第13話:周辺十キロの大浄化~サラサラと消えていく毒の山~
拠点が完成し、生活基盤が整ったところで、ロイドは次なるステップへと踏み出した。
「よし、ルシア。今日はちょっと範囲を広げて、谷全体を掃除してみるか」
「了解いたしました、マスター。本機の広域索敵ソナーを展開します」
ログハウスのバルコニーに立ったルシアの背中から、純白のミスリル翼が大きく広がった。
キィィィン……と透明な魔力波が谷全体へと放射され、谷の立体地形図と廃棄物の分布が、ロイドの脳内へとリアルタイムで転送されていく。
『索敵完了。周辺十キロ圏内に、重金属廃棄物四万トン、魔導汚染灰二万トン、腐食ガスの滞留スポットが三十八箇所存在します』
「よし、まとめて片付けよう」
ロイドは両手を前方に突き出し、廃棄谷の広大なゴミの海を見下ろした。
全身の魔導回路を全開にし、胸の奥底にある《神話の解体核》を力強く鼓動させる。
「――《原質超広域解体》!!」
ドォォォォォォォォンッッ!!
轟音とともに、エメラルドグリーンの光の津波が、谷底を怒涛の勢いで駆け抜けていった。
光に呑み込まれたゴミ山が、端からサラサラと音を立てて解けていく。
猛毒のガスが清らかな春風へと変わり、錆びた鉄骨の山が純度百パーセントの鉄材と銅材のインゴットへと整然と変換されていく。
地中深くまで染み込んでいた黒い汚泥が、生命力に満ち溢れた肥沃な黒土へと生まれ変わる。
光の波が十キロの彼方まで達した瞬間――。
パァァァァァァ……ッ!
黒土の中から、瑞々しい緑の新芽が一斉に芽吹いた。
みるみるうちに背を伸ばし、瑞々しいエメラルドグリーンの草原が広がり、色とりどりの高山植物が花を咲かせる。
谷の割れ目からは、幾筋もの清らかな滝が流れ落ち、透き通る川となって草原を蛇行し始めた。
「……信じられません」
ルシアが瑠璃色の瞳を見開き、呆然と呟いた。
「毒素濃度、完全にゼロ。……半径十キロ圏内が、帝立植物園を遥かに凌駕する超自然オアシスへと転換されました」
「ふう……一気にやると、さすがに腹が減るな」
ロイドが笑って肩を回す。
かつて大陸中の人々が恐れ、忌み嫌った『終末の廃棄谷』は、いまやこの世で最も美しく豊かな『奇跡の楽園』へとその姿を変えていた。




