15.八千代、敵地に潜入す
12月も半ばにさしかかろうとしているある日の放課後、いつものように八千代は洋子と一緒に下校していた。
街はクリスマス一色になっていた。
華やかな町の様子に、八千代は洋子に尋ねた。
「ねえ洋子、なんだか町が派手な感じになってるけど、クリスマスって何ですか」
「えっ、八千代クリスマスを知らないの?」
「ごめんなさい、私の村にはそういうのはなかったの」
「いや別に謝ることないよ。
来週末の25日がクリスマスなんだけど、うーん、まあいろいろ意味はあるんだろうけど、よーするにお祭りみたいなもんだね」
「お祭りですか。
それじゃ、おみこしとか屋台とかがでるんですか」
「あはは、そういうんじゃなくって、もっと外国的なお祭りだよ。
みんなでプレゼントを交換したり、ケーキを食べたりするんだよ」
八千代にはいまいちよくわからなかったが、もしかすると米軍の洗脳計画の一環かもしれないと思った。
「あっ、それと、大好きな人と一緒に過ごしたりするんだよ。
いひひひ、八千代は誰かと一緒にクリスマスを過ごすのかな?」
「そういうことなら、じいさまや事務所のみんなと過ごすことになるのかしら」
「ははは、まあそんなことだと思ったよ」
「洋子は誰かと過ごす予定があるの?」
「ふっ・・、そんな時間も相手もないよ。
今週の期末テストが終わったら、冬コミのための原稿の追い込みがあるから、クリスマスなんて関係ないよ」
「冬コミ?原稿?」
「いや、忘れてくれていいよ」
二人が話していると、前から小柄な女子高生がやってきた。
「おい、八千代」
八千代が声の方を見ると、先日、吉野川の河川敷で戦ったマリコだった。
「あら、マリコさんじゃありませんか」
「八千代の知り合いなのかな?」
疑問を口にする洋子を無視して、マリコは横暴に言った。
「ちょっと時間はあるか?」
「はい、構いませんけど」
「それじゃ八千代、私はテスト勉強しながら執筆の内職しないといけないから、先に帰るね」
そう言って帰っていく洋子に軽く手を振って、八千代はマリコに向き合った。
「それで、ご用件はなんでしょうか。
練習試合ですか?」
「それもいいんだけど、来週の日曜日、お前空いてるか?」
「来週の日曜と言うと、25日ですね、大丈夫ですよ」
「そうか。
じゃ、その日にうちのキャンプのクリスマスパーティーがあるんだけど、来ないか?」
「キャンプ?クリスマスパーティー?何ですかそれ?」
「まあ、皆でご馳走食べたり、騒いだりするんだ」
「そうですか、なんだか楽しそうですね」
「じゃ、約束だぞ。
詳しくはメールで連絡するから、メアド交換しろよな」
マリコはメアドを交換すると、嬉しそうに帰っていった。
八千代が家に帰ると、気づかないうちに既にマリコからメールが届いていた。
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Subject: クリスマスパーティー
Date: Mon, 12 Dec 2022 16:54:19 +0900 (JST)
From: Mariko Austin <mariko.austin@pacific.mil.go>
To: Yachiyo Kunimori <yachiyo_k@docodemo.jp>
招待状
時間: 12/25 1100AM
場所: 小松島市和田島町洲端1234
米国陸軍小松島駐屯所内 Umigameホール
ベースの入口に着いたら、守衛に私の名を告げること。
ゲームもあるから動きやすい服装で。
絶対に来いよな。
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メールを見た八千代は驚いた。
クリスマスパーティーとやらが行われるキャンプとは、米軍の駐屯所のことを指すようだ。
つまり、米兵たちの真っただ中に、一人で来いということだ。
これは罠なのか。
いや、自分のことを友達と言ったマリコの言葉を信じたい。
それにマリコには行くと約束までしてしまっているのだ。
そうだとしても、米兵に対する恐怖感はぬぐい切れない。
米兵は女性に暴行すると、ばあさまは言っていた。
暴行とはどんなことをされるのだろうか。
たくさん殴られたり、蹴られたりするのだろうか。
そんなところ行かないといけないのだろうか。
しかし、マリコとの約束があり、約束は守らなければならない。
それでもやはり行く気にはなれない。
八千代は期末テストの期間も悩み続けていたが、八千代の心を決めたのは、英語のテストの前日の洋子の言葉だった。
「あーあ、明日は英語のテストか。
やだな、私、やっぱり英語は苦手だよ。
なんで英語なんて勉強しないといけないんだろ」
八千代はこれを聞いて、なぜ自分が英語を学ぶ気になったのかを思い出した。
『そうだ、私は、敵を知ることで祖国の立場を優位なものとするために、敵性語を学ぶことにしたのよ。
私は敵地に乗り込むことに何を躊躇していたのかしら。
これは敵を知るための絶好の機会なんだわ。
それなのに、自分の身を案じて行くのを恐れるなんて、非国民じゃないの。
私は自分が恥ずかしい。
たとえどんな目に合うとしても、敵地を偵察し、祖国の将来に役立てるのよ。』
こうして、八千代は敵地に潜入することを決意した。
そうと決めてしまえば、当面は英語のテストに専念しなければならない。
例によって、ひたすら教科書を丸暗記することに専念した。
それから一週間が過ぎた12月23日、その日は終業式だった。
朝、学校に行くと期末テスト上位10人の名前が張り出されていた。
八千代は今回も3位となっていた。
英語の点が前回とあまり変わっておらず、やはりこれが大きく足を引っ張っていた。
ほとんど意味が分からずに教科書を丸暗記しているだけなので、前回の点と変わらなくて当然である。
「八千代また3位になってるよ、すごいじゃん。」
洋子はほめてくれたが、ここしばらく英語を頑張ってきた割に点が伸びていなかったため、八千代はちょっと落ち込んでいた。
ふと気づくと、また1組の数人が八千代のことを睨んでいた。
なぜ睨まれるのか相変わらずよくからない。
その日はホームルームで冬休みの注意を受け、成績表をもらったらすぐに下校となった。
八千代はいつものように洋子と下校した。
なんだか洋子が元気がないようであり、八千代は心配していた。
「洋子、大丈夫?
