【選手インタビュー】 早瀬ジュリ編
私は格闘技ライターの松本豪。今回お届けするのは、若くしてブラジリアン柔術の黒帯を手に入れた天才柔術家、早瀬ジュリ選手だ。
非情に気の短い選手なので、私は細心の注意を払いながら、それでいて核心に迫るインタビューを試みようと努めた。
試合直後ということもあり、早瀬選手はやや疲れていた。
「このたびは復帰戦での勝利、おめでとうございます」
「あんがとさん。これでまたタイトル戦線に戻れるわ」
「見事な一本勝ちでしたね」
「んだ。ドゥーネの拳は固かった。でも寝技なら負けないと確信はあったから。引き込みはちょっと安易だったけど、まあ、結果オーライよ」
「聖子さん譲りの見事な腕十字でした」
「まだまだ。お母さんはもっと強かったから」
「現在、お母様は練習はされているんですか」
「たまに分からない技を訊いたら教えてくれる。でもジムで練習とかはしてない。もともと運動好きだったから走ったり、筋トレしたりはしているけど、格闘技の練習はもうしてない」
「お母様は早瀬さんが格闘技をすることについてどう思われているのですか」
「最初はダメージや怪我のリスクについて警告されたけど、それでもやるって言ったら止められなかった。あんたの人生だから好きにしなさいって」
「ジュリさんの意志を尊重されたわけですね」
「本当はやって欲しくなかったんだろうけれど、私はやりたかった。だからやる。それで十分よ。お母さんは優しくて世界で一番尊敬している人。母子家庭だったけどそれなりに楽しくやってたし」
「そういえば離婚されていたのですね」
「父親は、幼いときは大好きだったけど、いまは嫌い。お母さんを裏切ったから。まあ、その父親も不倫相手に裏切られて痛い目を見たみたいだから。因果応報じゃないけど、もう恨んではいない。こちらからすすんで会いたいとは思わないけど」
「噂なのですが、お父様の不倫相手というのが麗艶選手という話が出ていますが」
「そう。あの女が私の家庭をぶっ壊した張本人よ。」
「麗艶選手は女子ストロー級の王者です。とても強いファイターです」
「それは分かってる。人間性はともかくファイターとしては一流。アイツの寝技の技術は柔術の世界王者に匹敵するものを持ってる。それは認める。でもそれとこれとは別。闘いに私情を持ち込むのはよくないかもしれないけれど、私はあのビッチを成敗する。私がね!」
「このたびアスカ選手と麗艶選手が闘いますが、どのような展開を予想されますか?」
「うーん。アスカも友達だから勝ってほしいってのはあるけど、私が麗艶をはじめて倒した女になりたいっていう思いもある。難しいけど、どちらが勝ってもおかしくないというのが正直なところだと思う。いずれにしても麗艶とは闘いたいって思ってる」
「因縁の対決が実現できることを祈ってます」
「もちよ。ここから連勝街道を進んで挑戦権をゲットしてやるんだから」
「格闘技を始めたのも麗艶選手を倒すためですか?」
「それはない。私が始めたきっかけはお母さんが試合で闘う姿がかっこいいと思ったから。それで柔術を始めて、MMAを始めたのは純粋に打撃もできて寝技もできて何でもできてカッコいいと思ったから。復讐のためじゃない。仮に麗艶を倒したとしても、私は格闘技を続ける。格闘技が好きだから」
「それを聞いて安心しました。早瀬選手にとって格闘技の魅力は何でしょう」
「生きがいかな。それがあって人生が輝くみたいな」
「本日はありがとうございました」
インタビューを終えようとしたところで、「最後にひと言いい?」と尋ねられた。
「どうぞ」
「私は勝つ! チャンピオンになる! だからこれからも応援よろしく!」




