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第11話:勇者の自慢の聖剣、スラグのサビで真っ二つ~帝都ギルドの騒乱~

一方その頃、悪臭と汚泥に包まれた帝都の鍛冶ギルド『鋼の鉄槌』では、怒号と怒気の混ざった怒声が店内に響き渡っていた。


「おい親方! 耳が聞こえないのか! 早く俺の聖剣を研ぎ直せと言っているんだ! なんだこの汚らしい黒ずみは!?」


 目を血走らせ、泥汚れの残る顔をした勇者レオンが、カウンターの上に一本の大剣をドカンと叩きつけた。

 帝国に伝わる国宝『聖剣デュランダル』。

 しかし現在のその刀身は、昨日の中央炉爆発で吹き飛んだ紫黒色のヘドロがベットリとこびりつき、刀身の純金装飾はブツブツと醜い気泡を吹いて腐食していた。

 ギルドを束ねる頑固一徹の老鍛冶師ガラハドは、眉をひそめてその剣をルーペで検分すると、鼻から大きく息を吐き出して首を横に振った。


「無理だ、勇者様。こいつはただの汚れじゃねえ。『魔力スラグの強酸』が刃の分子の奥深くまで浸食して、鋼の結合がスカスカになってやがる。今下手に砥石を当てたら、それだけで粉々に砕け散るぞ」

「ふざけるな! これは帝国国宝の聖剣だぞ!? いつもなら、一晩預ければ翌朝には鏡のようにピカピカに直っていたではないか!」

「あん? 何を寝ぼけたこと言ってやがる」


 親方は咥え煙管から煙を吐き出し、呆れ返った目でレオンを睨みつけた。


「そりゃあ、あのロイドの小僧が毎晩仕事帰りにここへ寄って、お前さんの剣に直接触れて《分子手入れ》をしてくれてたからだろ。あいつの特殊な解体技術でスラグの酸性を中和して、刃の金属結晶を元通りに組み直してくれてたから、今まで折れずに保ってたんだよ」

「な……ロイドだと……!? あのゴミ拾いの雑用係が!?」

「当たり前だ! あいつがいなきゃ、こんな魔獣の毒血を吸いまくった剣なんざ、とっくの昔にボロボロになって使い物にならなくなってるわ! それを、お前ら貴族どもが結託してクビにしたって聞いて、街中の職人が呆れ返ってるぜ!」

「う、嘘だ! あいつがそんな凄い力を持っているはずがない! 貴様、適当な出鱈目を言って仕事をサボる気だな!?」


 プライドを激しく傷つけられたレオンは逆上し、親方の制止を振り切って聖剣を力任せにひったくった。

 そして、店先に設置されていた試し斬り用の鋼鉄柱に向かって、渾身の魔力を込めて大剣を振り下ろした。


「俺の剣が折れるはずがない! 見ろ、これが選ばれし勇者の力だァァァッ!!」


 パキィィィィィィィンッッ!!!!


 甲高い、あまりにも乾いた破断音がギルド中に響き渡った。

 鋼鉄柱に触れた瞬間、聖剣の刀身はまるで安物のガラス細工のように、根本から真っ二つにへし折れた。

 そして、折れた刀身の上半分が猛烈な勢いで回転しながら跳ね返り――。


 ズシャッ!!


「ぎゃああああああああっ!? お、俺の鼻がぁぁぁっ!?」


 レオンの自慢の高い鼻筋を浅く切り裂き、血飛沫を上げさせながら床に突き刺さった。

 鼻血を噴き出し、尻餅をついて「痛い!痛い!」とのたうち回る勇者レオンのみっともない姿に、店内にいた他の冒険者や職人たちから、クスクスとした冷たい嘲笑が漏れ起こったのだった。

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