どうも元気がないようだけど」
「あはは、テストが終わってこの3日間、ほとんど寝てないんだよ」
「えっ、どうしてよ。テスト期間はもう終わってるのよ」
「いやー、テスト期間中はこの追い込みに備えて充分寝てたんだけど、テストが終わったから本格的に追い込みに入って、寝てないんだよ」
「追い込み?」
「原稿だよ、原稿。
んじゃ、帰って続きするから、ここでね」
「あっ、それではよいお正月を」
「じゃね」
洋子はふらふらしながら帰っていった。
大丈夫だろうか。
それにしても洋子は、こんなことをして、しかも英語が最低クラスにいるにもかかわらず、2組をキープしているということは、実はそれなりに頭はいいのである。
それはともかく、事務所に帰った八千代は、成績表をじいさまに見せにいった。
英語が1、それ以外はオール5の成績表を見てじいさまはほめてくれた。
「なんか褒美をやらにゃならんの」
じいさまは上機嫌だった。
そして、その翌々日のクリスマス当日、とうとう敵地に臨む日を迎えた。
武器の携行も考えたが、検査で引っかかると立場が悪くなることから、それはやめることにした。
ただ、着ていく服については、幸い動きやすい服を指定されているので、戦闘服で行くことにする。
これなら戦闘になった場合でも、自由に動くことができる。
そういえば、さっき組の若衆たちが、クリスマスプレゼントと称して、新しい戦闘服をくれた。
八千代の寝室に入るわけにいかないから枕元に置けなかった、と言いながら朝食の時に手渡しでくれたが、なぜ枕元に置く必要があるのかわからなかった。
とにかく、お祭りということなので、もらったばかりの真っ新の服であれば不自然ではないだろう。
それは、カエルの着ぐるみパジャマなのだが、八千代はそんなことは理解していなかった。
とにかく八千代にとっての戦闘服に着替え、出かける前にじいさまに挨拶をしに行った。
「じいさま、お昼は友人のパーティーに招待されているので、でかけてきます」
「おお、八千代か」
孝太郎は、カエルの姿をした八千代を見て驚いたが、パーティーの衣装だろうと思い、そのまま続けた。
「夜はうちも事務所のみんなとパーチーをするから、あまり遅くならないうちに帰ってこいよ」
「・・・はい、わかりました」
じいさまに余計な心配をかけてはいけないと思い、八千代は帰れないかもしれないことは心に秘めて、敵地に向かった。
途中、鉄道とバスを乗り継いで行く道々、他の乗客に奇異な目で見られていたが、これからのことを思い悩む八千代はそれら視線に気づかなかった。
バス停から少し歩くと、金網越しに米軍の駐屯所が見える道になっていた。
広い駐屯所であり、戦闘車両もたくさん並んでいるのが見える。
さらに、そこここに米兵が何人も走り回っていた。
この中に単身乗り込んでいくのかと思うと、くらくらした。
そっと正門を覗き込んで見ると、いかつい黒人の米兵が警備をしていた。
生まれて初めて黒人を見た八千代は、怖さのあまり緊張しながら、恐る恐る守衛の方に近づいていた。
守衛は守衛で、カエルの衣装を着た不審人物を警戒していた。
" Hey, Stop! What's your name? "
守衛は何か話したが、八千代に分かるわけはなかった。
とにかく発音がまったく分からない。
耳がいい八千代は、英語の授業での先生の発音を正確に記憶していた。
しかし残念ながら、八千代の英語の先生は徳島なまりのカタカナ英語だったから、ネイティブの発音とは全然違うものだったのだ。
ただ、マリコのメールには、守衛にマリコの名を告げるよう書いていたため、八千代はそうした。
「ま・・まりこ おーすちん」
守衛は怪訝な顔をした。
マリコ・オースティンは指令官の娘であり、守衛もよく知っていた。
このカエルの格好をした日本人は、司令の娘の名を騙って、基地に潜入しようとしているのか。
不信を感じた守衛は、さらに尋ねた。
" Who are you? "
八千代はこれもよく分からなかったが、"How are you?"に近いと思った。
それなら知っている。
最近、学校で習ったばかりだ。
答え方も一緒に覚えた。
「あっ、あいむ はいん、あんど ゆー?」
" I'm Ozma Armstrong."
