第14話:『最初のオアシス』誕生~帝国が嗅ぎつけた奇跡の匂い~
大浄化から数日。
エデンと名付けられつつあるそのオアシスには、どこからともなく小鳥が集まり、澄んだ歌声を響かせていた。
ロイドが庭の果樹園に植えた種(ゴミ山から発掘した古代樹の種子を分子活性化したもの)は、すでにたわわに実をつけ、甘い香りを漂わせている。
「マスター、採れたてのリンゴでアップルパイを焼きました」
「お、気が利くなルシア。いただきます」
木漏れ日の下、テラス席でサクサクのパイを頬張る至福のスローライフ。
しかし、その平和な楽園の外縁部で、不穏な動きがあった。
谷の縁に沿って、帝国軍の偵察魔導兵の小隊が馬を走らせていたのだ。
帝都のヘドロパニックの原因を探るため、廃棄谷の様子を見に来た彼らは、谷底を見下ろした瞬間、全員が馬から転げ落ちそうになった。
「ば、馬鹿な……!? おい、あれを見ろ!」
「終末の廃棄谷が……緑の森になっている……!?」
「幻覚か!? あの毒の海に、豪奢な屋敷が建ち、水晶の川が流れているぞ!」
偵察兵たちが震える手で望遠鏡を覗き込み、手帳に記録を殴り書きしていく。
その報告が帝都へ届けば、再び欲深い者たちがこの地に押し寄せてくることは明白だった。
だが、その時。
パトロールをしていたルシアの索敵レーダーが、オアシスの境界線付近で倒れている「ひとつの生体反応」をキャッチした。
『警告。境界線南東、距離八百メートル地点に倒伏個体を検知。……生命バイタル、極めて危険な低下状態』
「人間か!?」
「いいえ、生体波形から推測するに……エルフ族の女性です。全身が極めて凶悪な呪毒に侵食されています」
ロイドはパイを皿に置き、立ち上がった。
「すぐに行くぞ、ルシア!」
「はい、マスター!」
新たな波乱と、救済を待つ美少女との出会いが、すぐそこまで迫っていた。




