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1年に1度のチートスキルで何とか異世界で生きようと思います……。  作者: 夜虎
第8章 ドレン王国運命の日 異世界2年目突入
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願いと思い、そして未来へ

聞こえてきた声は、

1年前に聞いた棒読みのような声のままだった。


『神の認める範囲で願いを3つ叶えることが出来ます。

願いを叶えますか?』


この世界に来て、もう1年経ったのね。

この1年でいろんな事があったわ。


って、懐かしんでいる時間は無いわね。


「今、この国を襲っている魔物を殲滅しなさい」


早速そのスキルの1つ目の願いを言う。

すると、信じられない答えが返ってきた。


『神がその願いを認めませんでした。他の願いをどうぞ。』


「……ッ!! 女神ぃ!

どこまでもアンタは私の苦しむ姿が見たいようね!」


『他に願いはありませんか?』


私の言葉なんて居に介すことなく機械的に返してくるスキル。

1年前は私の死にたいという願いを叶えず、

生きることを強要し、

今度は死ぬことを強要する。

どこまで女神は身勝手なんだろうか。


この鬱憤をスキルにぶつけても、きっと無駄なんでしょうね。

でも、きっと女神はこの様子を見ている。


「だったら、直接手はくださなくていいわ。

魔物を殲滅出来るスキルをちょうだい」


願いを変えたとしても、返ってくる答えは同じだった。


『神がその願いを認めませんでした。他の願いをどうぞ。』


この様子だと、魔物を殲滅出来るような願いは全て却下されるわね。

女神はどこまでも私をコケにしたいようね。


ふつふつと怒りという感情が私の心を支配していく。


「ずっと見ているんでしょう!?

顔ぐらい見せたらどうなの?」


私がそんな事を言ったせいか、

この世界に来る前のように、意識が途切れた。






目を開くと、まさに1年前と同じ光景だった。

真っ白な何もない空間。

足を組み、上から蔑むように見てくる女、もとい女神も変わらずだ。


でも、1年前と変わっていることが一つだけある。

1年前、ここに来た時は突っ立っていたのに、

今の私はうつ伏せに倒れていることだ。


「あら? やっと起きたの?

随分と遅いお目覚めね」


私はゆっくりと身体を起こし、立ち上がった。

少し眩暈を覚えて足元がおぼつかなくなる。


「うう……」


「何? まるで二日酔いしたおっさんみたいね」


女神はそう言って高笑いした。

女神の高笑いが頭に響いて、頭痛までしてきた。


「きっと、アンタと同じ空間にいるからだわ。

アンタと同じ空気を吸っていると思うと、吐き気までしてきたもの」


苦し紛れに憎まれ口を叩くと、

女神はキリッと鋭い眼光で睨んできた。


「ふん、そんな口をきいててもいいのかしら?

あなたが気持ちよくおねんねしてる間に、

あの世界はどうなっているのか気にならない?」


女神はニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべ、

私をジッと見ていた。


「まさか、私が気絶している間に何かあったの!?」


「さあ? どうかしら~?

あなたみたいな可愛げのない子には教えあ~げない!」


女神は私から視線を外し、宙を見ている。


「そもそも、顔を見せろと言ってきたのはあなたじゃない。

だから、ご要望に応えて、

ここに呼び寄せたのよ?


少しは私に感謝してほしいものね!」


そう言って女神は足を組み直し、肘をついた。


「感謝されたいのなら、私の願いを叶えなさいよ!」


「もう、遅いわ」


急に女神は真剣な顔で話し始めた。

いつもふざけてる女神とは全然違う様子に、

嫌な予感しかしない。


「あなたがここに来てからは数分しか経ってないわ。

でも、この場所とあの世界の時間の進み方は違うのよ。

だから、残念だったわね。


このまま何も知らないのは可哀想だし、

どうせなら見せてあげるわ。

あの国がどうなったのか。

あなたの大切な大切な下僕たちがどうなったのか……」


フェリスたちは下僕じゃない。

と反論しようとする間もなく、

女神は指で長方形を作った。


すると、私の目の前にプレゼントの時と同じように

ウィンドウが出てきた。



そこには悲惨な光景が映っていた。


兵士も騎士(城に度々訪れていた騎士)も平等に息絶え、

魔物は国の中心部まで侵攻していた。

逃げ惑う人々、恐怖心に苛まれる人々、泣き叫ぶ子供、

果てには人間不信に陥った人間が人間を殺している。


そんな場面が次々と移り変わっている。

国中が恐怖に包まれ、国として成り立っていないのは一目瞭然だった。


「……ッ!」


次に移り変わった光景に私は思わず息を呑んだ。


映っていたのはレイーヌだった。

恐らくスキルを使っている途中で気を失った私を、

ほおっておけなかったんだろう。


魔物は塔のすぐ傍まで突き進んでいる。

そんな中レイーヌは泣きながら、

何度も叫び、私の身体を揺すっていた。


恐怖と必死に戦っているんだろう。

声が聞こえなくても表情から伝わってきた。


魔物はついに塔まで進軍してきた。

塔まで辿り着いた魔物はドンドンと体当たりを始めた。


「何してるのレイーヌ!!

早くあなただけでも逃げなさい!!」


あちら側の声がこちらに聞こえないように、

こちら側の声もあちら側には届いていないだろう。

それでも、叫ばずにはいられなかった。


レイーヌは必死に私の身体を抱きしめ、

いやいやと首を振り私の体を離さまいとしている。



願いの塔は年季が入っていた。

石造りの塔は所々が欠けていたり、コケも生えている。

そんな塔が魔物の進軍の威力に耐えられるはずもなかった。


魔物の体当たりによって

塔は少しずつヒビが入り横に倒れていく。


この後はもう、見たくはなかった。

けれど目を逸らしてはダメなような気がして……。



その光景はスローモーションのように見えた。

横一直線に入ったヒビと、

ゆっくり傾く塔。

塔の中でレイーヌの体が傾き、

私の体と一緒に部屋の端へ転がる。


転がった先の大きい窓は開いていた。

転がった体は宙に浮いた。


数分か、あるいは数秒か。

思わず伏せた目を画面に向けると、

塔はその大きな体を横たえ、

その下からは赤い、紅い液体が広がっている。


そこで映像は途切れた。



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