自分の名も聞かれたと思った守衛は一応名を答えたが、もちろん八千代には何を言っているか分からなかった。
ますます緊張する八千代を見ていた守衛だが、そういえばマリコから、自分を尋ねてくる女子高生が来るとの連絡が来ていたことを思い出した。
守衛は八千代に『待て』というしぐさをして、マリコに内線をかけた。
" So, Mariko. Here comes a girl named Hain at the main gate. (あのー、マリコさん、正門にハインと名乗る女が来ていますが) "
" Hain? Not Yachiyo? (ハイン?八千代じゃないの?) "
" Hmm, she said Hain. She must be poor in English, so I'll cofirm again. (あれっ、さっきハインだと言ってたんだけどな。英語が分かってないみたいだから、もう一度確認してみます。) "
守衛は八千代の方に向き直り、八千代を指さして聞いた。
" You Yachiyo? "
自分を指さして『やちよ』と言われたので、八千代はこくこくとうなずいた。
"Yes, she must be. (ああ、そうみたいです) "
"Okay, I'll be there now. (わかったわ、すぐいく) "
電話を切った守衛は、横のベンチを指さし、そこで待つようジェスチャーで示した。
八千代は緊張のあまり立ち眩みしそうになっていたため、ベンチに座りこみ、次になにが起こるのだろうかとドキドキしていた。
5分も経たないうちにマリコがやってきた。
マリコの顔を見たとき、八千代は心底ほっとした。
最近知り合ったばかりのマリコだが、八千代には旧来の知人のように感じられた。
「八千代、来てくれたんだな」
「あっマリコさん、今日はお招きありがとうございます」
「うん、来てくれてうれしいよ。
あはは、面白い格好をしてるじゃないか。
パーティーが盛り上がるよ」
そういいながらマリコは守衛から名札のついたストラップを受け取り、八千代に首からかけるように言った。
名札には八千代の名前が漢字とローマ字で書かれており、その下に赤文字で"Escorted"と書かれていたため、八千代はマリコに尋ねた。
「これってどういう意味ですか」
「ああ、だれか駐屯地の人間と一緒に行動するように、ってことだよ。
一人で勝手にうろうろするなっていう意味」
「一人で行動するとどうなるのですか」
「バンって撃たれるのさ」
マリコは冗談を言ったつもりだが、八千代には通じない。
八千代は青い顔をして、マリコの腕にしがみついた。
マリコは同年代の女子とのスキンシップなど初めてだったので、なんかとてもうれしくなっていた。
会場に向かいながら、八千代はマリコに尋ねた。
「マリコさんってここに住んでいるのですか」
「そうだよ、官舎がこのキャンプ内にあるから、パパやママとここに住んでるんだ」
「ここの人たちは、みんなそうなんですか」
「ああ、だいたいはみんなこの中に住んでるな。
店もあるし、娯楽施設もあるから、キャンプから一歩も出なくても生活できるし」
「すごいですね。
学校もこの中なんですか」
「まさか。
そもそも家族を連れてきてる人は少ししかいないから、高校生はボク一人だよ」
「じゃあ、マリコさんはここから外の学校に通っているのですね」
「ああ、小松島市内の高校まで通ってる。
ところでお前、英語は大丈夫か?」
「いえ、全然分かりません」
「そうか、まあみんな気のいい奴らばかりだから、なんとかなるよ。
日本語が分かる連中も少しいるしね」
マリコにつれられて入った会場は、学校の体育館ぐらいの広さだった。
すでにパーティーは始まっているみたいで、テーブルの上の料理や飲み物を100人ぐらいの米兵が談笑しながら囲んでいた。
カエルの姿をした八千代が入ってきたのを見た米兵の何人かが、『ツユチャン』といいながら八千代を指さしていたが、八千代には意味が分からなかった。
マリコは八千代を連れてずかずかと舞台の前の席まで行き、八千代を並んで座らせた。
「まずはとにかく好きなものを食べろよ」
「まあ、こんな豪華なお料理を頂いてもいいのですか」
「好きなだけ食べていいからな」
八千代の目の前にはいろいろな料理やお菓子が並んでいた。
鶏の丸焼き、肉の塊、平たい西洋お好み焼き(ピザというらしい)、細く切ったじゃがいもを揚げたもの、パンなどもいろいろあった。
おにぎりがないのがちょっと残念ではあった。
ただ、多くの米兵が周りにいる状況では、八千代は緊張して固まっていた。
八千代が遠慮していると思ったマリコは、小皿に適当に料理を取って八千代の前に置いた。
