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【選手インタビュー】 鋼トギシ編

 私は格闘技ライターの松本豪。

 今回紹介するのは、何かと批判の的になりやすい鋼トギシ選手だ。


「トギシさんはいわゆるトランスジェンダーと世間では言われています。トギシさんが、女子格闘技に参加することに反対意見もありますが、そのことについてどう思われますか?」


 トギシ選手はあからさまに顔をしかめた。


「そもそもの前提が間違っているわ。私は、トランスジェンダーじゃなく、シスジェンダーよ。生まれつき女として育てられ、そして私自身も自分を女と思っている。ヘテロセクシャルで、性的対象も男だから、同性愛者とも違う」


「申し訳ありません。シス、ヘテロなどの用語の解説をお願いできないでしょうか」


「インタビュアーなら、事前に勉強してくるものだと思うけれど。まあいいわ。シスジェンダーというのは、出生時に割り当てられた生物学的な性別と、性自認が同じ人をさすのよ。ヘテロセクシャルは異性愛者の意味よ」


「不勉強をお詫びします。ところで、以前は男性として試合に出ていましたが、それがかえって誤解を招いているのかもしれませんね」


「あれはそのときの団体のプロモーターの意向よ。私がレスリングの試合で相手選手に大けがをさせて追放された過去があるから、判断を誤った結果ね。ちなみに上半身もちゃんと服着てたからご安心を。あと何度も言わせてもらうけれど、私は女よ。生まれつきテストステロン値が高いけれど、女。これはまぎれもない事実よ」


「ただ、そのパワーによりズルをしているという批判意見もあります」


「好きに言わせときゃいいわ。そもそもイベントの興行主が出場を認めているのだから、外野がとやかく言うのはお門違いよ。それに男でも、筋肉のつき方、パワーは個人差があるのに、なんで私だけ生まれつき筋力が強いだけで、文句を言われなきゃいけないのよ」


「たしかにその通りですよね。話題を変えまして、次に対戦を予定されている山本ヒナ選手についてはどう思われますか?」


「話にならないというのが正直なところね。リングの上で対峙したけれど、そもそものフレームが私と違いすぎる。一つ下のアトム級が適正じゃないかしら。あとはトークがつまらないわね。こっちが煽ってあげても、リアクションが真面目ちゃんすぎる。それにね、なんでランカーの早瀬ジュリに勝った私が、RFCに出場経験のない奴と闘わないといけないのよ」


「失礼を承知で言いますが、RFCはともかく、総合の戦績はヒナ選手が五勝0敗。一勝一敗のあなたよりも白星が多いです。それに早瀬ジュリ選手との試合では、反則のロープ掴みからのノックアウト勝利で、実力を疑問視されています。それについてはどうお考えですか?」


 不意にトギシ選手が立ち上がり、ファイティングポーズをとった。


「あんた、トラッシュトークの才能あるわね。私はいつでも受けて立つわよ」


 怒らせてしまったと焦った私は、何度も頭を下げ謝った。


「冗談よ。私が叩かれてるのは、生まれつきの筋力だけじゃなく、私の言動にも原因があるのは知ってる。でも反則をして開き直るほど落ちぶれちゃいないわ。早瀬、選手との、試合でのロープ掴みは、本当に悪いことをしたと思っているわ。私たちはファイターだから、ルールを守って正々堂々と闘わなければいけない。二度とあんな真似はしないと約束する」


「誠実なご回答ありがとうございます。最後にあなたにとって格闘技とは?」


「レスリングを追放されたあとは、うつ病になってアルコール依存症になって人生のどん底だった。二度と格闘技をすることはないとすら思ったわ。でも未練が残った。そしてこのままで終わりたくないって思った。だから総合をはじめた。格闘技は私にとって一発逆転のための武器だけど、それだけじゃなくて人生の一部、なんだと思うわ。だからこうして、この世界にしがみついている」

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