表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
97/106

第90話 意志の力

 インタビューが終了し、松本さんたちが帰ったあと、美香さんが駆け寄ってきた。

「ヒナさんのインタビュー、すごくカッコよかったですよ」

「ありがとう。正直言うと、答えるのに苦労した質問もあったよ。松本さん容赦ないから」

 そう言って笑うと、美香さんが問いかけた。

「最後の、自信の根拠のところですね」

 やはり分かってしまったか。

「うん。嘘は言いたくなかったけど、作戦については言えないから苦労したよ。でも自分で選んだという意志の力は私の武器だと本気で思ってる」

 そこへヒカリ先生も会話に加わった。

「親が子どもに猛勉強をさせても、そこから大人になって伸びるかは子ども次第ということはよく言われるわ。つまり、強制されてやるよりも、自分の意志でやるほうが伸びるということ。ヒナさんにとっての格闘技がそうであるようにね」

 ヒカリ先生にここまで言ってもらってもなお、私の中には迷いはある。不安もある。でもそれを言ってどうなる?

 私はぐっと負の感情を呑み込み、親指を立てた。

「任せてください! アスカちゃんも強くなっている。でも私もそれ以上に成長している。いますよね?」

 最後、疑問形になったところで笑われるかと思った。

 でも、美香さんもヒカリ先生も微笑んでいたけれど、あざ笑うことはしなかった。

 美香さんは自身の胸をトントンと叩いた。

「もっと自信を持ちましょうよ。大丈夫です。だってプロ無敗でここまで来たんですから」

 ヒカリ先生も同意した。

「冗談を抜きにして、あなたの成長速度はすさまじいものがあるわ。実力がなければ、RFCの舞台に上がれないし、タイトルマッチまでにもっと時間がかかっていたはずよ」

 私を信じてくれている仲間たちがいる。それなのに私が、私を信じなくてどうするの。

「いまの私は、アスカちゃんより強い。そう信じて大晦日まで走り抜けます」

 私はアスカちゃんに勝ってチャンピオンになると、何度も心の中でつぶやいた。


 そして試合当日となった。

 今日は両親が来てくれる。

 そして愛ちゃんも来てくれる。

 私の、いや私とアスカちゃんの心強い味方だ。

 比較的リングから近い席のチケットをプレゼントしたのだ。

 前日計量では、私はリミットより0.5キロ軽い体重でクリアした。

 対するアスカちゃんは、リミットジャストでクリア。

 お互い規定体重を守ることができた。

 私たちの試合は、メインイベントだけど、そのことはヒカリ先生も意外に思ったようだ。

「それにしても、女子の試合がメインになるなんて珍しいわね」

「アスカちゃんの人気のなせる業ですね」

 私がさらっと口にした言葉に、沙世さんがツッコミを入れた。

「何言ってるのよ! あなたのアグレッシブな闘い方が評価されたからよ。トギシとの試合は名勝負だったわ」

 美香さんも便乗した。

「私が言える立場でもないですけど、ヒナさんはもっと自分を誇っていいと思います」

 武田先生も腕を組み、うんうん頷いた。

 私はありがたさと申し訳なさを同時に感じた。

 これ以上卑屈になるまいと努めた。

 私を信じてくれている人たちに対して失礼だから。

 開会式が終わり、試合はテンポ良く進んでいった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