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第100話 捨て身


 私とアスカちゃんの雄たけびに呼応するかのように、観客も熱狂に包まれていた。

 ゴングと同時に、歓声が湧き起こり、会場のボルテージが頂点に達した。


 開始早々、アスカちゃんが一気にこちらに接近してきた。

 私も負けじと前進する。

 蹴りが届く距離。

 まだだ。

 手を伸ばせば互いの拳と拳がぶつかる距離。

 もう少し。

 半歩近づいた。

 いまだ!

 私はジャブを放つ。

 頭を動かすことでかわされ、お返しのジャブが飛んできた。

 かがんでかわして両足タックル!

 組めた!

 けど倒れない!

 ならば、さらに前進!

 組みながら感じる。

 アスカちゃんが必死に押し返そうとする力を。

 負けまいと、がっちりと組んだまま押し進める。

 ちょうどアスカちゃんの腰の位置にある私の頭を、硬いものが襲う。

 側頭部への肘打ち。

 えぐい、いいね!

 そうこなくっちゃ。

 さすがに何発ももらうと危険なので、頭の位置をアスカちゃんの脇の下にずらした。

 同時に両足から胴タックルに切り替えた。


 すると、アスカちゃんは私の首を両腕で抱え、なんと自分から下になろうとした!

「おおっと! アスカ、ギロチンチョークに行った! これは予想外だ!」

 実況だけでなく、私にも予想外だった。

 自分から下になるのを嫌がるアスカちゃんが、こんなリスクのある技を選択するなんて。

 

 でも私だってやられっぱなしじゃない。

 完全にアスカちゃんが倒れる前に、右手を私の首とアスカちゃんの腕の間に差し入れた。

 そして真上を見るように顔を上げた。

 これで首と腕の間に隙間が生まれるから極まらない。

 さらに左手でアスカちゃんの足を掴み、そのまま前進し、押し倒した。

 極まらないと判断したアスカちゃんはギロチンを解除した。

 私が上でアスカちゃんが下だ。

 いまアスカちゃんの両足が私の胴体を挟んでいる。 

 崩されないよう気をつけながら、私はコツコツパンチを打っていく。

 

 それにしてもアスカちゃんがあんなリスクの高い攻撃をしてくるなんて。

 彼女の中で何かが変わったのかもしれない。

  

 両足が上に這い上がってきているのを感じる。

 まさか。

 瞬間、アスカちゃんの両足がパッと開かれる。

 実況も驚いている。

「アスカの三角絞めだぁっ!」

 パクっと食虫植物のように頭を捕らえられる前に、胸と肘を張った。

 隙ができたのを見計らって、私は足をまたぎ、サイドポジションについた。


 サイドで抑え込みながら、私はアスカちゃんの闘い方の変化に驚いていた。

 ギロチンにつづいて三角。

 下からの攻撃を2回も。

 勝負を捨てに来ている?

 それはない。

 いずれにしてもアスカちゃんは自分の闘い方を変えはじめている。

 1ラウンド、2ラウンドと同じだと思っていたら負けてしまう。


 サイドから抑え込み、そこから脇腹へ膝蹴りを数発叩きこんだ。

 アスカちゃんは膝をもらいながら笑っている。

 そうだよね。この程度でへばらないよね。

 さすがアスカちゃん。

 でもね、ここから本気で壊しにいくから。

 覚悟してね!

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