#6 それはミステリーかファンタジーか
水中を闊歩したい
水路から飛び出して来た魚の群れが、一斉に飛び立ってゆく姿を間の当たりにしたのである。
「うそ、水の中の魚が空を飛ぶなんて見たことも聞いたこともないわ。飛び魚みたい。でも羽根も長いヒレもないのに?どうして空を飛ぶことが出来るのかしら。ファンタジーよりミステリーだわ。すごすぎる」
菫青にはリアルなのか、ファンタジーなのか、またはミステリーなのか判断し兼ねる。
それでも菫青は興奮が止まらなくなるのを止められない。
「水の国ではこれが普通よ。風の国なら鳥達が水中で羽ばたいているし、蝶の群れも水中で舞っているわ」
鳥や蝶が水中でも生きている?
「ええ?ホントに?」
平然と語る菊花の言葉に、菫青は我が耳を疑いたくなった。
菫青が常識だと思っていたことの全てがくつがえされてゆくようだ。
このままだと背中に羽根の生えた人間と遭遇でもしそうだ。
「キッカ。まさか天使みたいに背中に羽根が生えてる人間がいたりする?」
恐る恐る訊ねてみる。
「羽根の生えている人間は水の国にはいないわ。それは風の国の人々ね。彼等は長距離は無理だけど、風の国内ならば天空を飛び廻っているわ。自由に空を飛べるなんていいわよね。私は水の国出身者だから泳ぐのは得意なのだけどねぇ。羽根はないから飛び廻ることは出来ない残念さはあるわね」
何も特別なことなどないかの如く、あっけらかんと答える。
「信じられないわ」
やっぱり夢の世界なのかも知れないと思い込みたい心境に陥った菫青である。
菫青が驚きの中で思考と現実が追い着かずに戸惑っていると、どこからともなく聴こえて来る唄声が耳に届く。
「なんの音楽かしら、唄のようだけど?」
「ああ、あれは姫巫女達の祈りの唱よ」
菊花が菫青の疑問に答えた。
「姫巫女?祈りの唱?祝詞みたいなものかしら」
「行ってみる?自分の目で見て確かめるのが一番だわ。彼女達の唄声は世界一美しいと断言するわ」
next soon →#7
天空を浮遊したい




