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グロウ・ソウル  作者: PIERO
選抜試験編
52/57

策略と相性

 一週間が経過した。和貴とコハルは長い道のりの中、ジャングルをさまよっていた。

 水は雨水で潤し、食料は川に住んでいるワニを捕まえて食べるというワイルドな生活をしていた。

 焚火に今日のごちそうを焼きながら、和貴はコハルと雑談をしていた。

「なぁ、コハル。そう言えば元々人間が住んでいた土地って今はどうなってるんだ?」

「詳しい話は知らないが、三大種族の一つ。真似猫族(まねねこぞく)が占領しているらしい。あいつらは他の種族にとってはいい兵器だからな」

 コハルの一言に和貴は真似猫族のことを思い出していた。

 『真似猫族』。現代にわたっても未だ謎が多い怪物である。今のところ確認されているのは成体になっても人間に腰ぐらいの位置までしか成長せず、一度見た物は何でも真似できるというところだ。

 一見大したことが無いように見えるが、この真似できる範囲は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 結果、現状で人類が最も恐れているのは真似猫族であると言っても過言ではなかった。

「兵器ね。まさか同族のお前でも嫌悪する仲間がいるなんてな」

「おい、それは私を遠回しに馬鹿と呼んでいるのか?私はあんな奴らみたいな愚か者ではない」

 話がかみ合っていないことに和貴はいち早く気付いた。馬鹿にしてる気はなかったが、確かに敵対している者と同じと言われれば怒るのは当然だろう。

「悪かった。敵と一緒な扱いを受けるなんて俺も嫌だしな。この話題は一旦忘れよう」

「私も血が上りすぎた。・・・ところで、和貴達の世界について知りたいんだが、少し話してくれないか?」

 コハルは話題を変えようと和貴の世界について聞き始めた。和貴はそのことに対して何も違和感なく、コハルに和貴が暮らす世界について話し始めた。

「いいぜ。最初はそうだな、ああそうだ。俺達が通っていた学校について話すか」

 こうして和貴は自身の学校生活についてコハルに話し始めた。コハルは子供の様に興味深くその話を聞いていた。

 夕食を食べ終えた和貴は明日のために早く寝ようと瞼を閉じようとした。すると、コハルが眠ろうとした和貴に話しかけてきた。

「和貴。何故、私をここまで信用するんだ?いつ狙われてもおかしくないのに何故なんだ?」

「・・・似てるんだよ境遇がさ」

 すると、コハルは和貴の話に興味を持ったのか、顔をこちらに向けた。和貴はそのことを気にしないで自身の過去について話し始めた。

「俺は他の奴らと違って無能力者だから色々な差別を受けてきたんだ。親の顔も知らない餓鬼が一人で生きていくにはあまりにも無謀だった。だからこそ俺は最高の友に出会った。それからかな、俺の人生が変わったのも。だからさ、たった一人だけとか悲しいことは言わないでくれ。・・・さてと、もう寝るぞ。明日に響いたら話にならんからな」

 そうして和貴は夢の世界へ旅立った。そしてそのことを確認したコハルは小さくしかし、和貴が起きていれば確実に聞こえているだろう声量で呟いた。

「和貴も苦労したんだな。私もいつか報われるか」

 和貴はその疑問に答えることはなかったが、コハルは和貴の様子を見ているだけで充分だった。そしてコハルの瞼が自然と重くなっていくのを感じながら夢の世界へ旅立った。




 次の朝。和貴とコハルは荷物を纏め、目的地へと向かおうとした。

「さてと、じゃあ行くか。この調子だと後二週間で基地に到着しそうだな」

「・・・ああ、そうだな。それで私の役目は終わりか。なあ、もしもでよかったらなんだが、私も」

 その先の言葉は突然の倒木音によって遮られた。和貴とコハルは咄嗟に倒れてくる木をかわし、倒れてきた方向を見た。すると、視界にはあの時心臓を穿った筈の密売者達が現れていた。