「ほら、食べろよ」
「あっ、はい、ありがとうございます」
「ボクも食べるから、遠慮するなって」
八千代は緊張しながらも、少し料理に手を付けた。
料理は大味ではあったものの、贅沢な食材を使ったものであり、とても豪華に感じられた。
周りのにぎやかな雰囲気に圧倒されながら八千代は尋ねた。
「あの・・、クリスマスってこういうことをするものなのですか」
「えっ、うーん、そうだな。
本国のクリスマスは、もっと厳かに家族だけで楽しむもんなんだ。
まあ、日本でいうとお正月みたいなもんかな。
でも、ここに駐屯している兵士のほとんどは、本国に家族を残して単身で来ているから、むしろこんな日本式のパーティーを楽しんでるんだよ」
「えっ、これって日本式なのですか」
「そうだよ。
本国のクリスマスでは、あんなケーキなんて食べないからね」
マリコが指さした先には大きなケーキがあった。
八千代はケーキと言うものの存在は知っていたが、まだ食べたことはなかった。
「あれがケーキ・・」
「うん、ちょっと取ってやるよ」
そう言って、マリコはケーキを切り取り、八千代の前に置いた。
それは、バタークリームにジャリジャリするほど砂糖が入っているアメリカ式のケーキだった。
八千代は一口食べてみて驚いた。
甘い、甘すぎる。
甘いものに乏しい村で育った八千代にとって、甘いということ自体が贅沢であったが、それでもこれは強烈に甘かった。
いや、むしろ甘いものを食べなれていないからこそ、その甘さに驚愕したのかもしれない。
ケーキを口にして、目を白黒させている八千代を見て、マリコは笑っていた。
「あはは、なっ、日本人には甘すぎるだろ」
「はい、とても甘いです」
「まあいろいろあるから、うまいと思うものを食べればいいよ」
「はい、ありがとうございます」
「でもさあ、ここにはいろんな豪華な料理が並んでるけど、こんなのよりサバイバル訓練中に獲って焼いた鹿肉の味が忘れられないんだよな」
「はい、分かる気がします」
「あの、ハラミんとこの柔らかい肉をあぶって食べるのがなんともいえないんだよ」
「私もハラミは大好きですよ」
「でも、あのにおいとにがみがなきゃ、もっといいんだけどな」
「それって、たぶんにおいは血抜きの処理の問題だし、にがみは解体時に胆のうなどの内臓を傷つけてるからだと思いますよ」
「血抜きは、頸動脈を切ってちゃんとやってるぞ」
「そうですねぇ、まだ心臓が動いていればそれでもいいのですが、もう止まっている場合は、頸動脈での血抜きでは不十分になってしまうのです」
「えっ、そうなのか」
「はい、そういう時は心臓近くの大動脈を切って、血抜きをするんです」
「おー、なるほどな。
それで内臓を傷つけないようにするコツはあるのか?」
「私は、解体時に会陰部から包丁を入れて、腹膜を傷つけないようにこうやって、こう切っていって・・」
二人はその後も野生動物の解体方法について楽しくおしゃべりしていた。
日本語が分からない周りの兵たちは、マリコが同年代の友達とガールズトークしているほほえましい様子を眺めていた。
マリコが友達をキャンプに連れてきたのを初めて見たのだ。
内容はともかく、実際二人がおしゃべりで盛り上がっていたのは事実である。
話の間、ときどき通り過ぎる兵士がマリコに "Hi!" とか声をかけていったり、手を振ったりしており、楽しく話ができたこともあって、八千代の緊張は徐々にほぐれていった。
恐怖の対象だった米兵も、接してみれば普通の人間なのではないかという気がしてきた。
しばらく話をしていると、二人の後ろから声をかける者があった。
マリコは振り返り、その顔を見て、急いで立ち上がった。
"Oh, sergeant! (軍曹殿!)"
彼はマリコに軍事訓練を行っているグリンベレーの軍曹だった。
マリコは軍人ではないため、別にマリコの上官と言うわけではないのだが、訓練を受けているうちに部下としての対応が染み付いてしまっていた。
"Easy, Mariko. She is your friend, right? (まあ楽にしろよマリコ。そっちはお前の友達なんだろ)"
"Affirmative, sergeant. (肯定であります、軍曹殿)"
"Introduce her. (紹介してくれよな)"
"Yes, sir. She is Yachiyo. (諒解です。こちらは八千代です)"
マリコは八千代に向き直って伝えた。
「八千代、こちらはボクの教官で、カーロス・リベラ軍曹だ」
八千代はラテン系の大柄な米兵を前におたおたしていた。
"Hi, Yachiyo. Nice to meet you."
