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0/0=1 | Null Pointer Memory=” ”  作者: 久破空是


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11.とある記録の代償 1(2)

2,アナログハック

 俺は今ひとつ謎の多い、宗次郎のバックボーンを調べる。

 ここ数ヶ月の金の流れ、思考アーマーとの関係。

 

 ある一つの結論に辿り着く。

 ニノマガタマの回収、カレンの所在

 カレンが生きてないと困る理由。

 生きてると困る理由。


 多額の資金の流れ。

 腑に落ちない、デメリットが多すぎる。

 連れてこられると困る理由。

 何かから脅迫されている?


 俺の知らない、ニノマガタマ

 白い石、カレンにあんな能力があるなら、あるいは。


 考えすぎか。

 相馬宗次郎。

 74歳、カレンの所在がわからなかった時はあんなに慌てていた。

 見つかった後は、雲隠れされているように思う。あんなに慌てていたのに何故か。


 考えたところで、想像の域を出ない。なら時間の無駄だと思うことにした。


 アルファから、緊急の差し込み。

「ご覧ください。」

 映し出したスクリーンにはオメガと思考アーマーの戦闘が映し出されていた。

 この女がこの街に侵入したと言う情報がメディアに流れてしまっていた。


 危険人物、要注意人物、指名手配。


 そして港の戒厳令。

 厄介なことになった。

 こんなメディアの放送ではなく戒厳令がだ。

 

 カレンを宗次郎のもとにつれていき、白い石のニノマガタマを手に入れるのがめんどくさくなってくる。


「やっかいな」

 俺は思わずそう呟いた。


 オメガの情報がメディアから漏れることを想定してなかった俺はアルファに船の隠蔽を指示した。

 3秒とかからずこの船はただの貨物船という情報に、重量等の管理情報も同時に書き換えられただろう。

 

 なんといっても多額の寄付金というより、港湾管理の局長がちょっとした友達で、月に一度給料とは別にボーナスが出るような間柄。

 ついでに俺の所有する会社がこの宇宙港 天つ瀬のスポンサーにもなってる。

 こんな商売してるとどうしてもな、しかして、あとはバックドアでやりたい放題さ。


 港内は極秘戒厳令、監視網の強化は、通常動体監視のみで、プライバシーの侵害などを理由に、赤外線や、火器監視はしないのだが、あらゆる監視機能が、何もかも洗い出そうとする。

 どこで、だれが、なにを、どんな格好で行い、何を持ち、何を買うか、質量情報の変化、心拍数までありとあらゆる情報が記録され監視対象となる。

 

 ただ、運行は変わらず。

 そこを止めると、揉め事が増えるからで、揉め事が増えると、なぜ困るかというと問い合わせ窓口がパンクするからだ。

 監視のためのリソースと、運行停止による、損害を天秤にかけた結果、監視リソースのほうが安上がり。

 コスパ重視ということだ。


 そのため武装は最小限、火器なんかもってのほか。

 あの極秘戒厳令下は特権階級も何も関係がない。 

 名残惜しいが、蛇腹刀はカレン(静)に預けてある。

 

 実をいうと蛇腹刀は2度と作り出すことはできない。

 一番の理由は刀鍛冶がいないからだがその作成方法もかなり妖しい。

 特定の金属の配合のバランス、焼入れの方法から何からな何まで。

 そして厄介なのは月齢が新月の時のみ鍛え上げることで作り上げるという

 九重家の収集品、そのいくつかの名刀妖刀の類の伝承をかけ合わせ、

 時間、場所を選んで叩き上げたという代物だという。

 その刀の名は、大太刀 九尾八房、長さ198センチ。


 それだけでお腹いっぱいになりそうだが、

 九重家はさらに、エメラルド・タブレット、トトの書、ピトリフィカチオの錬金術技術の秘術、時空の断裂、特殊な溶剤、分子結合技術を駆使し、さらにだ・・現代ナノマシン技術を応用することで

 

 皮のようにしなやかで、鋼の硬度を持つという、変な物質が出来上がる。

 蛇腹刀の本当の名を『刀外 なまくら』、蛇腹刀はその見た目から後でついた名前だ。


 ま、アルファの受け売りだから質問されても何も答えられん。

 ちなみに「ふーん」がそれを聞いた時の俺の感想だ。

 盛りすぎロマン武器、だからこそその特性から使い手を選ぶ。

 まぁ今どき刀なんてと思うかもしれんが、携帯性にすぐれ、使い道も多いので携帯している。

 静なら使いこなすだろう。

 もしものための護身用には危険すぎるおもちゃだが。

 

 まぁだめなものはだめ。

 裏をかけばいくらでもだが、これから合うのは、最高責任者 相馬宗次郎。

 銃器一つで、契約を反故するのに何もためらうことはないだろう。

 

