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第26話:セリスの神聖魔力×ロイドの解体技術=【ナノ霊薬温泉】開通~

パンツ一丁の帝国軍が情けない悲鳴を残して逃げ去り、再びエデンに静かで心地よい夕暮れが戻ってきた。

 庭のテラスで散らばった鉄屑(綺麗に分別された最高級ミスリル鋼板)を片付けていたロイドの元へ、セリスがおずおずとやってきた。

 黄金の長い耳を少し伏せ、申し訳なさそうに指先を胸の前でもじもじと絡ませている。


「ロイド様……あの、私……」

「ん? どうしたんだい、セリス?」

「私、ロイド様に命を助けていただいて、こんなに美味しいお食事やお茶までいただいているのに……さっきの戦いでも、何の役にも立てず、ロイド様にお守りいただいてばかりで……。何か、私にできる恩返しはないでしょうか……? 私、ロイド様のお役に立ちたいのです……!」


 潤んだ翡翠色の瞳で真っ直ぐに見つめてくるセリス。

 その健気な姿に、ロイドは思わず相好を崩した。


「恩返しなんて気にしなくていいのに。セリスが毎日笑顔でいてくれるだけで、十分嬉しいよ。……それに、セリスが淹れてくれる紅茶は最高に美味いしね」

「そ、そんなことでは足りません……! 私には、この神聖魔力しか取り柄がありません。……ロイド様のために、もっとこの力を使いたいのです!」


 セリスの熱い想いに、ロイドは顎に手を当てて少し考え込んだ。


「神聖魔力か……。そういえば、昨日ログハウスの裏山を解体開拓していた時、地下深くに良質な天然温泉の水脈を掘り当てたんだったな。……セリス、君の力と合わせたら、面白いものができるかもしれないぞ」

「お、温泉ですか……!?」


 ロイドはセリスの手を取り、ログハウスの裏手にそびえる小高い岩山へと案内した。

 そこには、地底数百メートルから湧き出る乳白色の天然温泉が、もうもうと白い湯煙を上げて川のように流れていた。

 硫黄の匂いは微かで、ほんのりとしたミネラルの香りが漂っている。


「よし、まずはこの岩場を解体して、最高級の露天風呂を作るぞ」


 ロイドは腕まくりをし、無骨な岩肌に手をかざした。


「――《原質解体・天然御影石再構築》!」


 ゴゴゴゴゴ……!

 ロイドの解体波によって、ゴツゴツとした岩山が豆腐のように滑らかに削り出され、肌触りの良い極上の天然御影石の浴槽へと瞬く間に組み上がっていく。

 大人十人が足を伸ばしてゆったりと浸かれる広大な露天風呂。

 そして、ロイドはセリスを振り返った。


「セリス、この温泉が湧き出ている注ぎ口に、君の《至高の神聖浄化魔法》を全力で注ぎ込んでみてくれ」

「は、はい! 参ります……! 《聖天の慈悲(ディバイン・グレイス)》!」


 セリスが両手を掲げて祈りを捧げると、彼女の全身から眩いばかりの黄金の神聖光が溢れ出し、湧き出る温泉水の中へと奔流となって溶け込んでいった。

 さらにロイドが、湯口の岩石の隙間に素手を差し込んだ。


「――《分子循環ナノ均質化(ナノ・ホモジナイズ)》!」


 ジュワァァァァァァァ……!!


 空気が甘く澄み渡り、乳白色だった温泉水が、一瞬にして淡いエメラルドグリーンに発光する、まるで液体の宝石のような神々しいお湯へと劇的に変貌を遂げた。

 立ち上る湯気は、吸い込むだけで肺の奥深くまで洗われるような、どこまでも清らかな芳香。


「バイタルおよび水質スキャン完了」


 ルシアが湯船に指先を浸し、淡々と分析結果を告げた。


「高濃度ミネラル、神聖浄化エーテル、およびマスターのナノ均質化分子が完全融合。……切り傷、骨折、呪毒、慢性疲労の即時全快効果を確認。細胞の代謝活性化率は通常の千二百パーセント。肌組織のターンオーバーを極限まで加速させる『奇跡のナノ霊薬温泉』の完成と認定いたします」

「やったな、セリス! 最高の露天風呂ができたぞ!」

「は、はいっ……! 私、ロイド様のお役に立てました……!」


 セリスは嬉しそうに両手を胸の前で握りしめ、花が咲くような満面の笑みを浮かべたのだった。

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