手を差し出す軍曹と恐る恐る握手しながら、八千代は何か言わなければと思った。
そう、八千代は英語の授業で、ちゃんとあいさつを習っているのだ。
まず、『はーわーゆー』を言えばいいのだ。
しかし、さっきの守衛の発音は少し異なっていた。
八千代はその発音をちゃんと覚えており、その通りにきれいな発音で言ってみた。
「Who are you?」
軍曹は、『おやっ』と思ったが、笑いながら自信をもって答えた。
"I'm a specialist of land warfare. (私は陸戦の専門家だ)"
もちろん八千代には意味が分からなかったが、軍曹はあいさつの定型通り『私は元気です』と言ったものだと思い、八千代も定型通り答えた。
「みーとぅー」
その途端、軍曹の目がきらりと光り、マリコに尋ねた。
"Hey, is she the one defeated you that you said before? (この前言ってた、お前を倒した奴と言うのはこいつなのか)"
"Affirmative, sir. (肯定であります)"
"Very interesting. (こいつは面白い)"
軍曹はマリコの教官であるため、マリコの実力がその年齢にしてはかなり強力なものであることを知っている。
そのマリコに勝ったというこの華奢な女性が、どのぐらい戦えるのか、とても興味を持ったのである。
軍曹はしばらくマリコと話していたが、その後マリコが八千代に言った。
「八千代、彼が勝負してみたいと言っているけど、受けてくれないか」
八千代は驚いた。
いよいよ米兵はその本性をむき出しにし、とうとう八千代は暴行とやらを受けることになるのかと。
やはり武器を持ってくるべきだったかと青い顔をして固まる八千代に、マリコは続けた。
「いや、そう緊張しなくても、ただの練習試合だからさ、軍曹殿も手加減してくれるよ」
そう言われ、八千代は仕方なく応じることにした。
二人は舞台の上に上がり、会場のみんなは面白いことが始まったと静まり返った。
しかし、八千代はまだ迷っていた。
こんなに多くの米兵の前で日本人の戦い方を見せたら、利敵行為になるのではないかと思っていたのである。
ここで手の内を明かしてしまえば、後日別の日本人が米兵と戦うときに不利になってしまうかもしれないのだ。
迷いながらも、八千代はまず礼をし、お互い間合いを取って構えた。
軍曹は例のスティーブン・セガールのフェイントを始めた。
初めての時は面食らったが、これならマリコの戦いの時に経験済みである。
間合いを見切りながら隙を伺っていると、軍曹の攻撃がきた。
いきなり手刀が八千代の顔をめがけて繰り出され、リーチが長い分、思ったよりも伸びてきて、危うく顔に一撃をくらうところだった。
八千代は反射的にすれすれのところで首をひねってよけることができた。
同時に軍曹は驚いていた。
多少手加減をしたものの、今のが当たらないとは思わなかった。
なるほど、すごい動体視力と反射神経だ、マリコに勝っただけのことがある。
軍曹はとても楽しくなってきていた。
一方八千代は恐怖に駆られていた。
こんなに間近に米兵が迫ってきており、攻撃を受けているのだ。
それに相手が猛烈に強いということは今の攻撃で充分に理解できる。
これは手の内を隠すなどという悠長なことは言ってられない状況だ。
その後も何度か軍曹は攻撃を繰り出し、八千代はそれをすれすれのところでかわし続けた。
マリコと戦った時は、間合いの外のフェイントは無視できたが、軍曹の間合いは広いため、すべてのフェイントを本当の攻撃であると想定して対応せねばならず、常に神経を研ぎ澄ませておく必要があった。
このため、八千代は最大限の集中力を維持し続けており、この攻撃はボディーブローのようにじわじわと八千代の精神力を奪っていった。
と、書いたものの、作者はボディーブローを受けた経験が無いため、この表現が本当かどうか分からない。
ボディーブローを受けた経験が豊かな読者は、是非その時のことを思い出しながら読んでもらえるとありがたい。
表情をこわばらせながらも八千代は攻撃をよけ続け、軍曹の攻撃は一発も入らなかったため、観衆からヤジが飛んだ。
「おい、軍曹、なにやってんだ」
「嬢ちゃんと踊ってんのかよ」
「ねーちゃんも避けてばかりいないでガツンといったれや」
もちろんヤジは英語だが、読者に分かりやすくするために日本語で書いているのだ。
決して作者の英訳能力の限界を超えてるからじゃないんだからねっ。
ヤジに焦った軍曹は、渾身の力を入れて突きを放った。
その気迫に押され、八千代はそれを避けてしゃがみ込んだ。
しゃがんだ八千代を見て、軍曹は『勝った』と思い、上からの一撃を打ち込んだ。
もちろん寸止めするつもりで。
しかし、八千代の姿はそこにはなく、突然かき消すようにいなくなっていた。
軍曹にはそう見えたが、観衆には八千代が軍曹の頭より高く飛び上がったのが見えていた。
八千代は空中で体をひねり、軍曹の後頭部に蹴りの一撃を加えようとして、ふと練習試合であることを思い出し、かなり加減をして後頭部に蹴りを入れた。
軍曹は一瞬軽い脳震盪を起こし、ばったりと倒れたが、少しうめき声を上げた後、首を振りながら立ち上がった。
勝負はついたのだ。
軍曹は後頭部をさすりながら八千代を見つめ、すぐににっこりして握手を求めた。
周りから拍手喝采があり、会場は歓声に埋もれた。
一見、か弱そうに見える女の子が、グリンベレーのエースであるリベラ軍曹を倒したのだ。
アメリカ人は概して負けず嫌いではあるが、本当に力のある者に対しては惜しみない称賛を送る。
会場からは八千代を称賛する声が、あちらこちらから上がっていた。
"Wow, great!"