 俺はあることを思いつく。

 オメガを囮にして、カレンと街に繰り出す。

 世間を騒がしてる、要注意人物が意気揚々と街中を散歩してる。

 なかなか、愉快な案だと思った。


 俺は、自分の情報を所長の息子、カレンを所長の嫁ということにして、リアルタイムの情報書き換えをアルファにやらせることにしてさっさと着替える。


 そして行くぞとばかりにカレンを呼び出した。

 黒いレザージャケットの下には灰色のセーターを着ている。濃い色のジーンズ。

 普通、OKだ。

 

 相馬宗次郎のビルは、地下鉄とバスを乗り継いで一時間、空港が広すぎてここを出るだけでも、最短で十五分はかかる。


 宗次郎とのアポイントの時間は、三時間後だ。


 船内の搭乗タラップに出る前のエアールームでオメガが待っていた・

 カレンが「えっ?!」と驚くと、かっ重音零夜ぁ!!!」

 

 「お忍びアイドルみたいでしょ?」

 オメガは白いキャスケット、 オーバーサイズ、ショート丈の白いニット、ボディランを隠す気がないのか黒いスキニーパンツに黒いショートブーツにメガネ。

 と、狙って外すのか外して狙うのかよくわからない格好をしていた。


 「だってあれ、バーチャルアイドル」

 

 「あれは、私」そう言って自分の顔を指さすオメガ

 カレンは空いた口が開かないといった様子だった。


 重音零夜

 通信機器、清涼飲料水、お酒、化粧品

 その清潔そうな容姿、中性的ながらも、抜群のスタイルの良さ。

 数々のCMに出て世間を騒がせる今をときめくバーチャルアイドル。

 完璧な容姿すぎて現実感がないという噂もあるがその中性的な美しさは男も女も虜にする。


「今度歌出すから聞いてね」とカレンに言って ばいばいと手を振ってハッチからでていく。


「ななななんで、オメガちゃんが、え? 零夜 ん?、危ないよ?」

 至極まっとうなことを言うカレンに

「楽しそうだからいいんだ」俺はそう言ってやった。

 

 「ぼっちゃん、情報拡散の準備が整いました」

「俺たちが出てから、2分後に開始、それから1分おきにスレッドを更新、ダミーを多めに流し続けろ。

 PVが1万を超えたらやめていい、移動ルートは計画通りに、警備員にも近寄らせるな」


 「な、なにするの?」不安そうに聞くカレン。

 「あぁ、あの戦闘ニュースの女が重音零夜に似てるって情報を流すんだ」とあっさり答えた。


 フェイクっぽいことが重要。

 そして人間ってのは信じたいことを信じる。

 で、人気急上昇中のバーチャルアイドルがリアルに登場する。

 大切なのは、映像だと思わせないことだ。

 嘘とホントが入り混じった情報は、両方真実となる。


 「行くぞ。」

 俺は格納庫別の個別エレベータに乗る。

 重力制御のかかってないエレベータが動き始める時に感じる、自分の体と、感覚がズレた感じには相変わらず慣れない。

 短い廊下を抜けて、ロビーに出る。

 

 死角がほぼ無いカメラの中、プライベートゾーンの自動ドアをくぐると

 本来なら、人口密度が結構高く、荷物待ち、待ち合わせ、トイレなどで移動するのにすこし時間がかかるところが、十数人のサラリーマン風のおっさんがタブレットを眺めて顔を赤くしたり青くしたりしてる連中ばっかりだった。

 そこはすでに人の導線が変わっていて足元の道案内用のルート表示をまたぐような人の流れが去った後

 そちらを見ると、人口密度が通常の20倍ほどいたのではないだろうか

 オメガが侵入を成功して視線を集めているようだった。

 VIPの俺達は、入出力管理税関ゾーンのほぼ正面くらいだが、300mほど移動する必要があるが、1分もしないうちに、入国を果たす。

 実はほぼ顔パスで、そこら辺を突破してきているのだが。

 

 この空港、警備員の姿は殆どなく、それは監視による防犯効果を狙う必要ががないからだ。

 この空港には、対人制圧用の麻痺レーザーや、対強化装備対応の粘着弾が、ほぼ全方位で張り巡らせており実績制圧時間は 30秒未満。

 その動作から怪しい動きをするやつを見つけて監視して現行犯で捉えてしまう。

 普段なら並ばなければいけないところも、見咎められることもなく、するすると通り抜けていく。

 すこしラッシュ時をずらした時間は、圧倒的人の少なさで快適だった。

 

 そして無人タクシーに乗ろうとしたとき、「落とし物しましたよ」、壮年の女性に声をかけられる。

 手に持った高級そうな財布。

 俺が無視しようとする前に、カレンが「えっ」と反応してしまった。

 デジタルハックが通用しない、オメガの導線誘導にも反応しない。

 よってこれは何かの干渉、もっと言えば宗次郎の干渉だ。

 そして、それは普通の人間にしかできない。

 俺は大人しく、「気をつけろよ」 とカレンにいって、その財布を受取ろうとする。

 声をかけてきた女は少し驚くとその財布を持った手を引っ込めた。

 

