表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
77/107

第70話 手術の結果

 いつの間にか周囲が明るくなっていた。


 どうやら眠っていたみたい。

 ベンチから腰を上げる。


 周囲を見回すと、ヒナはまだいびきをかいて眠っていた。


「姫、ようやくお目覚めですな」


 愛の目には隈ができていた。

 どうやら私は、愛に起こされたらしい。


「お母さん、海鮮どんぶり三人前は食べられないよ~」


 寝言を呟くヒナの体を軽く揺すった。

 一体どんな夢を見ているのやら。

 こんな状況にもかかわらず、思わずクスリと笑えた。


「ああ、お母さん、おはよう」

 愛が鋭いツッコミを入れる。

「いつまで寝ぼけとんじゃい」


 目を覚まし、状況を理解したヒナは「あっ!」と大声をあげた。


 愛と私は「しーっ」と静かにするよう注意した。

 ごめんと謝ったあと、ヒナは「新藤先生はどうなったの?」と尋ねてきた。


 私は愛を見る。

 愛は嬉しそうに笑っていた。


 同時に懐かしい声がした。

「迷惑かけたな」

 思わず走りだしていた。

 父に抱きついた。というより飛びついていた。

 長い入院生活で、私の両腕におさまるくらいに父の胴体は細くなっていた。


「お父さん、お父さん!」

 涙がぼろぼろこぼれ落ちる。

「痛いなあ。病みあがりなんだ。もう少し気を遣ってくれ」

「ごめん」

 慌てて離れると、私は愛とヒナに頭を下げた。

 父も頭を下げた。

「私からも礼を言わせてくれ。ありがとう。アスカ一人じゃ心細かったと思う」

 

 ヒナと愛が帰ったあと、医師から話を聞いた。

 手術は奇跡的に成功したけれど、運動機能に障害が残るため、今後は激しい運動はできないと言われたらしい。

 父はやや厳しめの顔をして言った。

「セコンドに就いたり、指導したりはできるだろうが、いっしょにスパーリングをするのはできないだろう。ミットを持つのは辛うじてできるかもな」

「それでも、こうして生きていてくれているだけで、私は嬉しいです」

 恥ずかしそうに言う私の頭に、お父さんは手をおいた。

「愛さんから聞いた。チャンピオンになったそうだな」

「はい」


 思わず顔がほころびかけたが、堪えた。

「よく頑張った。と言いたいところだが、まだここで終わりじゃない。RFCで数回防衛したあと、いずれはアルティメットフォースにお前を出させたいと思っている」

 まだ、旅は続く。

 私は歯を食いしばる。

「押忍」


「だが・・・・・・・」


 父はしばし間を置いたのち、言った。


「とりあえず、退院したら、いっしょにメシでも食べに行くとするか」


 似合わない笑顔を浮かべる父に、私は「押忍」と弾んだ声で答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