#7 唄声は何処までも透き通る
唄は癒やし
彼女達と云うからには単独ではなく、複数人いるのだろう。
菊花がそこまで云うのならば、菫青は興味を惹かれるまま導かれてゆく。
近付くにつれて、唄声は鮮明に声の主達が視界に飛び込んで来た。
水上に浮かぶ硝子の舞台に女性が五人、まるで天女の如く美しい衣装に身を包み軽やかに舞い踊っている。
五人のうち中心に立つ女性が唄声の主のようだ。
「あの透明な舞台は硝子で出来ているの?」
「ああ、あれは水晶よ。水晶は水の王国の天然資源の主流なの。建造物や公共物、動植物も水晶化しているのよ。それが普通なのよ。この国ではね。他の国はまたこことは別世界と云えるかも」
水晶はすでに周知の鉱物である。
菫青のいる世界でも工業製品から嗜好品としての趣味の分野まで巾広い。
但し、水の国のように生活の全てに於いて、水晶が素材となることはない。
次元が変われば常識も変わるのだろうか。
「へぇ、そうなの。信じ難いことばかりだわ。それよりもあの人達をもっと近くで見たいわ」
美しい唄声も舞姫達も見定めたい。
「ええ、もちろん。あなたの気の済むようにして構わないわ」
「ありがとう」
ひとりの巫女が唄い四人の巫女が舞い踊る。
それぞれの顔立ちがはっきり見えてくると、五人共に可憐で清楚で儚げな中にも凛とした姿がとても美しい巫女達だった。
「なんて美しいのかしら」
天女の如く舞い踊る巫女達と唄声に合わせて、シャランと鳴る鈴の音が相まってその場が静謐な空間と化す。
菫青は身も心も浄化されてゆくような感覚に陥ってゆく。
知らず知らずのうちに両目から涙が溢れて流れ落ちていた。
流れる雫が頬を伝い地面へと滴り落ち小さな染みを作る。
彼女達を視ながら自然と菫青はチャネリングへと入ってゆく。
右目に金の☆が顕われた姿に菊花がハッとなる。
「キンセイ、あなた、チャネラーなのね」
初めて出逢った瞬間から不可思議な雰囲気を醸し出している子だと思っていた。
チャネラーであるのなら、視えない世界と別次元、自然界に物質界や非物質界など、あらゆる物とつながるのは得意なのだろう。
「確かに高次元の存在やら樹木やら、動物や普通に会話出来ない存在達とつながるのは得意かも知れない」
「それはステキな才能ね。魔法使いみたいだわ」
菫青の返答に菊花の目が輝いた。
魔法のような世界に住んでいても、魔法好きはいるのだろうか。
「キッカは魔法使いになりたいの?この魔法のような世界の住人は全員が魔法使いみたいだと思うわ」
特に、目の前で水晶の舞台で舞い踊る巫女達の廻りには水中から飛び出した魚達の群れが空中を飛んでいる。
そして、水面下では白色の花が咲き乱れていた。
本来ならば地上で咲く花であるはずの白い撫子、白い木蘭、白い芍薬、白い薔薇。
白い水蓮のみ唯一水中に根を張る水中花である。
「地上に根付くはずの、あの花達が水面に花咲いてるなんて幻想的すぎるわ。まぁ、水蓮は水辺の植物であるけれど、ここに咲いている花達はアタシが住んでいる世界にもあるものだわ。それがこの国にもあるのね。不思議な世界だわ」
信じられないことが次々と起きる。
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心に響くもの