"Hey, Ninja girl!"
"サスガ、ツユチャン、スゴイデスネ"
"No, Tsuyu-chan has more boobs."
片言の日本語による意味不明の称賛も混じっていた。
八千代は照れながらもマリコの横の席に戻った。
「やっぱり八千代はすごいじゃないか。
軍曹まで倒すとは思わなかったよ。
これじゃボクが勝てなかったわけだ」
マリコが声をかけている横から、次々と入れ替わり立ち代わり八千代に握手を求めてきた。
その中に日本語を少し話せる兵隊もいた。
「ワタシ、ミライ屋島といいマス。
トーサンが日本人です。
カーロスの仲間デス。
ヨロシク」
八千代は日本語が話せる人がいてほっとしていた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「おちかづきのしるしにドーゾ」
そう言いながら、屋島はカクテルを差し出した。
「おい、酒なんかだめだろ」
マリコが制止したが、荒くれもののグリンベレー達は、酒をおごる以外に親愛の情を示す方法を知らなかった。
「大丈夫よマリコさん。
私、お酒は好きですよ」
「えっ!?」
マリコは驚いたが、八千代は平然としていた。
八千代の村にもお酒はあった。
それは年に一度のお祭りに作られる甘酒だ。
しかもその甘酒は、医療用のアルコールを作るために桔梗先生が蒸留した残りのものであり、アルコールなどほとんど入っていないものであった。
だが、八千代は酒といえはその甘酒しか知らない。
人は酒で酔っぱらうということは本で知っていたが、甘酒で酔ったことが無い八千代は、自分は酒に強いものだと思い込んでいた。
それに、未成年が飲酒してはならないなどということを言われたことは、村では一度もなかった。
「大丈夫よ、私、お酒には強いですから。
屋島さん、ありがとうございます」
そう言いながら八千代はそのカクテルを一口飲んだ。
口当たりは甘かったが、舌と喉に焼けるような感覚があり、八千代は手に持ったカクテルをまじまじと見つめていた。
『しまった、これは・・まさか毒を盛られたのだろうか』
八千代が疑心暗鬼にとらわれている間、マリコは屋島たちと少しおしゃべりをしていた。
マリコが話し終え、八千代の方を向くと、八千代はテーブルに突っ伏していた。
マリコは八千代の肩をゆすって声をかけた。
「どうしたんだ八千代。
お前、大丈夫か?」
「ん・・。
らいじょうぶなのら」
「なっ・・なのら?」
テーブルから上げた八千代の顔は真っ赤であり、目は座っていた。
これまでアルコールなど飲んだことのない八千代に対して、一口のカクテルは劇的な効果をもたらしていた。
「なんらか、とってもいいきもちなのれす」
「あちゃー、いわんこっちゃない。
どこが『私、お酒には強いです』だよ。
おい、しっかりしろよ」
しばらく二人が会話していると、そこに別の酔っぱらいが参入してきた。
グリンベレーの素行不良3人衆である。
すっかり酔っぱらっていた3人は、八千代達にからんできた。
そのうち一人は、なんとも都合の良いことに、たまたま日本語が話せた。
「おい、ねーちゃん、やるじゃねーか。
しかしいい気になんなよ、今度はオレたちとお相手願おうか」
「おい、よしなよ。
なに八千代に絡んでんだよ」
「マリコちゃんよ、すまんが構わんでくれ。
軍曹が小娘にやられたとあっちゃ、グリンベレーの沽券にかかわるんだよ」
「だめだよ、こら。
おい八千代、こいつらを相手にすんなよ」
マリコは必死に止めようとしたが、当の八千代は上機嫌のままだった。
「らいじょーぶ、らいじょーぶ。
そこれ見れいれていーから、まかしといれね」
マリコはまだ止めようとしていたが、おもしろいことの大好きな兵隊たちに抑えられ、マリコと3人の愚連隊たちを取り囲む輪の中に引き込まれた。
「へへへ、ねーちゃん、痛めつけてやるぜ」
そいつは危険な奴だった。
グリーンベレーの中でも凶暴なことで煙たがられている隊員であり、腰ぎんちゃくの二人を連れて乱暴を働くことが多かった。
実際のところ実力も高く、特にロープを手にすれば、50通り以上のぞっとする方法で人を殺すことを心得ているゾンビーハンターのように凶悪な人間だった。
酔ってはいたものの、八千代はそいつの目の光でとんでもない奴であることを悟った。
「あなたのようら輩をのさばらせるわけにはいきません。
