確だったのに、急にその地位が危うくなったらそりゃ乱入するよね。


そしてそんなルシアの肩に手を回し、当然想定していたかのように俺から離れた場所にごく自然に誘導して何やら内緒話を始めるルクレティアお嬢様。


先ほどの怒髪天な表情から一転、一瞬で青ざめるルシア。


多分、無力になったルクレティウス家に引き摺られるように不安定な政情に巻き込まれる事になるサギッタ家の現状を、解決策をあえて伏せて流し込んだのだろう。


無事(?)青ざめたルシアに対し、獲物を見るように一瞬目を光らせ、そしてとても悪い笑顔でまたルシアに何やら吹き込み始めるお嬢様。


青ざめた顔から一転、ぱぁっと明るくなってお嬢様の方を向くルシア。


そして今の『一生ついていきます』発言。


……あれ? しかも最後の発言聞いてると、なんかルシアは妾ポジションに収まることでストレスフリールートに入ろうとしてない?



ズルいんだけど????



思考を明後日の脳内配信に飛ばしていた時の目の前の風景を整理しなおした結果、ルシアがちゃっかりと一抜けルートに入っていることに気づいた俺は嫉妬のまなざしを向けようとルシアとルクレティアお嬢様の方に視線を再び向ける。


「ん……?」


すると、先ほどからさらに話が進んだようで、今度はなぜか手で顔を隠しながら耳を真っ赤にしているルシア。


しかし、指の間からこちらに視線が向けられており、なんか俺をめっちゃ凝視している。


そして、そんなルシアの視線に気づいた瞬間、背中に走る悪寒。


うん?なんかちょっと不穏な雰囲気だぞ。


「ルシウス君!!」


そんな良く分からない感覚に混乱していると、ルシアの方から俺に声をかけてきた。


「うん?話はまとまったの?」


「私もう来てるから!!ルシウス君が来たらいつでも行けるよ!!!」


「何が!?」


「わ、私は純真なヒロインだから!全部受け止めれるよ!?」


「何を!?」


「じゃ、じゃあ今日はもう寝るね!きゃーーーー」


そう言うと、ルシアは両手で頬を挟みながら、脱兎のような勢いで自室の方に去って行ってしまう。


「えぇ……」


「まあ勉強さぼってる小娘なんて私にかかればこんなもんよ」


そしてもう一方の言いくるめた側であるお嬢様は満足げなどや顔。


その顔に一瞬胸が熱くなる思いがこみ上げてきかけるが、それよりもルシアの方がお嬢様より年上でしょうとかそれ以前に何がどう決まったんですかとかいろいろなツッコミの思いが上回り涙が引っ込む。


「あの、なんか俺の何かが危険がデンジャーなことになってる気がするんですがその」


「特に貴方がひどい目に合うことは……あるかもしれないけど多分苦痛はないから安心しなさい」


「いや全然安心できないんですがその言い方!?」


「はいはい、ちゃんと説明してあげるわよ。まずね――」


そしてお嬢様の口から語られるのは、俺の評判である『愛と忠義の奴隷』の『切り売り』かつ『すり替え』の話。


まず、大前提として愛と忠義を両方押し通すために100万セステルティウスという大金を背負うことになった俺が、単に黄金の指輪の権利を得てお嬢様を娶るといった場合、当然ながら以前若様が指摘したように身分破壊となり元老院を敵に回し、愛する人を立身のために捨てたとみられてローマ市民からの名声からも地に落ちる。


ただし、お嬢様が言うには、これは噴火によって前提が変わったのだという。


ヴェスヴィウス山の噴火、それによるポンペイの消滅によって、今やルクレティウス家はほとんどの財を失い、直系一族はお嬢様のみ。

まさに断絶寸前という表現がふさわしい崖っぷちにある。


そしてそんなボロボロのルクレティウス家に残る資産の中で燦然(さんぜん)と輝くルクレティウス家の被保護者(クリエンテス)、デキムス商会及びデキムス学校を擁するムニウス・サギッタ家という、ローマ上流階級にとっては是が非でも(よしみ)を繋ぎたい家との関係。


このままでは確実に食い荒らされることは必至。


事ここに至っては奴隷である俺がルクレティウス家を救うために、つまりはルクレティウスという名を絶やさないために自らが黄金の指輪の権利を得る決意をし、お嬢様の婿となるということは、ローマの上流階級的には秩序破壊にはならず、むしろ最高の忠義と献身の形とみられるらしい。


何故なら動機が自らの立身によるわけではなく、このままでは名が消えてしまうルクレティウス家という家名を守るためという建付けだから。


この場合、上流階級は別にその身分制度を脅かされるわけではなく、むしろ既存の身分制度に新しい血を入れる最高の大義名分になる。


これで愛と忠義の内、忠義については問題がないことになる。


そしてもう一つの名声、ローマ市民を惹きつけてやまない『愛』の方。


こちらは『愛と忠義の間で揺れて苦悩する俺』にルシアが『愛する人の忠義を全うさせるために自らの心を押し殺し、身を引く』というムーブをすることでローマ市民の大好物『悲劇』に仕立てることができるとのこと。


そしてそれにさらにお嬢様が『愛する人のために、愛ゆえに身を引くという高潔な心を持ったルシアを自らと共に夫となる男の隣で歩むことを許す』という寛容を見せる。


そうすることにより、忠義故に苦悩する奴隷の男、そんな男を心から愛する故に自らの恋心を犠牲にしてでも身を引こうとする高潔な心を持った自由人の乙女、そんな乙女をローマの根幹たる『寛容』で共に手を携えようと受け入れる高貴な騎士の娘という、今までの『愛と忠義』という概念から『高潔なローマ人』としての理想のありようを体現するというすり替えで、今までの評判を失うことなく全部手に入れる、というのがお嬢様が書いた絵図だった。


えげつない。


実にえげつない。


何がえげつないって、これそれぞれ対立する概念全部に話のすり替えで何とかしてる部分がえげつない。


しかし俺にとっては特に問題ない内容なのでこれに関しては反対する理由もないのでOKとしよう。


で、だ。


「最後のルシアのあの挙動不審なあれは何なんですか?」


この話の中にルシアが赤面する要素も、意味不明な言動をする要素もないんですが???


絶対最後の部分省いてますよねお嬢様?


「……まあいいじゃない」


俺の疑問に対して、お嬢様は雑に回答をはぐらかしてくる。


「いやでも」


「ルシウスは全部私のものなんだから、私がどうしようと勝手でしょ?そんな事よりもこれで貴方の(おおやけ)、評判の件はこれで解決したから、次の手を打つわよ」


「次の手?」


「そう、私の後見に関する問題。この策はルシウスが私を娶ってくれるまで私が宙ぶらりんで居続けられる状況にならなきゃいけないんだからね。ピソ様以外の、こちらが主導権を握れる後見人が必要なのよ」


そう言って、お嬢様は俺に対して次の打ち手のための策を開示してくる。


……。


…………。


………………。


いや、確かにそれはあの方なら乗ってくるでしょうし、他の方々も乗らざるを得ないでしょうけど……。


えぐいこと考えますねお嬢様。

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― 新着の感想 ―
わあ、割り切っておられるー(棒) ルシウスくんには遠いスローライフへの道、ルシアちゃんがイチ抜けゲットですか……(笑)
ネルソン提督「なるほど、つまりルシウス君は三人で仲良くナニするルートを選択するというわけだな。さすがイタリア紳士だ」
あの方なら乗ってくる、でピンときちゃった まぁ楽しみに待とうっと♪
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