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第64話:エデン大聖堂での求婚~五人の美少女の誓い~

新世界環境クリーン連邦の樹立から一週間。

 悪役たちの終身清掃刑も滞りなく始まり、大陸全土に本当の平和と笑顔が戻った頃――。

 ロイド・クレインは、アリアから「連邦の重要施設に関する最終確認がございます」との呼び出しを受け、エデンの中央、世界樹の根元に新築された大聖堂へと足を運んでいた。

 青い作業着の胸元を正し、磨き上げられた白大理石の階段を登って重厚な樫の扉を押し開ける。

 その瞬間――ロイドの蒼い瞳は、目の前に広がる光景に息を呑んだ。


「…………え?」


 大聖堂の中央通路(バージンロード)の両脇には、朝露を浴びた満開の白百合と純白の薔薇が咲き誇り、色鮮やかなステンドグラスを通して差し込む七色の光が、聖堂の奥の祭壇を神々しく照らし出していた。

 パイプオルガンの澄んだ神聖な音色が静かに響き渡る中――祭壇の前に並んで立っていたのは、息を呑むほど美しく着飾った、五人の少女たちだった。

 彼女たちが身にまとっていたのは、いずれもロイドが解体精錬した最高級の白絹と神聖魔導糸で編み上げられた、この世のものとは思えないほど壮麗な『純白の花嫁衣装(ウェディングドレス)』だったのだ。


「ロイド様……ようこそお越しくださいましたわ」


 白銀の髪に繊細なレースのベールを纏い、胸元を美しく強調したマーメイドラインの神聖花嫁ドレス姿のセリスが、頬を林檎のように赤らめながら一歩前へと進み出た。

 その碧眼には、聖女としての祈りを超えた、ひとりの女としての熱い情愛と覚悟が宿っていた。


「かつて教会から捨てられ、絶望の底に沈んでいた私に、生きる意味と温もりをくださったのはあなたでした。神の前ではなく……私の魂のすべてをかけて、生涯ロイド様の傍らでお仕えすることを誓いますわ」


 続いて進み出たのは、純白のドレスに青いサテンのリボンをあしらい、陶器のような白い肌を露わにした魔導人形ルシアだった。

 彼女は瑠璃色の瞳を潤ませ、ロイドの手をそっと己の豊かな胸元へと導いた。

 人形であったはずの胸の奥から、トクン、トクンと温かな生命の鼓動が伝わってくる。


「マスター……私の心核には、永久伴侶プロトコルが完全上書きされました。私の命、私の演算能力、私の体温のすべては、マスターのためだけに存在します。……どうか一生、離さないでください」


 その隣で、健康的な長い脚を覗かせたスリット入りの純白チャイナドレス風花嫁衣装に身を包んだフェンネルが、銀色のモフモフ耳と尻尾をパタパタと小刻みに揺らしながら飛びついてきた。


「ご主人様! 闘技場で四肢を折られ、死にかけていた私を拾ってくれたあの日から、私の心も体も全部ご主人様のものです! 一生、世界一可愛いお嫁さん兼、世界一忠実な護衛犬でいさせてください!」


 さらに、金糸の刺繍が施された豪奢極まりない真紅と白のプリンセスラインドレスを纏ったアリアが、扇子を胸に当てて優雅に微笑んだ。


「ふふ……抜け駆けは許しませんわ。私の全財産、ゴールドマン商会の全権、そして私アリア・ゴールドマンのこの身体と魂のすべてを、ロイド様に永久投資させていただきますわ。世界で一番豊かな幸せを、私がお約束いたします!」


 そして最後に、小さな金色のツインテールに白百合の花冠を乗せ、ふわふわのフリルドレスを揺らす幼女竜姫ヴェルザが、ロイドの腰元へと抱きついてきた。


「パパ! ヴェルもパパのお嫁さんになるの! パパにいっぱい甘えて、パパにいっぱい美味しいプリン作ってもらって、ヴェルがパパを世界で一番幸せにするもん!」


 五人が同時に差し出したのは、ロイドがかつて解体精錬した最高純度の神話金属オリハルコンで鋳造された、お揃いの結婚指輪だった。

 五人からの、同時にして最大級の愛の逆プロポーズ。

 ロイドはあまりの幸福の重圧に顔から火が出るほど赤面し、目を白黒させながら頭を掻いた。


「み、みんな……ぼくなんかで、本当にいいのかい……? ぼくはただの、掃除屋だよ……?」

「「「「「ロイド様(ご主人様・パパ)じゃなきゃ、絶対に嫌です!!」」」」」


 五人の少女たちの声が、大聖堂に綺麗に重なり合って響いた。

 誰一人として揺るぎのない、純粋で真実の愛。

 ロイドの胸の奥に、温かい涙が込み上げてきた。

 セリス、ルシア、フェンネル、アリア、ヴェルザ。

 一人一人の温もりと笑顔を思い出しながら、ロイドは深く息を吸い込むと、五人の瞳をまっすぐに見つめ返し、満面の優しい笑顔で頷いた。


「……ありがとう、みんな。ぼくの傍にいてくれて、本当にありがとう。……これからもずっと、みんなで笑い合える綺麗な場所を、一緒に守っていこうね」


 ロイドが五つの指輪を一人一人の薬指へと優しく通した瞬間、大聖堂の鐘が天高く鳴り響き、世界樹から降り注ぐ光の祝福が二人と五人を温かく包み込んだのだった。

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