第10話:ルシアの特製朝食~廃棄穀物から生まれた極上白米と名水塩~
翌朝。
東の地平線から差し込んだ清らかな朝日が、ヒノキログハウスの窓辺を黄金色に染め上げていた。
二階のふかふかのベッドで心地よい目覚めを迎えたロイドは、階下から漂ってくる香ばしい湯気の匂いに鼻をくすぐられた。
「……ん? なんの匂いだ? すごく香ばしい……」
階段をトントンと降りてリビングへ向かうと、キッチンではエプロンをつけたルシアが、陶器の土鍋の蓋をそっと持ち上げているところだった。
中から立ち上ったのは、ふっくらとした純白の湯気。
鍋の底には、一粒一粒が真珠のように白く輝き、ピンと立ったツヤツヤの炊きたてのご飯がぎっしりと詰まっていた。
「おはようございます、マスター。ちょうど朝食の炊き上がりのタイミングを計算し、配膳を完了いたしました」
「ルシア、これ……米か!? こんな最果ての荒野で、どうやって手に入れたんだ?」
「はい。昨夜、マスターがログハウスの土台を組まれている間に、東側の食糧廃棄区画を捜索いたしました。その際、湿気と泥水で真っ黒にカビて異臭を放っていた、投棄された玄米の袋を三俵回収いたしました」
「ああ……あの触るのも憚られるようなヘドロ米か」
「はい。マスターの《解体術》の理論を本機の論理回路で再現し、カビ毒の分子、酸化した外皮、残留農薬のみを極小パルスで完全に削ぎ落としました。その結果、内部のデンプン質が最高純度で結晶化した『極上精白米』の抽出に成功いたしました」
テーブルの上には、その純白のご飯をふんわりと結んだ三角形のおにぎりと、名水で煮込んだ澄んだ野菜スープが並んでいた。
おにぎりの表面には、キラキラと細かいダイヤモンドのような結晶がまぶされている。
「その塩は、谷底の岩塩層から抽出した、有害ミネラルを完全除去した『純度百パーセント天然ミネラル塩』です。さあマスター、冷めないうちにどうぞ」
「ありがとう、いただきます」
ロイドはおにぎりを一つ手に取った。
じんわりと手のひらに伝わる温もり。一口頬張ると――パリッとした香ばしい歯触りに続いて、ふっくらと炊き上がった米粒の圧倒的な甘みと豊かな粘り気が、口いっぱいに弾け飛んだ。
そして、ミネラル塩の角のないまろやかな塩気が、米本来の旨味を極限まで引き立てる。
「……っっ!? う、うまい……!! なんだこれ、帝都の最高級料亭で出される銀シャリよりも、何倍も甘くて美味いぞ!」
「マスターの生体バイタルから、極めて強い幸福感と脳内麻薬の分泌を確認いたしました。……本機の幸福度回路も、上限値を更新いたしました」
ルシアが嬉しそうにミスリルの翼をパタパタと揺らし、慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
名水で淹れた熱い緑茶をすすりながら、二人は至福の朝の時間を心ゆくまで味わったのだった。