「貴様ら!?生きていたのか!?」

「いや、他の奴らはまだしも、あいつだけはあり得ない!?何故心臓を穿たれて生きている!?確実に抉った筈だ!!」

 和貴の驚愕を楽しむかのように密売者のリーダーはふつふつと笑いをこみ上げ、最終的には大声で笑い始めた。

「ハハハハハ!!!!そんなに俺が生きていることがおかしいか?え!?おい!?確かにあの時、俺は心臓を穿たれてた。だがな、別に人間は心臓を穿たれて死ぬわけじゃないんだぜ?」

 その一言で和貴は密売者のリーダーは能力者であることを確信した。和貴はそのことを理解した上で密売者のリーダーに問いかけた。

「目的は何だ?仲間の仇か?それとも、コハルのことか?」

「両方だ。ボスはともかく、リーダーとしてあいつらは好きだったんでな。せめて仇を取ってやらなきゃいけないだろ?それに手ぶらで帰ったら俺がボスに殺されちまう。だからよぉ、せめて死ぬときは精々わめいてくれよぉ!!」

 その一言が戦闘の開始の合図だった。リーダーはあっという間に間合いを詰め、和貴に攻撃を仕掛ける。密売者のリーダーの武器は二刀のククリナイフと思われる物だった。

 両手に持ったククリナイフの一撃一撃が致命傷と思える場所へ切り裂かれていく。その一撃を的確に捌いていく和貴は体術も組み合わせて一度距離を取ろうとした。だが、密売者のリーダーもそれを予期していたかのように和貴の体術をかわしていった。

「おいおい、武器のセンスはあるのに体術はからっきしだな。いや、才能がないって言った方がいいか?いいか?体術ってのはな、こうやるんだよ!!」

 ククリナイフの切り裂きと同時に密売者のリーダーの蹴りが和貴の腹にめり込んだ。和貴は吐き出しそうな衝動に駆られるが、その一撃耐え黒弔(こくちょう)で密売者のリーダーを薙ぎ払った。

 予想外な展開だったのか、密売者のリーダーは和貴と距離を取り、仕切り直した。

「へぇ~驚いた。俺の蹴りを受けて膝をつかないどころか反撃するとはな。痛みには慣れてるってか」

「生憎、お前よりもきつい蹴りを何発も食らってるのでね。それに比べればお前の蹴りはそよ風のようなもんさ」

 密売者のリーダーは感心したのか口笛を吹き、和貴を賛美した。それに対して和貴は密売者のリーダーを見据えて他の状況を把握していた。

(コハルは恐らく別の密売者達と戦っているが、調子を取り戻したコハルであれば不覚を取ることはないだろう。俺はこの目の前の敵を倒すことに専念するか)

 すると、密売者のリーダーはまた笑い始めた。和貴は不気味と思う反面、一体何がおかしいのか疑問に思った。

「いや~、まさかこの俺に勝てるとでも思ってるのかと思っちまうとつい笑いが止まらなくてな」

「勝てるかどうかじゃない。俺は勝たなきゃならないんだ」

「おお~いいぜ~。そういう主人公っぽい台詞はよぉ~。・・・・()()()()()()

