↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

閑話) 古代に口付けはあったのか

閑話なのに長くてすみません。


古代に口付けはあったのか?



キスの初出はここではないか、という記録はこちらです。


 898年(平安時代)

 紀長谷雄『紀家集』

 競狩記より


 探其懷、吮其口、戲言多端、不可具言。


 (筆者ではない男が)(遊女の)その懐を探り、

 その口を吸い、さまざまな戯れ言を言った。

 詳しくは書き尽くせない。



いったい何をやってるんでしょうね!?


しかしとにかく日本の国文学では、口付け、接吻に関する記述が全然ないです。和歌に絞ると全滅で、初出は近代近くまで時代が降りてきます。


宮廷歌人たち、肌はめっちゃ重ねるのに、キスはしないんだ……


みたいな驚きはありました。


文字に残っていないからといって古代や中世の人たちがキスをしていない断言はできないのですが、ここまで無いものなんだと。戒厳令でもあるんか?くらいに表現が見つかりません。


感覚として、口に関するものは、マニアックではしたない恋愛表現だったのでしょうか。近現代でも、テレビ放送が始まった頃は、テレビで女性が食事をする様を流すのはダメだって言われていました。いまはグルメ番組いっぱいありますけど。


ただ俗文であれば、文字が書けるレベルの人間が口付けを見聞きしてそれが何かを理解しているので、高貴な方もなさっていたのではないかと推測されます。残っていないだけで。



さて、和歌のキス表現ですが、ぐっと時代が経過して、テキストで残るのは明治時代のようです。


なんと女性歌人、与謝野晶子が沈黙をぶち破ってます。書名がすでに『みだれ髪』ですから、さもありなん。明治でこれはセンセーショナルです。



 1900年(本誌) - 1901年(単行本?)

 与謝野晶子『みだれ髪』より


 病みませるうなじに繊きかひな捲きて

 熱にかわける 御口を吸はむ


 やみませる うなじにほそき かいなまきて

 ねつにかわける みくちをすわん


 病気の恋人の首に私の腕(かいな)を巻いて、熱で乾いた彼の唇にキスをする。



なんだか日本展開では、キスはどうも吸うことに重心があって、ただ唇を合わせるようなキスも人前では言いづらい雰囲気になっていそうです。

でもこの歌は相手が病人ですから、情熱的ですが、男が弱ってるのでそこまでいやらしい感じはありません。乾いている、のですから表面のみにそっと触れているのが伝わります。

さすが与謝野晶子です!



そもそも和歌は直接表現をしないので、もしかしたら現代人がいまだ気づいていない隠語があるのかもしれませんね。

たとえば水仙的なもので表すだとか。花弁が窄めた唇に似ていますし、名前がスイセン(吸いセン)ですので。




(追記)


上記のあと、何かないのかと探していたところ、これはちょっとキスに近いのではないですか?という和歌がありました。万葉集の春の相聞歌で、応酬がかなり面白いです。

こういうのも今どきはDB検索ができてしまうのですごいです。ありがとう奈良県。


意訳ですがこんな感じです。


女)手摘みのおやつ(採ってきただけ。ポジションとしては令嬢手作りおやつに近い)をあげるからこれでも食べて太りなさい。

男)いくら甘いものを食べてもあなたが好きすぎて痩せちゃいます。


なんで「肥えませ」なのかわからないんですけど、男が女からもらった甘いものを口に入れてるんですね。あまり和歌で酒以外の飲食しないんで、これはキスか間接キス判定でしょう!(願望)



以下、参照したDBからの転載です。


-----------


 740年頃(奈良時代)

 紀女郎『万葉集』巻8・1460

 戯奴がためわが手もすまに春の野に

 抜ける茅花そ食して肥えませ


 わけがためわがてもすまにはるののに

 ぬけるちばなそをしてこえませ


 お前のために私の手も措かず

 春の野で抜いた茅花ですよ。

 召し上がっておふとりなさい。


 ※戯奴〔變云和氣〕〔変してわけと云ふ〕

  注記をこちらにまとめる変更を加えています。


1460番 

https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/detailLink?cls=db_manyo&pkey=1460


出典:奈良県立万葉文化館「万葉百科」

(2026年10月27日閲覧)


----------


 大伴家持『万葉集』巻8・1462

 わが君に戯奴は恋ふらし賜りたる茅花を

 食めどいや痩せに痩す


 わがきみにわけはこふらしたばりたる

 ちばなをはめどいややせにやす


 わが君に私めは恋うているようです。

 頂いた茅花を食べても、

 ますます痩せてしまいます。


1462番 

https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/detailLink?cls=db_manyo&pkey=1462


出典:奈良県立万葉文化館「万葉百科」

(2026年10月27日閲覧)


------------

奈良県立万葉文化館

https://www.pref.nara.lg.jp/manyo/index.html


万葉百科DBを管理されているミュージアムです。ミュージアムショップ情報を見る限り持統天皇推し?? 額田のライバルですね……


2026/11/1-11/8まで万葉講座のアーカイブ配信あるみたいなのでぜひ視聴したいと思います!

みなさまの中でも、気になる方がいましたらぜひご視聴ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。