第2話【余裕と油断】
―――《虚空の司書》ルキス・リヴァーティ――
「キュリス、キーレス、現地集合ね」
「りょ〜かい!」
「承知。」
キュリスらが各々の方法で出発していったあと私は愛読書を開き、文字をなぞって魔法陣を開く。なぞった文字が熱を持ったように輝き、私の周囲を満たしていく。眩しいほどの光に包まれ、収まったあとは現場に着いていた。
「あ、ルキス〜みてみて〜!下界限定のポテチ〜!」
「はぁ…キュリス、貴方戦う気あるの…?」
「もちろんあるよ!下界の美味しいポテチ売ってるスーパー壊されちゃったら困るもん。」
彼女は手に持っているポテチの袋を無造作に放り出し、戦場の最前線に走っていった。
「じゃ、キーリスにはよろしく伝えて〜!」
「はぁ…」
私はあの頃のキーリスのようにこめかみを押さえ、キーリスの到着を待つ。
あの子のことだから放っておいても帰ってくるだろうから止めはしなかったけど、私さえもこの場を離れてしまったらキーリスが困るだろう。いくら通信装置を持ってるとしても戦闘中に使うのは難しい。
「ルキス、もう着いてたんですか。」
後ろから声がしたので振り向く。声の主はキーレスだろう。
「ええ。キュリスはもう行ったわよ。」
「それでは私達も行くとしましょうか。」
キーレスは言い放った後、現場に向かって滑りだす。スケートボードの動きに近しいもの。私も遅れまいと後ろに着いて行く。キーレスは障害物を避けて動くためアクロバティックな動きだが、私は極力動きたくないので目の前の障害物を砕きながら進む。道すがら雑魚どもが攻撃してくるが、あんな攻撃では防御結界は破れない。格好の的になるだろうと思ってキーレスと私に結界を張っておいたのだ。そして進むにつれて周りの惨状具合が酷くなっていく。魔族の進行の跡ではない。きっと、キュリスが派手にやった跡だろう。キーリスもそれに気づいている様だった。
「あ〜あ、下界の歴史的建造物がガラクタですよ…どれだけ派手にやってるんですか…」
「見てるだけで目が腐るわ。あの子、もうちょっと綺麗に壊せないものかしら。私ならもっときれいに壊すのに。」
「問題はそこじゃないです、ルキス。今月の修理費用、ゼノ様になんと言い訳すれば…」
私は顔も上げるのが嫌になったので下を向いて愛読書を読んでいる。よく瓦礫の破片などが飛んでくるが、防御結界に当たった瞬間、塵芥となって消える。少し無言の時間がまた続いた後、現場に到着した。
「あ、ルキス〜!あとキーレスも〜!」
彼女は戦闘中だというのに手を振る余裕さえある。彼女はそれだけ言うと戦場に向き直り、鎌と槍をぶんぶん振り回している。傍から見ると振り回しているようにしか見えないが、彼女曰くこれもちゃんとした戦略なのだそうだ。私は微塵も戦略に思えないけれど。
「私達も加勢するわよ、キーリス」
私はまず最初にこの戦場を対象に毒の結界を張り、敵の体力をじりじりと削っていく。
横を見るとキーレスはパネルを忙しなく操作している。そして彼が''あること''を告げた。
「ルキス、嫌な予感がします。」
彼がパネルを飛ばしてきたので受け取り、それをじっと見つめる。
キュリスのちょうど真下、一番の激戦場に向かって警告音が響いている。
「キュリス、危な――
彼が言い終わる前に前面のちょうど彼女がいるところの地面が噴火したように割れ、周りの雑魚が吹っ飛んで何処かに消えていく。彼女はというと、雑魚と一緒に吹っ飛んだか、姿が見当たらない。どこに行ったのだろうか、私達が到着しても姿が見当たらない。
「ばぁ〜!」
「…?!キュリス、何やってるの…?」
「え、キーレスかルキスかびっくりしたらいいなぁって」
「はぁ…、で前線の状況はどうなのよ?」
「うーんとね、魔族の端くれは結構いたけどちょっとでも重要そうなやつはいなかったよ」
「そう…」
「あとねあとね、端くれを倒すのめんどくさかったからあれの試運転したんだ!」
「あぁ…あの爆発はキュリスの所為なのね」
キュリスが言ってる’’あれ’’とは彼女が独自に作っている手乗りサイズの魔力爆弾のこと。名前はまだないらしい。威力の調整も可能らしいがそれ以上に彼女絡みだと問題がいつも付き纏うのでそちらのほうが心配だ。
「ルキス、キーレス、大体掃除したし帰ろ〜」
そういった彼女の体を、1本の長い槍が貫いた。
第3話に続く…