 俺は、あせらず表情も変えず、「どうかしましたか?」

 「・・・・・・」

 女は財布を俺に投げつけると猛ダッシュで逃げていった。

 

 ため息を付きながら、カレンに乗るぞと伝える。

 投げつけられた時にキャッチした財布は、少し離れたゴミ箱に向けて投げて捨てた。

 一応、誰も居な行ことは確認したさ。

  

 アルファのハッキング防壁が構築された無人タクシーはすっかりジタル無菌室となっていた。

 その中に乗り込む。 

 いまごろオメガは空港を出て、街中に侵入したところだろう。

 中央区の主管ビルまでの道のりに大きな渋滞はないどころか、若干少なくなっていることだろう。

 

 無人タクシーは驚くほど快適で、快適すぎてすぐに飽きてしまった。

 街内の移動はこれか列車か徒歩かしかない。

 このご時世、自由度や逃げ道の確保を考えると決まった列車に乗っての移動は待ち伏せのリスク、人を巻き込むリスクがある。

 まぁメリットは渋滞などのアクシデントがないことくらいだ。

 歩くとなると鳥や虫どころかAIも人も信用ならない、時間もかかる。

 

 よって無人タクシーが一番安全でコスパがいいということになる。


 そう思っているとバーンと大きな音が後ろから聞こえた。

 さっきの財布がゴミ箱の中で爆発した音だろう。

 アルファに、けが人はいません。と連絡を受けて俺はため息を付いた。

「やれやれ」

「けが人はないから安心しろ」

 カレンはなぜか、さっきから一言も喋らない。

 

 俺は大人しく、車に備え付けのモニターを付けると生放送でオメガの中継をしていた。

 写りは悪いが、はっきりと顔のわかる、思考パワードアーマーとの戦闘シーンと今歩いいるオメガの街なかの生中継。

 そして街角のインタビューでは、

「すごいかわいい、でもかっこいい」とか

「同じ人間だと思えない。」とか

「強くて、美人、サイコー」とか

 言われていて俺は苦笑した。


 さらにCMに入ると、『ずっと一緒、いつでもいつまでも』といってにっこり笑ってスマートフォンで電話をしているシーンが流れる。

 空港から、街に流れる道路のどでかい看板には、大人っぽい姿の重音零夜のスナップ写真。

 『今夜も、あなたと、……』

 というキャッチコピーでお酒の看板がならんでいた。

 どこもかしこも、零夜一色だ。


 アナログハック、感情への無意識の自己ハッキングともいえるそれは、記憶を書き換え思い出すら別の色にしてしまう。

 それが分かっていても抗えない、人が人であるための揺るぎない業と言っても過言ではないだろう。

 ま、ペット、愛玩動物は、人間のそういった部分をハッキングしてきた。

 それが、他人によって作られたり、意図して操作されるということが問題というならそれは問題としていいのだろう。

 俺はそいつが幸せならそれでいいし、他人もそう納得するしかない。

 代替案の提示できない文句は単なる嫌がらせで言う方も言われる方も不幸だ。

 

 それから何事もなく、無人タクシーは街の中に入り込んでいく

 中層ビルのある商用施設+居住用マンションやアパートが立ち並ぶ町並みは、自動運転の自動車に特化しており

 人が運転する車はほぼいない、人の流れを計算に入れた自動運転は、横断歩道なんていらない。

 特殊な事情でもないと渋滞も起こりにくい。

 

 交通事故にあったとしても、医療技術の発達で脳さえ停止しなければすぐに治る。

 風邪やアレルギー性のもの以外も薬学発達やナノマシンのおかげでほぼすべての病が軽症。

 この都市の平均年齢は75歳くらい。

 年寄りはみんな、地方の暮らしに憧れ街からでていっている。

 人類全体で行くと平均寿命は100歳だ。

 死は争い事や無理な生き方をしない限りは無縁となっていた。

 死が遠のくと、出生率が下がる。

 それは種保存の本能が低下するから、結果的に残さなくたって生存率が高いからだ。 

 通常出産という言葉とは別に、遺伝子オークションによる、デザイナーズ出産という言葉ができているが

 高額にして、育児の難易度が高い、デザイナーズ出産はその生まれてくる子どもの特性ゆえ親たちが育児を放棄することが多い。

 まぁデザイナーズ出産はいろんな意味で問題を抱えるのでかなりの試験をパスしないと登録はできないが。それでも一分需要があるにはある。

 理想的ではないという基準で話すれば、限りなくシステム化された世界はディストピアだが、効率を求めるなら、ディストピアも悪くないのではいかと思う。

 全人類を幸せに=ディストピアだ。

 自分だけが幸せに=ユートピア

 だれも不幸にならないように=テクノピア

 幸せ不幸せなんて気持ちの持ち用で人によって異なる差を認めるか認めないかで決まる

 こういう言葉は、傲慢で自分勝手で自己中心的なエゴと言えるだろう。

 そう思う俺自身がそういうエゴ抱えているということをよく知っている。

 <続>

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