 その一言で密売者のリーダーの雰囲気が変わったことを和貴は理解した。その様子を見て面白かったのか、密売者のリーダーは和貴をからかった。

「おお?ビビっちまったのか?俺の殺気に。まぁ、戦闘族を退け、海魔族を絶滅させたとはいえ、人間の殺気にはまだ慣れていなかったか?」

「ちょっと待て。何故お前が俺の経歴を知ってる?一回もお前に話した記憶はないはずだ」

「おっと、いけねぇ。口が滑っちまった。じゃあ、殺しあうぜ」

 その一言で再び和貴と密売者のリーダーの殺し合いが始まった。多くの木はククリナイフと黒弔によって傷つき、金属音は森中に響き渡った。




 和貴が密売者のリーダーと戦っている中、コハルは残りの密売者達と戦い羽目になってしまった。

「しつこい!!貴様はさっさとくたばれ!!」

「ぐへへへ。お、おでの手に、さ、さっさと掴まれろ!!き、筋肉の、す、筋をボロボロにしてやる!!」

 敵は三人。だが、最も厄介なのは気持ち悪い口調でコハルに話かけてくる太った密売者だ。触れるだけで、四肢の筋肉をズタズタにするという恐ろしい能力だが、こちらの武器は弓である為、そう簡単に捕まることはない。

 コハルは太った密売者の額にめがけて矢を放った。しかし、その矢が太った密売者の額を撃ち抜くことはなかった。彼の付き人である他の能力者がどんな理屈かわからないが、矢の軌道を変えたのだ。コハルは舌打ちをして、どうするか考えていた。

(っく、どうする!?接近戦なら勝ち目があるかもしれないが、あのデブに掴まれれば一巻の終わりだ。かといってこの弓を撃ち続けても意味がない。どうする!?どうすればいい!?)

 すると、森の奥深くで金属音が鳴り響いていた。コハルは金属音が鳴り響いたところへ行こうとしたが、それを妨害するかのように密売者の仲間は阻止した。

 木の上に登り、敵から距離を取ったコハルは今の状況を整理しようとし、頭を冷やし始めた。

(何故、あいつらは和貴との合流を避けてるんだ?私と合流したら不利なことでもあるのか?)

 すると、根本からめきめきと嫌な音が響き始めた。コハルは下を見ると、そこには太った密売者が力ずくで気をへし折ろうとしていた。

 コハルはすぐに別の気に移動し、再び敵と距離を取りつつ、牽制で矢を放つ。しかし、その矢は敵に当たることなく、明後日の方へずれてしまう。

「・・・そういうことか。どうやら、こいつらと私では相性が悪いようだ。敵も馬鹿じゃないということか」

 敵そのことを知ってか、じりじりとコハルの間合いに近づいてくる。ここまで追い詰められてコハルは一つの考えを浮かべた。しかし、それは敵にも理解している行動であることも理解していた。

(敵の読まれていることをそのまま行動するとはな。不快極まりないな)

 コハルは和貴と合流するために別の木から木へと移っていった。それを敵は見逃すはずもなく、謎の脳力によってコハルを打ち落とそうとした。しかし、コハルは能力に被弾しても止まることはなかった。幸い、太った密売者の能力の射程外であったため、動きが完全に封じられることはなかった。

