第7話 友情
事件から間もない放課後、通学路を私とアスカちゃんと愛ちゃんの三人で歩いていた。
「この間は大変だったね」
あの事件のあと、愛ちゃんにも一部始終を話していたのだ。
「うん。でもアスカちゃんが守ってくれたから」
そう言って私はアスカちゃんに微笑みかける。
恥ずかしいのか、こっちを向かない。
空はあかね色になっていたかな。よく思い出せない。
私は目の前のアスカちゃんの横顔に見入られていたから。
顎の線がすっきりしていて美しかった。
目は良くなったようで、眼帯はすでに外していた。
「いろいろとごめん」
突然謝られて、私は首をかしげた。
「アスカちゃんは悪くないよ」
それでも首を振る。
「私がいなければ、私と友達でさえなければ、ヒナさんは喧嘩に巻き込まれなかった」
アスカちゃんに抱きついた。
不意打ちだったためか、あるいは嫌じゃなかったからか抵抗されなかった。
でもびっくしりしたようだ。
「私ね、アスカちゃんと友だちで良かったと思っているよ。だからそんなこと言わないで」
一瞬、彼女の手が私の背中に触れたが、すぐに離れた。
「ありがとう。でも恥ずかしい。そろそろ離れて」
「あ、ごめん」
慌てて離れる。
愛ちゃんが「お熱いねえ」と言ってニシシと笑っていた。
アスカちゃんは口を幾ばくか、モゴモゴ動かしてから、言葉をつむいだ。
「それにしてもヒナさんのお父さん、強かった」
唐突に何を言い出すんだろうとびっくりした。
うちの父が強い?
「ぜんぜん弱いよ。格闘技の経験もないし、運動も全然していないし。アスカちゃんのお父さんと闘ったら絶対負けるよ」
アスカちゃんは少し笑みを浮かべた。
「うちのお父さん、あんな見た目だから、面とむかって文句を言う人少ない。でもヒナさんのお父さんは逃げずに、自分の意見を言った。強いと思う」
相手が誰であろうと自分の意見を主張する強さがあるということなのだろう。
「ヒナさんも強い。誰に何と言われようとも私の友達でいてくれる。それがたまらなく嬉しい」
アスカちゃんの言葉に照れてしまう。
「ヒナさん、いやヒナ」
不意の呼び捨てと同時に、手を握られてどっきりした。
「これから先、何があっても、私があなたを守るから」
私は満面の笑みを返した。
「うん、約束だよ」
すると愛ちゃんが私とアスカちゃんの肩をがしっと掴んだ。
「ちょっとぉ。私は仲間外れですかい」
「愛ちゃんもだよ。三人でこれからも仲よくしようね」




