初めての街 買い物
「お嬢様、着きました」
フェリスの声で頭をあげる。
目の前には大きい建物がある。
フェリスが歩みを進め、店内に入る。
この店はシンプルな家具が置いてあるようで、
どの家具も染料が塗られていないようだ。
「次々必要な物を買っていきましょう。
欲しい家具があれば遠慮なく言って。
でも、私が必要ないと思ったものは買わないから」
「はい!」
またしてもレイーヌが一人で走って行く。
それをヒルクが追いかける。
フェリスは私を抱えたまま、適当に近くを見て周っている。
「フェリスは何かないの」
「はい、あるにはあるのですが…」
フェリスは言い淀んだ。
言いにくい物でもあるのかしら。
「言ってみなさい」
「僕は、調理道具がほしいのです。
お嬢様には、いつもご満足して頂ける料理を出したいのです。
城にある調理道具は、少ないので…」
盲点だったわ。
家具が全然ないのに調理道具だけ
一端に揃ってるはずもないものね。
「分かったわ。後で買いに行きましょう」
「ありがとうございます!」
フェリスは嬉しそうに微笑んだ。
今のフェリスの料理に満足していないわけじゃないけど。
やっぱり美味しい物は色々食べたいし。
「お嬢様!クローゼットを買ってもよろしいでしょうか?」
レイーヌが私の所まで駆け寄って、訊いてくる。
ヒルクが後からやってくる。
「ええ、確かに必要ね。
他にも欲しい物があれば訊いて頂戴」
「はい!」
レイーヌはヒルクを連れて、店の奥の方に歩いて行った。
その様子を見送り、フェリスと他の家具を見る。
「レイーヌは嬉しそうね」
「そうですね。
街に行くのをとても楽しみにしておられましたから…」
「そんなに街に行きたかったのなら、
一人で行けばよかったのに」
お金がないから一人じゃ行けなかったとか?
それとも、人間の街だから一人じゃ行けなかったとか?
「お嬢様、レイーヌさんはただ街へ行く事を
望んでいたのではありません。
レイーヌさんは、この4人で街へ行きたかったのでは、ないでしょうか?
お嬢様の服を作ったのも、お嬢様とも街へ行きたいと
願ったからではないでしょうか?」
私と一緒に……?
まさか、だって。今まで誰も、私の事なんて……。
「……」
おそらく本人は気付いていないのだろう。
口元に少し笑みを浮かべていることに……。
フェリスは、お嬢様に分からないように、
こっそり笑みを溢した。
「お嬢様、他の家具も見ましょう」
殆ど、レイーヌがあれがほしい、これがほしいと強請り、
私が了承するという遣り取りで、家具を買っていった。
その量は半端なく多い。
フェリスに預けていたお金からどんどん飛んでいく。
それでも一向に底が見えない金袋。
ギルドから貰ったお金は大金で、これだけ使っても
まだお金が底を突かないとなると、
次の交換も期待できる。
確か、まだまだ残っていたはずだから…。
「レイーヌ、とりあえず今日はこのくらいにしましょう。
まだまだ、足りない物は、次来た時に買うことにしましょう」
「はい!分かりました」
因みに、買った家具たちは
フェリスの作った空間の中にある。
持ち抱えて、街を歩けないから。
「さあ、次は雑貨屋に行くんだったかしら?」
「その前に私、小腹が空きました。
何か食べませんか?」
レイーヌの提案で、どこか食べ物店に行く事になった。
何を食べるのかは歩きながら決めると言った。
「お嬢様は何か食べたい物はありますか?」
「私は、特に…。レイーヌが食べたい物を探せばいいわ」
フェリスに抱えられている、私の顔を覗きこみながら
訊いてくるレイーヌに私はそう答えた。
「そうだわ!お嬢様、スイーツでも食べに行きましょう!」
「そうね」
とりあえず、近くにあるレストラン風な店に入ることにする。
店の中は昼を過ぎているにも関わらず、賑わいを見せていた。
「いらっしゃいませ~」
中から店員の声がする。
異世界のレストランでは、何名様ですか?と
訊かれることはなく、客が自由に座るらしい。
それに、メニューは店の壁に掛けられた板に書かれてある。
「お嬢様、何に致しますか?」
「そうね…」
メニューを端から読んでいっても、
どれもどんな食べ物なのか予測不可能だった。
聞いたことのない名前ばかりなのだ。




