#22 夜天家
Hello~
「もう少し先へ行くと水晶庭園があるのだけど行ってみる?」
「水晶庭園?なんかすごそう。見てみたいわ。水晶庭園って云うくらいだからキラキラしているのかしら?」
鉱物好きの菫青は目を輝かせた。
「ふふふ。それは行ってみてからのおたのしみってことにしてね」
睛を輝かせる菫青に菊花も楽しくなる。
相手の反応次第で気持ちも軽やかになるのは、人は感情の生き物だと思うからだ。
「ところでキンセイはいくつなの?まだ十代って感じだけど。男の子のわりには声のトーンも高めよね。声変わりとかしてないの?」
出逢った時には女の子だと思っていたのでなんの違和感もなかった。
しかし、実は男の子だと知ってしまった今となっては、ハイトーンボイスの上に華奢な肢体は男子としてはかなり貧弱である。
「年齢は十八才よ。声の方はずっとこのままと云うか、これでも一応は声変わりしたのよ。それと、アタシは両性具有でも両性無有でもないわ。至って普通の男子である訳だけど、どう云った訳かこの通りの見掛けなの。あっでも恋愛対象は女の子よ。アタシはヘテロだから異性愛者であって同性愛者ではないわ。同性愛を否定する気はないけど男は嫌いよ。まぁ、兄達やパパは別だけど、それ以外の男には興味ないわね」
菫青の男性への嫌悪感はどこから来るのか。
それにしても、なんと偏った家族愛なのだろう。
益々、興味深いと思う菊花の好奇心を刺激する。
「あなたのこともっと知りたいわ。教えてキンセイ。あなたの全部を私に教えて欲しい」
自分のどこにそんなに興味を持つことが出来るのか?若干、不審に思いながらも菊花の勢いに圧倒される。
「え、ええ、アタシのことでよければ、キッカの要望に応えられる範囲でなら構わないわ」
睛をキラキラと輝かせる菊花に菫青の意識は制圧された。
「ありがとう。ちょっとしたヒーリングセッションかカウンセリングだと思ってくれていいわ。まずは家族構成を教えてもらえる?」
「家族は多いわね」
・父、夜天天青。ヤテンテンセイ。
・母、夜天菊花。ヤテンキッカ。
・長男、夜天金剛。ヤテンコンゴウ。(菫青とは十五才差)
・次男、夜天銀星。ヤテンギンセイ。(菫青とは十三才差)
・三男、夜天蛍石。ヤテンケイシ。(菫青とは八才差)
・四男、夜天海宝。ヤテンカイホウ。(菫青とは五才差)
・五男、夜天星葉。ヤテンセイヨウ。(菫青とは双子の同年齢の兄)
夜天家の家族構成は男系家系なのかと思うほど見事に男兄弟揃い踏みである。
「うわぁ、あなたのママってば逆ハーレムじゃないの」
なぜか菊花が羨ましそうな顔をする。
「そう云われればそうね。ママ以外は全員男ばかりだからね。自分を容れるの忘れていたわ」
見た目が女子そのもので、余興で女装したのとは違い生まれた時から女児用の衣服を着せられて現在に至る。
実は性格は意外と男前な菫青なのである。
「そうねぇ、キンセイは見た目には女性にしか見えないし、所作なんかもすごくエレガントだから一見しただけでは分からないけど、こうして話をしているととっても漢前な女の子と話しているみたいだわ。あっ、これは褒め言葉なのでマイナスに受け取らないでちょうだいね」
菊花の云わんとしていることは分かるので菫青も追及しようとは思っていない。
「うん。キッカの云いたいことは分かるわ。ありがとう。言葉のまま受け取っておくわ」
「こちらこそ。ありがとう」
特に菫青の機嫌を損ねることはなさそうな状態にホッと胸を撫で下ろす。
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