表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
81/106

第74話 ストロングポイント

 そしてあっという間に時が過ぎ、チームアナコンダでの出稽古の最後の日となった。

 この日の練習も無事終わった。


「ありがとうございました。麗艶さんと拳を交えることができてよかったです」

 私の言葉に麗艶さんも嬉しそうだ。

「ヒナさん、あなたは打撃も投げも寝技もできる。まだまだ改善点はあるけれど、少しずつ修正すれば頂点に立つことも夢じゃない。でも、私も負けない。必ずタイトルを取り戻すわ」

 いずれ麗艶さんとも闘うことになるかもしれない。

「私も、負けたくありません。何が何でもアスカちゃん、現王者と試合がしたいので」


 アスカちゃんの名前が出てきたことで、麗艶さんは笑みを深めた。

「ヒナさん、あなたとアスカは似ている。どちらもストライカー寄りだけれど、打投極のバランスがとれていて、いずれの局面でも闘える。ただ大きく違う点が二つあるわ。それが、あなたのアスカよりも優れている数少ない点」

「大きな違い、アスカちゃんより優れている二つですか?」

 私はおうむ返ししていた。


 正直なところ、私がアスカちゃんより優れている点はない、と思っている。

 でも、もしあるのなら……。

 そんな私の思いを知ってか知らずか、麗艶さんはまたもやフフフと笑う。


「当ててみて」

「え?」

 戸惑ったが、よし、当ててやる!

「パワーとか」

「若干あなたの方があると思うけど、そこまで大きな差はないわ」

「折れないハート」

「五分五分じゃないかしら。アスカも私との試合で気持ちの強さを見せたわ」

 技術的なことだろうか。

「右ストレートですかね? よくフィニッシュしている技なので」

 アスカちゃんとのガチスパーで、彼女を一瞬グラつかせた技だ。

「あなたの右も悪くないけど、打撃の精度、スピード、威力、ともにアスカが上回っているわ」

 そっかー。さほどショックではない。

 グラウンドでのパンチを含めると、アスカちゃんの打撃によるKO率は一〇〇パーセントと驚異的だから。

「寝技とか?」

「違う。セイラとの試合で見せた三角絞めとギロチンの脱出方法、あれは力づくだったし、良くなかったわ。寝技の正しい手順はアスカの方がよく理解しているはず」

 痛いところを突かれた。

 試合が終わってしばらくして、ヒカリ先生にもダメだしされた点だ。

「すみません。お手上げです」

「ヒントをあげる。私たちは対戦相手と一対一で向かい合う。でも一人で闘うわけじゃない」

 なんとなく分かった気がした。


「セコンドの声に耳を貸す力、ですかね」

 麗艶さんがポンと手を叩いた。

 正解ということだろう。

「そのとおりよ。アスカはたしかに実力はある。でもそれと同じくらいプライドが高く、頑固な面もある。それがもっとも現れたのは、私とのタイトルマッチの二ラウンド目。アウトボクシングを徹底せずに、距離が近くなったせいで、私からテイクダウンを取られているわ」


 たしかにセコンドの牧村さんから、何度も距離をとるよう、指示を受けていただろうに。

 三ラウンド目はかろうじて修正したから勝てたけど。


「その点、あなたはセイラとの試合で、ヒカリさんの指示を聞きながら、作戦を変更することができた。その素直な性格がアスカよりも優れているところよ」

 広島の大会では、序盤はガンガン前に出て打撃で倒す作戦で行ったが、失敗し、すぐに金網に押し込んで動きを封じる作戦に変更した。

 それも結局うまく行かず、そこからはもう根性というか、何が何でもノックアウトか一本取らなきゃと腹をくくって、なんとか勝てたけど。


「教えてくれてありがとうございます。でもなかなか指示通りに行かないときもあって」

「まあ、そういうものよね。私の言ったことはあくまでも印象だから」

 二点と言われたけれど、もう一点は何だろうか?


「それと、もう一つはなんですか?」

 私の質問に、麗艶さんはフフフと含み笑いをした後で答えた。

「ひ、み、つ。ヒントをあげるとすれば、アスカの目標の高さね。それは長所でもあるけど、同時に短所にもなりえるわ」

 アスカちゃんの目標。

 アルティメットフォースのチャンピオン。

 子どものころからのアスカちゃんの夢。

 それが欠点?

 よくわからなかった。


 私が答えあぐねていると、麗艶さんは話題を変えた。

「それとは別に、この前教えたデラヒーバなんだけど……」

 そのあとは細かな技術の説明をしてくれた。

 こうして麗艶さんとの出稽古はとても有意義なものとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