古来より大君を頂くこの皇国の地から即刻排除させていたらきます」
とは言いながらも、足元はふらふらしていた。
「何言ってんのかわかんねーが、おい、やっちまえ」
三人は一斉に八千代にとびかかっていたが、八千代はふらふらとしながらそれを回避した。
別に八千代は酔拳を習得していたわけではないが、脳は酔っぱらっていたものの、アルコールが少量だったため、体は正常に機能していた。
それに八千代は、読書の時はため池に浮かべた丸太の上でさせられており、バランス感覚を体にたたきこまれていたことから、ふらつきながらも適切に行動できていた。
三人の男たちはボクシングの構えで八千代の顔や腹に拳を打ち込もうとしたが、ゆらゆらとゆれる八千代にはかすりもしなかった。
体を動かして血行がよくなったことで、ますます酔いが回り、血中アルデヒドの濃度が上昇した。
このことで気分が悪くなり、自制心を失って、八千代に刷り込まれていた米兵への敵愾心が目の前の三人に向けられた。
『そうか、これがばあさまたちが言っていた米兵による暴行なのら』
との思いが頭をよぎった。
自制心を失った八千代は強かった。
武器の使用も含めた総合的な戦闘力では、グリンベレーのメンバーには及びもつかないだろうが、体術に関していえば八千代はそこに特化して鍛錬を行ってきた。
それに、グリンベレーと言えど、休暇や訓練以外の時間はくつろぐこともあるが、八千代はほぼ全ての時間を生き残るための修練に当ててきたのである。
「きえーい」
気合を入れる雄たけびを上げた八千代は、目にもとまらぬ速さで三人のみぞおちに次々に鉄拳を入れ、床に沈めた。
あまりにも急な結末だったので、会場は一瞬しずまりかえっていた。
我に返ったマリコが急いで八千代に駆け寄ると、周りは大歓声となった。
周りからあまりよく思われていなかった乱暴者の三人組が倒されたのでなおさらだった。
「八千代、すごいじゃないか」
称賛の声をあげながらマリコが抱き着くと、急に八千代の力が抜け、マリコにしなだれかかった。
「おい、お前もどこかやられていたのか」
焦るマリコが八千代の顔を見ると、八千代は気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「なんだ・・ふっ、お前、大した奴だな」
そう言いながらマリコは手伝いを呼んで、八千代を会場の隅のソファーに横たえ、毛布を掛けた。
八千代が目覚めたのはそれから2時間ほど経ってからであり、パーティーはすでに終わっていた。
八千代が飲んだアルコールは少量だったので、もうすっかり抜けていた。
枕元ではマリコがスマホをいじっており、八千代が目覚めたのに気付いた。
「おっ、やっと起きたか。
気分はどうだ?」
八千代は体を起こしながら答えた。
「はい、もう大丈夫です」
「そうか、しかしお前、強かったな」
「えっ・・なんかお酒を飲んだ後はぼんやりしか覚えていないのですが」
そういいながら八千代はいろいろと思い出そうと努力しているようだった。
「あっ、そうだ。
私、なんか、三人の兵隊に襲われたような・・・。
ああ、なんて凶暴な人達だったの」
「いや、お前の方が凶暴だったよな」
お決まりのつっこみを入れたマリコだが、一方、八千代は朦朧とした意識の中で、襲い掛かる兵たちの印象が酔いの不快感と融合し、米兵に対する恐怖がトラウマとしてさらに蓄積されていた。
そんなことを知る由もないマリコは残念そうな顔をして続けた。
「それはともかく、お前が寝てるうちにパーティーは終わっちゃったよ。
いろいろゲームとかあったのに、残念だったな」
「ごめんなさい、せっかく招待していただいたのに、だらしなく眠ってしまって」
「まあいいよ。
またこんな機会があったら来いよな」
「はい、ありがとうございます」
その後、軍の車にマリコも一緒に乗って、錦織組の事務所まで送ってくれた。
事務所に到着し、八千代が車から降りた後もマリコは名残惜しそうだった。
「じゃあな、また色々な話をしようぜ」
「はい、今日は本当にありがとうございました」
車が見えなくなるまで見送った八千代は、車が去った方向に一礼し、事務所に入っていった。
いつもは誰かいる事務所だったが、誰もおらず、なんか階段の方でどたどたと2階に上がる音だけがしていた。
ただいまを言うためにじいさまの部屋に行ったが、じいさまもいなかった。
