第103話 一つになる
殴る殴る殴る殴る殴る!!!
殴る殴る殴る殴る殴る!!!
「神童、やれ!」
「ブレイブカウ、根性見せろ!」
「二人ともすげえぞ!」
グローブが破裂するのではというぐらい、えぐい音をさせながら、お互いがお互いを殴り合う。
残り時間三〇秒。足を止めての殴り合い。
「アスカ、悔いなきよう全てをぶつけろっ!」
源治さんの怒号が飛ぶ。
「あと三〇秒! 全力を出し切りなさい!」
ヒカリ先生、私の気持ちを汲んでくれてありがとうございます!
燃やし尽くします! あとには何も残しません!
顎にイイのをもらったぁ! でもこっちも当たってるもんね!
よくここまで来た。ヒナ、あなた、強い。
微かに聞こえた。
アスカちゃんの気持ちが手にとるようにわかる。
でも、絶対にあなたを殴り倒す。
私だって負けないんだからね!
互いが互いを認め合い、こうして殴り合い、ひとつに溶けあっている。
私がアスカちゃんでアスカちゃんが私であるかのように。
笑いながら殴り合った。
意識が何度か遠のきかけた。
どっちが倒れてもおかしくない。
でもね。
直撃!
頭がピンボールのように跳ねるも、私は必死にマットに根を張り、踏ん張る。
やっぱりアスカちゃんの方が巧いよね。
分かってる。
だから!
私は右膝を少し上にあげてから右ストレートを放った。
アスカちゃんは左ヘッドスリップでかわし、来る!
右のクロスカウンター!
ガチスパーのとき、ここからタックルに切りかえられ、肩固めでタップを奪われている。
けれど、さきほどの膝蹴りのフェイントのおかげでタックルには来なかった。
私は右足をマットから離した。
会場からは悲鳴と歓声の両方が巻き起こった
「お見事! 右スレートからのハイキックがアスカの頭部を直撃!」
まだ倒れない!
タフだね、アスカちゃん。
バランスが崩れた状態からそのまま殴り返してきた。
そうだね。
ここまで来たら技術云々じゃない。
ハートだ。
私はブレイブカウ。
ハートの強さならアスカちゃんにだって負けないんだから!
ヒナ、あなたはよくここまで頑張った。
でも私は神童。
格闘技に選ばれし女。
ここで負けるわけには、いかない!
再びの殴り合い!
残り時間は?
わからない。
じゃあ行くしかないでしょ!
押忍!
私はダンッ!とマットを蹴った。
渾身の右ストレート!
アスカちゃんも同じ気持ちなんだね。
ほぼ同じタイミングでマットを蹴り、右のストレート!
よけきれない!
でもかわまない!
肉を切らせて骨を断つ!
たしかな手応えと、アスカちゃんの瞳と全身から、力が抜けていくのを感じた。
ああ、しあわせだ。
視界がまっしろな光に包まれた。