 被弾しながら、コハルは何とか三人の手下の包囲網をかいくぐり、和貴の所へ合流しようとした。そしてコハルは今の状況を目の当たりにした。

「はぁ・・・はぁ・・・。くそ、面倒すぎる」

「お?ギブアップか?まぁ、そうしてくれたら一番楽なんだけどね」

 コハルの目から見ても和貴が劣勢であることはすぐに理解できた。コハルは即座に援護射撃と言わんばかりに矢を密売者のリーダーに向かって放ち、牽制した。

 密売者のリーダーはそれに感づいたのか、すぐに後ろへ後退し、溜息を吐きながらコハルの方を見た。

「ちっ、ここまでか。槍を持った少年。お前、名前はなんていうんだ?」

「・・・・和貴だ」

 密売者のリーダーはククリナイフを腰に装備している鞘にしまうと後ろに振り返り、この場から離脱しようとした。

「そうか。和貴よ、今しばらくはその命、お前に預けておこう。だが必ず、この森にいる限りは命をいつでも狙っていると思え」

 捨て台詞を吐いた後、密売者のリーダーは懐から煙玉らしき物を地面に叩きつけた。コハルは咄嗟に矢を放ったが、既に撤退した後だった。

 そのことを確認したコハルは和貴の様子が心配だったのか、すぐそばまで近寄った。

「大丈夫か和貴!?見たところ致命傷はなさそうだが・・・」

「ああ、何とか致命傷だけは免れた。そっちは大丈夫か?」

「私は問題ない。しかし、厄介な連中に目を付けられたな」

 コハルの意見に賛同するように和貴は頷いた。互いにこの後どうするか一度話し合わなければならないなと思ったのか、和貴は呼吸を整えてからコハルに話しかけた。

「密売者達と戦ってどうだった?あいつらの実力はコハルの実力で倒せるか?」

「正直言って難しい。敵の実力は明らかに私よりも格下だが、相性が悪すぎる。和貴はどんな感じだった」

「似たような感じだ。接近戦ならあいつは俺より格上だろう。防御に徹すればある程度は戦いになると思うが、決め手がない。これは推測だが、恐らくコハルを優先的に倒してその後に俺を始末する作戦だったんだろう」

 和貴の意見にコハルはなんとなく理解した。今回の襲撃は敵が和貴達のことを理解しているからこそ、うまく機能したのだろう。となるとこれからも同じような作戦で密売者達が襲撃してくるに違いない。

 どうすればうまく作戦を機能しなくなるか和貴は考えていたが、背伸びした後、散らばった荷物を回収し始めた。いきなりの行動でコハルは何をしているのか理解できなかった。

「何をしている?私達はこれからあいつらをどうやって対処するか考えなくてはいけないだろう」

「いや、そんなこと考えても無駄だろう。敵はどうやってか知らないけど、俺達の動きを監視している。それに、敵だって馬鹿じゃない。今度こそは確実に仕留めるために念入りに準備をしてくる筈だ。ならば、俺達がすることはただ一つ。一刻も早くこの森を抜けだすことだ」

 荷物を纏め終えた和貴は己の目的に目指そうとして、歩みを始めた。コハルもそれに従い和貴の後ろについて行った。




「・・・ひっどい戦闘後だな。獣人族とでもやりあったのか?」

 密売者達と和貴達が争った半日後、その場所に一団のグループが現れた。それぞれの痕跡を見て彼らは誰とやりあったのか推測していた。

「うお!!木を引っ込むいてやがる!?一体どんな馬鹿時からで抜いたんだ?」

「能力の可能性もある。まさか、獣人族の仕業か?」

 一段のグループが意見を討論している中、一人の男性は討論に参加せずに、周りの状態を確認していた。力づくで抜いた倒木も気になるが、何より気になったのが武器で戦ったと思われる跡地だった。

(これは・・・短刀?いや、小刀か?獲物はよくわからないが、とりあえずその類の武器か。そしてもう一つの傷跡は・・・)

 跡地に刻まれている武器の痕跡にその男性は見覚えがあった。この武器は槍だ。しかし、ただの槍ではない。この槍は男性がよく見知った武器でもあった。

(この武器の痕跡は・・・黒弔か!?もしかして、和貴が誰かと戦闘したっていうのか!?)

 その男性は手に持っている武器を地面に密着して一発撃ち込んだ。地面は共鳴し、蝙蝠の超音波の様に周囲を索敵する。しかし、人らしき痕跡は一切見つからず男性はがっかりする。

「おい、何やってんだ!?索敵は一日一回にしておけって言ってるだろ!?」

「すいません!もしかしたら別れる前の知り合いが近くにいるんじゃないかって思ってつい使っちゃいました!!」

「そうか。仲間の心配は当然だな。まぁ、気持ちはわかる。だが、そろそろ日暮れだ。お前も野宿する準備を手伝ってくれ」

 仲間に指示されたその男性、神崎有樹(かんざきゆうき)は指示された通りにテントの準備を手伝うために和貴と何者かが争った場所を後にした。

(もう、こんなところを過ぎているのか。一体どんなグループと組んでいるんだろうか・・・)

 この有樹の疑問が晴れるのはもう少し後の話であることを本人達はまだ知らなかった。


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