奇妙に感じながらも、音のした2階に上がっていくと、食堂から人の気配がしている。
八千代が食堂の扉を開けると、パン、パンという破裂音と共に、派手な色の紙がたくさん八千代に向かって飛び出してきた。
攻撃を受けたと思った八千代は、反射的に後ろに飛び跳ねたが、食堂ではじいさまをはじめとしたみんながにこにこしながら、口々に叫んだ。
「メリークリスマス!」
八千代には何のことか分からなかったが、皆の表情から深刻な事態ではないようだ。
八千代は、まさに鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして立ち尽くしていた。
と書いたものの、作者は鳩が豆鉄砲をくらった所を見たことが無いので、本当にそういう顔なのかどうか分からない。
日々鳩が豆鉄砲をくらった所を見ている読者は・・・これ、さっきやりましたね、失礼しました。
あっけにとられている八千代にじいさまが声をかけた。
「おかえり、八千代。
みんな待っとったよ」
組のみんなも口々に叫んでいた。
「姐さん、おかえりなさいまし」
「メリークリスマス」
「あー、腹減った」
「あの・・なんの騒ぎですか?」
まだ事態が呑み込めない八千代に、じいさまが説明した。
「お前とクリスマスパーチーをしようと、皆で待っとったんじゃよ」
「まあ、そうですの」
そういえば、今朝出かけるときにじいさまがそんなことを言っていたのを八千代は思い出した。
見れば、奥のテーブルにはごちそうやケーキが並んでいる。
「わー、素敵ですね。
毎年こういうパーティーをしているのですか」
「いや、今年が初めてじゃよ。
お前の成績へのご褒美にと若いもんに相談したら、皆ノリノリで準備してくれたんじゃ。」
「そうなんですか。
皆さん、どうもありがとうございます」
八千代がペコリと頭を下げると、みんなは喝采をあげ、その後は大盛り上がりとなった。
料理はとてもおいしかった。
米軍の駐屯所で食べた料理が大味だったのに比べると、かなえさんが作ってくれた料理は繊細で味わい深かった。
食事中、若衆の一人が八千代に酒を勧めようとして、じいさまに殴られていた。
「まったくしょうがない奴じゃ。
後でしめておくから、気を悪くせんでおくれ」
憤慨しているじいさまに八千代が答えた。
「あまり叱らないであげて、じいさま。
勧められても私、絶対に飲んだりしないから」
八千代はもう酒はこりごりなのである。
「そうか。
ところで八千代、昼間のパーチーはどうじゃった」
「ええ、とても楽しかったです」
「ほう、それよかったのぉ」
「お友達と楽しく話ができましたし、お料理もいっぱいでした」
「他の兵隊たちはどうじゃったかの」
「そうですね、だいたいの方は友好的でしたが、中には危険な者もいました。
やはり米兵は恐ろしいです」
「ふむ、思った通り米軍は危険な存在じゃのぉ」
大抵どこの組織でも、ほとんどの人は善良であっても、一部悪い奴が混ざっていることがある。
それは米軍だけのことではなく、錦織組でも同じである。
実際のところ、八千代が最初に錦織組に来たときは、危うく暴行されそうになったのだ。
ただ、八千代は『かわいがろうとしていた』という言葉を文字通り捉えて、危険な状態だった認識はないのだが。
つまり、米軍よりもむしろ錦織組の方が危険な組織なのだが、もちろん二人はそんなことは夢にも思っていない。
そのとき、かなえさんが切り分けたケーキを二人に持ってきた。
「さあさあ、ケーキも食べてくださいね」
八千代はちょっと躊躇したものの、食べてみるととてもおいしかった。
ケーキというものが強烈に甘いものだという認識は、改める必要があると思った。
いや、むしろ世の中にはこんなおいしいものがあるのかと感動した。
料理だけではなく、皆とのおしゃべりも楽しかった。
西洋式のお祭りも楽しいものだ。
パーティーを終えて自分の部屋に戻った八千代は、机の上の英語の教科書を見て、そこでようやく自分が米軍の中に行った本来の目的を思い出した。
『あっ、私は米軍の戦力や弱点を偵察に行ったはずなのに、なにをしていたの。
偵察もせずに、お料理を食べて、おしゃべりして、お酒に酔って敵中で正体なく寝込んでしまって・・。
私ってなんてダメなのかしら』
もっとお国の役に立つ人間になろうと反省する八千代であった。




