# 20 クリソツ
時代が違っても
「セイ、見て!」
「急になにさ?えっ、うそ!ママ?ママがなんでそこにいるのさ。でもなんだか、ずいぶんと若くない?」
驚く星葉に、してやったりと心の中でガッツポーズを取る。
「ねっ驚いたでしょ。それもママと同じ名前なのだからWで驚きよ。キッカ、紹介するわね。スマホに映っているのが双子の兄弟の「セイヨウ」フルネームは「夜天星葉」ヤテンセイヨウ。アタシと同い年の兄よ」
スマホ画面に映る星葉に観えるように菊花と並ぶ。
「セイ。今、画面に映っているのがアタシを救ってくれた恩人のキッカよ。不思議なことになぜか、スマホはつながっているみたいだわ。でも今はそれはおいといて彼を紹介するわね。キッカ」
画面の向こうで未だに驚いたまま言葉を失っている星葉に、菊花は興味深げにスマホを覗き込んだ。
「へぇ、君がキンセイの双子のお兄さん?私はキッカ。フルネームは「宝生菊花」よろしくね」
その名を聞いて再び驚きを顕わにする。
「えっ「ホウショウ」って、うちのママの旧姓じゃないの。それにママそっくりだし、あ、ボクはセイヨウ「夜天星葉」です。よろしくお願いします」
一応、初対面なので礼を尽くした挨拶をする星葉に菫青は感心する。
普段の星葉は相手が誰であれ物怖じすることなくタメ口で猪突猛進するのだが、今回に限っては様子が異なるようだ。
なんと云っても、この世で唯一頭が上がらない相手が両親なのだ。
菫青にとっても星葉にとっても両親に対する尊敬の念は絶大なのである。
「セイヨウ。君はキンセイのように女子生活はしていないのね」
スマホに映る星葉はどこから見ても男の子そのものである。
多少、男にしては優しいと云うか柔らかな印象ではある。
決してたくましいとは云い難い。
「はい。ボクは普通に男子生活してますよ。キンギョ、いえ、キンセイはもろ母親の趣味が反映されたので幼少期からフリフリヒラヒラした格好ですごしてますけど、今はゴシック調に落ち着きましたね。ボクはスカート穿く趣味はありません」
「へぇ、双子でも違った嗜好なのね。興味深いわ」
感慨深げに菊花が頷いた。
「それよりも、キンギョ。いつ戻って来れるのさ」
一番肝心なのはそこなのだが、如何せん戻れる手段が分からない。
「それは分からないけど。そうそう、こっちでも「天藍堂」じゃなくて「天藍舎」と云うサロンがあってね、キッカはそこでヒーリングセラピストをしているみたいなの。そっちの「天藍堂」はギャラリー兼カフェだったけど、こっちの「天藍舎」はヒーリングサロンみたいよ」
「ふーん。なんか分からないけど、明日こっちの「天藍堂」に行ってみることにするよ」
どこかで次元がねじ曲がってしまったような現象を悩んでいても解決にはならない。
「店内のシーラカンスに注意して、アタシをここに飛ばしたのもその魚の為せる業だから気を付けて」
あの古代魚と対峙してから、おかしなことが起こった。
元々、おかしな店のおかしな従業員達もなんだかとても怪しいと思う。
「分かった。気を付ける」
話がひと段落したところで通信を切ろうとするが、このまま切れば二度とつながらないのではないかと思うと切るのをためらう。
「キッカ。このスマホ、切ってもまたつながるかしら」
せっかくの向こうの世界との唯一のつながりを一度手放したら二度とつながらなくなりそうで怖い。
思わず不安が口を吐く。
「んーどうかしらね。そもそも、そーゆー機器は水の国にはないからすごく不思議でならないわ」
菊花の放った言葉に驚きを隠せない。
「え?スマホがない?」
そんな世界がこの世に存在するとなれば、やはり住む世界が異なる次元にあると云うことだ。
next soon →#21
電波は届くのだろうか?




