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第65話:世界一クリーンで甘美な有給休暇~

大聖堂での誓いの翌日。

 エデン自由クリーン連邦の最高指導部から、現場清掃総責任者ロイド・クレインに対し、一つの特別辞令が下された。

 それは――『世界一クリーンで甘美な、全額有給の完全休暇令』である。

 これまで帝都のゴミ山でも、エデンの開拓でも、一日たりとも休むことなく掃除と解体を続けてきたロイドの労をねぎらうため、五人の妻(?)たちが一致団結して計画した、極上のご褒美ピクニックだった。

 場所は、ウロボロスの解体によって誕生した美しい水晶湖を見下ろす、満開の野花が咲き誇るエメラルドグリーンの丘の上。

 抜けるような青空の下、大工棟梁ゴランたちが特製で組み上げた白亜のガゼボ(東屋)のテラス席には、大きなピクニックシートが広げられていた。

 シートの上に所狭しと並べられているのは、五人の少女たちが腕によりをかけて準備した、贅の限りを尽くした至高の手料理と極上スイーツの数々だった。


「わぁ……すごいご馳走だね……!」


 作業着ではなく、アリアが仕立てた爽やかな白い麻のシャツに身を包んだロイドが、目を丸くして感嘆の声を上げた。

 テーブルの中央で黄金の輝きを放っているのは、ヴェルザの大好物にしてロイド直伝の『巨大黄金ミルクプリン・超特大タワー』。

 スプーンを入れる前からぷるぷると魅惑的に揺れ、濃厚なミルクとほろ苦いカラメルソースの香りを漂わせている。

 その隣には、セリスとルシアが朝一番で薪窯を使って焼き上げた、エデンの採れたてイチゴと純白グラニュー糖がふんだんに使われた『純白の特製イチゴショートケーキ』。

 さらに、名水オアシスと神聖白ワインを固めた宝石のように透き通る『クリスタルワインゼリー』、アリアが西方商業連合から極秘空輸させた南国の瑞々しいトロピカルフルーツの盛り合わせ、そしてフェンネルが炭火でじっくりと香ばしく焼き上げた『極上モフモフ燻製ソーセージ』。


「さあ、ロイド様! 今日はホウキを持つのを一切禁止ですわ! 私たちがあなた様を、骨抜きになるまでおもてなしいたします!」


 アリアが腕まくりをして宣言すると、即座に甘い給餌合戦の火蓋が切って落とされた。


「ロイド様、まずはこのイチゴショートケーキをどうぞ! あーん、してくださいまし!」


 セリスが銀のスプーンにたっぷりの生クリームとイチゴを乗せ、上目遣いでロイドの口元へと運んでくる。

 ロイドが照れながら「あ、あーん……」と口を開けると、甘酸っぱいイチゴとシルクのように滑らかなクリームが舌の上でフワッととろけた。


「ん……! すっごく美味しいよ、セリス!」

「ふふ、ロイド様に喜んでいただけて幸せですわ!」

「パパずるーい! ヴェルもパパにあーんする! ほらパパ、ぷるぷるプリンだよ! あーーーん!」


 ヴェルザがロイドの膝の上によじ登り、自分の口よりも大きなスプーンでプリンを差し出してくる。

 濃厚なミルクの甘みとカラメルの芳香が口いっぱいに広がり、ロイドの頬が自然と緩む。


「ご主人様! 甘いものの後には、私の焼いたお肉です! 肉汁たっぷりですよ、あーん!」


 フェンネルがパリッと弾けるジューシーなソーセージを差し出し、ロイドが頬張ると、スパイスと燻製の芳醇な旨味がジュワリと口いっぱいに溢れ出した。


「マスター、糖分および脂質の過剰摂取を中和するため、名水ハーブティーの飲用を推奨します。……あーん」


 ルシアがひんやりとしたグラスをロイドの唇へと優しく当て、飲ませてくれる。

 さらに、アリアが冷えた神聖白ワインのグラスを傾け、優雅に一口飲ませてくれた。


「いかがですの、ロイド様? 世界一の有給休暇のお味は?」

「ふふ……甘くて、美味しくて、ちょっと恥ずかしいけれど……本当に最高の時間だよ。みんなが作ってくれたご飯は、世界で一番おいしいね」

「まぁ……! ロイド様ったら、そんなにストレートに褒めてくださるなんて……!」

 アリアが真っ赤になって扇子で顔を隠し、セリスも胸を押さえて愛しそうに目を潤ませる。

「えへへ! パパ、ヴェルもっとおやつ食べさせてあげる! 次はゼリーね!」

「ご主人様、次はこのフルーツのタルトもどうぞ!」

 右から左から、愛しい少女たちに囲まれて至福の味覚と温もりに溺れるロイド。

 風に揺れる色とりどりの花々の香りと、水晶湖の心地よいさざなみの音。

 数年間、誰からも労われることなくゴミ山を掃除し続けてきた孤独な青年に、いま、人生で最も甘美で幸福な時間が流れていたのである。

 お腹も心もこれ以上ないほど温かく満たされ、ピクニックの時間はゆっくりと、至福の午後へと移り変わっていった。

 それは、世界を救った英雄たちが過ごす、何よりも尊く愛おしい、最高の休日の一幕であった。

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