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加護憑き少年、一目惚れした聖騎士の少女と旅をする  作者: 長久保いずみ


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15/19

15.教会にて

 教会の総本山である大聖堂は、その清らかさを示すように白い石で作られている。


 かつて〝国〟という統治機関が機能していた頃、白亜の大理石を使って建築されたのだ。


 その周囲に信者やその家族が暮らす街が形成され、聖騎士の練兵場や宿舎、孤児院などが建てられる。周囲には農場も広がっていた。


 国が滅んだこの世界で、教会は唯一残った〝国〟であった。




 大聖堂の中心は大講堂である。白い壁に蝋燭の日が反射し、はるか頭上の天窓から太陽の光が降り注ぐ。


 優に百人が収容できるそこに、聖騎士たちが整列していた。


 白い外套を纏った彼らは一切微動だにしない。天窓のあたりから見下ろせば、子どもが几帳面に並べた人形のように見えただろう。


 彼らが並ぶその最前列には、法衣をまとった人物がいた。


「――諸君は、すでに悪魔憑きに攫われた聖騎士の話を知っているな」


 重く開かれた口からは、疑問符ではなく断定。だが事実であった。


 聖騎士団第三十七福音旅団副団長ナタリーが、悪魔憑きに攫われた。救助に向かった団員四人の死亡も確認されている。


「相手の悪魔憑きは強い。さらに一切の攻撃を受け付けない。そして、なぜかナタリー副団長に執着している」


 聖騎士たちは静かにその話を聞く。その様はまるで石像のようであった。


「悪魔憑きは決して生かすな」


 法衣の人物が恫喝するように語る。


「ナタリー副団長の救出が最優先だ。もし我々の聖武具が通用せずとも、殺す手段はいくらでもある」


 真っ白で分厚い眉の下から、法衣の人物は聖騎士を睨む。


「よいな。世界を悪魔に渡してはならない。我々はこの世界の最後の砦。正しき清浄なる世界のため、悪魔憑きを一匹残らず駆逐するのだ」


「「「はっ!!」」」


 聖騎士たちの声が音の塊となって広間に響き渡った。


 そしてにわかに騒がしくなる。


「作戦は第三十七旅団を中心に行う!」


「四十六から五十までは待機! 裁判急げ!」


「巡礼に回るのは二十番台だけだ! あとは三十七につけ!」


 建物内に散る旅団。出立の準備を始める旅団。


 そして、広間に留まっている旅団。


「レイモンドよ」


 法衣の人物がゆっくりと近付いてきて声をかけた。


「教皇様」


 気付いた第三十七旅団団長レイモンドたちが、一斉に膝をつく。


 教皇と呼ばれた法衣の人物は、鷹揚に手の平を見せた。


「良い。皆、楽にしてくれ」


「はい。では失礼して……」


 聖騎士たちがゆっくりと立ち上がる。


 教皇は改めてレイモンドに声をかけた。


「レイモンドよ、災難だったな」


「私の不覚です。悪魔憑きは総じて能力が高い。そして得体のしれない力も持つ。知っておきながら、なにもできなかった自分が恥ずかしい」


「そう悔やむな。悔やむ暇があるなら、前に進みなさい。――目星はついておるのかね?」


「ゼルニケたちが死んだ場所の近くに集落があります。そこを起点に捜索します」


「良いことだ。悪魔憑きに蹂躙される前に、その集落の方々も救いなさい」


「はい」


「今日を生きる君たちに、祝福の祈りを」


 教皇が印を組む。聖騎士たちは深くこうべを垂れてそれを受け取った。


 顔を上げたレイモンドが、自他の聖騎士たちに告げる。


「長旅になるだろう。食料と馬の用意を!」


「「「はいっ!」」」


 部下たちが駆け出す。残った旅団長たちは改めて地図を広げながら作戦会議を始めた。


 教皇は静かにそこから去る。


「ナタリー副旅団長」


 ぽつりと、いなくなった聖騎士の名を呟く。


「堕ちてくれるなよ」

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